二話・三人よれば
なんでやねん!…
…
柔道部の下らないエセ関西弁漫才はまだ続いている。
真樹奈
「えと、次はパソコン研究部だって」
春樹
「ん、あぁ…」
名前の順で並んでいたはずなのに、何故真樹奈がこんな前の方にいるのかすぐには分からなかったが、周りを見渡すと、理由はすぐに分かった。
やはり、美咲中からの進学者が多いためか、皆自由に固まり始めていた。俺の知っている顔も何人か見つけられる。
後で声かけにいこう。
真樹菜
「次は、鉄道研究部だね。」
気が付くともうパソコン研究部の紹介は終了していた。
どうやらこの
「新入生歓迎会」
は、要するに
「新入生勧誘会」
ということらしい。
新しく入ってきた新入生の興味を引くために様々なパフォーマンスを披露するのだ。
それが柔道部の場合は漫才であったり、パソコン研究部の場合は妙なマジックショーであったりするわけだ。
つまり、まったく部活と関係ないことをやっても、面白ければOKという雰囲気の中進行していく行事らしい。
鉄道研究部が終わったところで、何だかもう飽きてきてしまった俺はうつらうつらと舟を漕ぎ始めた。
真樹菜は真剣にいろんな部活紹介を見ているが、俺にはとても出来ないぜ…
今日の朝、寝坊したってことはつまり昨日の夜寝てないわけで…
でもこの部活紹介はつまらないわけで…
僕は眠いわけで…
眠るわけで…
?
「よぉ、やっぱ二人はいつもペアだな!」
こいつは…
真樹菜
「あ、涼くん!おはよう!」
涼
「おはよう、真樹菜ちゃん&春樹くん」
春樹
「君付けすんな、気持ち悪いから」
北沢涼。
幼馴染というか、腐れ縁というか…
真樹菜と二人じゃないときはいつもこいつとペアになるのは俺で、三人ペアの時も大抵は、
俺、真樹菜、涼である。
涼とは小学校からだが、同じクラスになった小一の時からずっとつるんでいる。
クラスこそ違えど、長い間付き合っている。
やっぱり、腐れ縁というじゃないだろうか、こいつは。
中学の時は俺と同じ陸上部で、こっちは短距離のエースだった。
で、まぁ、こいつはそれなりにモテた。
ていうかかなりモテた。
…いいもん、俺には真樹菜がいるもん。
やっぱり幼馴染っていいもんだな…。
俺はモテた、というには微妙で三回ほど本命のチョコをもらったくらいだ。
まぁ全員丁重にお断わりしたが。
真樹菜からのチョコは数に入れてない。
なんていうか、本命ではないし、毎年貰って俺もお返しする、というのが当たり前になりつつあるからだ。
その日だけは俺は羨望の視線を集める。
なぜなら…。
真樹菜もモテるからだ…
中学三年間で五十人斬り。
宮本武蔵もびっくりだぜ!
いかん、興奮しすぎて動悸が…
救心飲まなきゃ…
真樹奈
「…ねぇ、聞いてるの!?」
春樹
「おわっ!」
不覚にもうろたえてしまった。
真樹奈
「やっぱりボーッとしてた…
…あのねぇ、涼くんが吹奏楽部に入るんだって!」
春樹
「へぇ、マジか?
てか、なんか楽器出来んのか?」
涼
「あぁ、マジだ。こう見えても俺はドラマーなんだぜ?」
春樹
「初耳だな…」
十五年目の真実。
真樹奈
「よし!じゃあ春樹も吹奏楽部に入…」
春樹
「まぁまぁまぁ、ちょっと考えさせてくれよ…」
これは…、どうすべきなんだろうか…
真樹奈
「絶対入らなきゃダメだからね〜」
春樹
「う〜ん…
司会
「最後は、吹奏楽部です―
打ち切りあるかもです