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幼馴染の来訪

 はい、どうも。リオネッサです。リオネッサ・ピヴァーノです。

 魔王さまと結婚して姓が変わったんですけどね。覚えきれないぐらい長くなったので名乗るときは旧姓を名乗ってます。まあ魔王城(ここ)で名乗ることなんてほぼないんですけどね!

 ただいま応接間の扉の前にいまーす。入りたくないでーす。

 せっかくアルパインさんが紅茶を淹れてくれたのに…。気を利かせてくれて、人界のお茶ですよって淹れてくれたのに…! 冷めたら美味しくなくなっちゃうのに…!

 でも入りたくない。というか会いたくない。

 この扉の向こうにいるのは幼馴染のゼーノ・フルミネ。なんの前触れもなく現れてくれやがりました。

 ゼーノはお母さんが天界人なので、見た目はものすごく美人だ。見た目は。見た目はだけは。大事なことなので三回言います。

 しかし中身は正反対で、ガキ大将タイプのやんちゃを通り越した傍若無人なやつだった。

 ご存じのとおり、わたしの家は田舎の貧乏貴族なので、平民との身分差なんてあってないようなものだったから、平民と遊んだって怒られたりはしなかった。

 小さな村だし、これといった特産品もないしで、貴族はうちの一家しかいないから貴族というより村長みたいな扱いだった。

 ちっちゃいころはそれなりにおてんばだったわたしはよくゼーノと遊んでいたのだ。遊んでいたというか引っ張り回されたというか、泣かされたことだってよくあった。

 つまり、なにが言いたいかというと、ゼーノはわたしの黒歴史を知っているのだ。昔のアレとかコレとかソレとか。

 魔王さまはもちろん、城にいる人たちにはぜったい知られたくない。

 しかし口止めしたところでヤツはぜったいにしゃべる。ニヤアと下品な笑いを浮かべながら喜々としてしゃべりまくる確信がある。昔から悪い意味で人の嫌がることを進んでやる男なのだ。

 うあああああいやだああああ会いたくないいいいいい!! みなさんわたしのこと、おしとやかなお嬢さんだと思ってくれてるのに!

 だがしかし、わたしは意を決して扉を開き、ティーカートを押す。

 アルパインさんのおいしいお茶を無駄にはできない!

「お待たせしました」

「おう、リオネッサ。久しぶりだな」

 引きつってしまったけど、なんとか笑顔を浮かべて紅茶とお菓子を置く。お菓子はアルパインさんが作ってくれたおいしーいクッキーだ。味わって食べてよ!

 と、思うだけで口にはしない。しなかったのでゼーノはバリバリと遠慮なく食べている。言ったところで結果は変わらないだろうけど。

「うめーなコレ」

 そーだろう、そーだろう。

「次は肉でも出してくれ」

「ありません」

 これ以上あんたに出すものはない。

 とっとと帰ってほしいんだけど、叩き出しちゃダメかな、こいつ。

「んでオマエ、今のなんだよ」

 なんだよってなんだよ。

 こんなわけのわからない質問の意味がわかってしまう自分がいやだ。

「お客様に対して普通の態度で接しているだけです」

「……そーかよ」

 わたしには似合わないとでも言いたいのか。これでも魔王さまの隣にふさわしくなれるよう日々努力してるんだよ!

 …いけないいけない。心を落ち着けないと。

 それで、いったいなんの用で魔界(ここ)まできたんだろう。用があるならさっさとすまして帰ってくれないかな。わたしのほうにはぜんぜんない。

 ばくばく食べて皿のクッキーがなくなり、紅茶を一気飲みするとゼーノはキリッとした顔をした。

 ほんと、顔だけはいいやつ。黙ってればほんとおばさまに似て美人なのに…。

「よし、行くぞリオネッサ」

「いくってどこへ」

 この時点で嫌な予感はしていた。

 こいつは昔からろくでもないことばかり思いつくのだ。それに巻き込まれた数は両手で足りない。

「人界に決まってんだろ」

 は? なんだって?

実は猫を被っていたリオネッサでした。

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