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『この滅び行く世界に祝福を』  作者: 早稲農家
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~直樹(帰還者)編Prologue~

「その2つの職業はこの国を滅ぼす職業だと予言されていてね。その職業になる者はいなかったんだ。もちろん、この国を滅ぼそうとする者たちはそれになろうとしたが、今までそれになれた者なんかいなかった。そりゃそうさ。その職業は本当に人の役に立ちたいと思う者のみがなれる職業なんだからね。」

 「さっきとは全然違うな。何が目的なんだ?」

 「決まっている。この国をいつか滅ぼすキミたちに頼みがあるんだよ。」

 「理解できないな。何が言いたいんだ?」

 「あのボードはうそを記さない。そこにある情報よりも深く載るんだ。」


 そういって王様は8人分のボードを取り出した。俺のボードを見ると先ほどのステータスの下に『秘匿事項』とあった。そこを王様がなぞると3文字の言葉が浮かんだのだ。『詐称済』と。俺は固まった。


 「安心したまえ。八神君。これが読めるのは私だけだ。」

 「…受け取った際にはなかったよな?」

 「もちろん。ばれてしまっては困るからね。さて。キミに見てほしいのはこれだ。」


 彼が差し出したのは大和のボードだった。体力:14239、魔力:19786、腕力:24583、知力:3485、俊敏:19677、職業『ヒーロー』。知力以外は俺以上に高い。その先にある『秘匿事項』を開くとそこには長文が記されていた。


 『この国が求めていた『英雄』ではない。しかし、それが公開されることはない。その前に王国は混沌の渦に巻き込まれるだろう。その最中、王国内の権力を手にし、この国は『英雄』となる。しかし、それはこの王国の腐敗の始まりである。』


 俺はそれを読み、顔を上げた。


 「これは私が死ぬという予言だ。この国が腐敗するならば、キミたちがこの国を滅ぼすという予言は間違いないのだろう。それをこの文章を読んで確信したんだ。」

 彼はもう2つ、ボードを渡してきた。それは鷺宮みどりと杉野寛太のものだった。


 『この国を滅ぼす『聖女』。しかし、その滅びは救済である。『慈愛』の精神を持ったこの国が滅びゆくのを止める。選択を誤れば、この国は滅びることなく腐敗していく。』

 『この国の真の『英雄』。『魔剣』と『聖女』、『賢者』とともにこの国を滅ぼす。しかし、この者の未来も誤った選択の先には『死』が待つ。』


 「こいつは…『魔剣』ってのは?」

 「彼女のことだったよ。」


 彼が渡したのは野々村京子のものだった。


 『この国を滅ぼす『魔剣』。自らの誤りに気づくまで彼の者は腐敗を援助する。気づいた時、彼の者は運命の時を迎える。その運命を覆すとき、王国は崩壊の時を刻み始める。』


 「ここにはあんたの記載がない。しかも、あんたが腐敗を幇助するとは考えられない。…つまり、あんたの死はもう間近みたいだな。」

 「だから、託したいのだ。わが娘の命を。」

 「断る。」


 王様の顔が一瞬で暗くなった。それでも、俺は言うのをやめなかった。


 「あんたの娘の命を助けることは容易だ。でも、この予言通り、この国を滅ぼすときに娘さんを助けるとなれば、あんたの娘はもう正気じゃないだろう。俺はあの男、大和の性格を知っている。あんたの娘を助けてほしいなら、もっとマシなことを言え。」

 「なんと言えばいいのだ?」

 「そうだな…『明日、娘のことを誘拐してほしい。』とかかな?」


 王様は目を見開いたが、すぐ何をしておけばいいのかを理解したようだった。

 

 「わかった。そうしよう。今日、私が死んだとしてもいいようにこの紙にその子細を書いておこう。あの子は理解できるはずだ。この手紙は私と血がつながっているもののみが読める。ああ。もう娘しかいなくなってしまっているから心配無用だ。ここで書いて、今日中に娘に渡しておこう。」

 「…状況が変わったし、今夜中に牢を抜け出すよ。」

 「幸運を祈らせてくれ。」

 「あんたの気持ちは確かに受け取ったよ。気をつけろよ。」

 

 国王はうなずき、たしなめた手紙を大切に懐にしまった。

 そして、彼が鍵を閉めたの確認し、俺たちは脱走の準備を始めた。

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