0話 プロローグ
今私は真っ暗な場所にいる。ここがどこなのか分からないけど、決していい場所とも思えない。私はこの場所から出たとき必ず殺されるからだ。
どんな風に殺されるかはよく分かっていないことの方が多い。生まれた瞬間に殺され、ここに戻って来て、また出ては殺される。その繰り返しで私は既に生きたいとか死にたくないとか頭にない。生まれ変わりたくないと言うことしか考えていない。
生まれ変わる先は人間だけではなく、植物以外の生物全てだったと思う。『思う』というはっきりしない言葉だけど、そもそも何に生まれ変わったのか確認する猶予さえなかったのだから仕方ない。
一番記憶に残っているのは蜂だ。生まれた瞬間目の前には恐らくスズメバチと巣が燃えている光景だった。すぐにその光景は目の前から無くなりまた真っ暗なこの場所に戻る。
テレビで見たことのある駆除の仕方ではなかったから、多分周りは燃えても問題無い場所に巣を造ったのだろう。もう少し安全なところに巣を造って欲しかった。
人間に生まれ変わったときの記憶もあるにはあるが、取り上げられたときに地面にたたきつけられたり首をはねられたり折られたりしている。胎内にいるときでも容赦なく刺されたり母体を殺してそのままなんてこともあったかな。私のせいで母体が死ぬのはちょっと申し訳なく思う。
胎児の時の記憶があるのは珍しく、基本的にこの場所から離れるとき意識が遠のき、気付いたらまたこの場所に戻ってくるのでもしかしたら意識が無いときに死んでいるのだろう。
そんなことを考えている今も、段々意識が遠のき始めている。
(あぁ、もう生まれ変わるのか…。もう少しここにいたかったなぁ。)
すぐにこの場所に戻ると分っていても、殺されることが分かっていてその場から離れる奴はいない。遠のく意識の中、少しだけ願ってみる。
(責めて苦しくない死に方をしますように…。)
不定期投稿ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです。