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序章
「はぁ、はぁっ……!!」
荒々しい息を吐いて、一人の少年が“ナニカ”から逃げるようにして走っている。
が、走っている途中に道端の石につまずき、前のめりに倒れてしまった。
「や、やめろ……」
少年は涙で頬をぐしゃぐしゃにしながら、目の前の“ナニカ”に懇願する。
大きく振りかぶられた剣が、月の光を反射して銀色に光った。
「誰か……誰か、助け」
その言葉が言い終わらないうちに、肉を切り裂くような音と共に闇夜に真っ赤な鮮血が飛んだ。
地面に倒れ、ぴくりとも動かない少年を見てその“ナニカ”は口元を吊り上げ、不敵に笑った。
そう。
これからのことを、まるで予測しているかのように。