最終章 それぞれの明日
最終章の後は新章という形でつなぐ予定です。
主人公が変わるので、ここでは『最終章』としました。
俺は京子やちかたちに4人を会わせた。一番驚いていたのはちかだった。
「…本当に康夫君なの?」
「みんなそう言うんだけど…そんなに違うかい?」
「そうだな…以前の根暗っぽかったお前とは大きく違うだろうな。」
「お兄ちゃん!」
俺たちはそんな些細なことで笑っていた。
何をしにきたのかと思い、康夫に聞くと春に俺を会わせたかったらしい。この世界に転移したため、生きている間に会わせたかったらしい。俺が死ぬなんて考えられないだろうと言ったところ、康夫は「そう思いましたが…それでも会えるだけ幸せなんです。」と言ったのだ。さすがに俺は同意せざるを得なかった。
春はサキュバスになった際、すべての魔法が使えるようになったらしく、まだ万全じゃなかった京子に『再生』の魔法をかけていた。その間、俺と康夫はお互いの情報交換をしていた。
「…さてと。お前、結構殺してるんだな。」
「はい…正確には僕たちですけど。」
「あんまり気に病むなよ。」
「それはこちらのセリフです。直樹さんは基本的に一対一で殺してます。それに無茶もあまりしないでください。あなたがいなくなれば、春が悲しみます。」
「…もし、そんなことが起きたら…お前に春を任せるよ。」
「…今の言葉は聞かなかったことにします。」
俺は康夫から確かに怒りの感情を感じ取った。
ああ。死ぬなんて言葉は口にしないほうがよかったか。
「で…『屍族』ってのはいったいなんなんだ?」
「蘇った死体です。でも、それは生前の記憶を持っているだけじゃなくて…身体能力も強化されているんです。それが各地に現れているんです。」
「…そいつらを殺す方法は?あるんだろう?」
「火炎属性もしくは聖光属性の魔法で殺すしかないです。それ以外だと…僕らじゃないと無理なんです。」
俺は顔をしかめた。『聖光属性』というのは王国にいた法王じゃないと使いこなせない。しかし、そいつらは今回、俺たちが加担した内乱でことごとく殺されてしまったらしい。つまり、高位の火炎属性の使い手が必要なのだ。それはあの国に残ったアイツに伝えておく必要がある。もっとも、あいつは既に知っているような予感もするが。
「待てよ…僕らってのはどういう意味だ?」
「精霊や妖精が行使する魔法にはあいつらにダメージを与えられます。僕と美香、そして、美弥子はもう精霊なんで、『屍族』にとっては早く排除したい存在でしょうね。」
「精霊か…それって簡単にできるのか?」
「できませんよ。どうしてそんなことを聞くんです?」
「…『屍の森』って知っているか?」
「知っているんですか?」
「ああ。ドラゴンゾンビやゴブリン、オークの死体がその森を闊歩しているらしくてな。その森はもともと魔力が溢れる場所だったんだ。もしかしたら、そこが大切な場所なんじゃないかと思ったんだ。」
「…僕がそこに行きたい理由はまた別にあるんです。でも、その可能性はあります。」
「それとだ…弱点が分かっているあたり、以前も『屍族』が現れたことがあるんだろう?精霊と魔法だけでなんとかなったなら、王国で火炎魔法を優先して教えるはずだ。なのに、そんな欠片も感じなかった。奴らが学んでいたのは魔法使いの殺し方だった。つまり、近接攻撃でも殺せるんだろう?どうなんだ?」
「…僕らに『屍族』の倒し方を教えてくれた人からの情報にはあと一つあるよ。でも、その武器はもう存在しないんだ。みんな、魔剣が最高レベルだと思っているみたいだけど…実際は違う。その上に霊剣ってのがあるんだ。作り方は…言うわけにはいかない。」
「こちら側からまた聞くつもりはないよ。効果がある武器があるなら、いいんだ。さて…じゃあ、『屍の森』に行くか?」
「いいの?僕はうれしいけど…直樹さんにはメリットがありませんよね?」
「ちかがあそこを守りたいって話をしたからな。それなりの準備をしておく。それに…俺も個人的に調べたい場所があるようだからな。」
康夫は首をかしげた。だが、その森の奥に怪しい場所があったなんて俺の口からは言えなかった。そうして、俺とちかと康夫、そして、どうしても行かないといけないと言った美弥子の4人という変わった組み合わせで『屍の森』へと向かった。




