第1章〜願い〜2話
夕日が沈みかけ
赤かった空の半分が黒く染まる
俺は今昇降口にいる
考えても埒が明かないので帰ることにした
俺は校門の方に歩いて行く
「あら、生きていたのね」
その少女はさっき会ったばかりの人物だった
どうやら自殺志願者の方らしい
「お前こそ、下手な演技すんじゃねぇ」
俺は鎌をかけてみた
「何のことかしら?」
「とぼけんじゃねぇ」
こいつは電波なのか?
「まぁいい。お前はこんなとこでなにやってんだ?」
「あら、貴方にはこれが見えないの」
そういうと彼女はブルーシートを指差した
それが俺が倒れる前の事が事実と突きつける
「私はね、死者と話すことが出来るの」
やっぱりこいつは電波なのか?
「人をオカシイ人扱いしないで」
彼女は目を紅く染めて、俺を見て来た
こいつは本当に一体何者なんだ
「貴方は今、私が何者かをずっと考えてる」
まるで俺の心を読んでいる様に話す
「まぁいいわ。私はここに死者と話す為に来た。だけど...」
「だけど?」
「話せないの」
「やっぱり嘘なんじゃねぇか」
「貴方が信じようが信じないかは関係ないわ」
彼女はまた目を紅く染める
どうやらイライラしているらしい
おそらく、死者との会話とやらが出来ない事に...
「残っていないのよ」
「何が?」
「死者、がよ」
「居るじゃねぇかよ。そこに」
俺はブルーシートを指差す
「いいえ、これは違うわ、」
「だって、魂が無いもの」
またよく分からないことを言う
「肉体と魂は全く別の物なの
肉体が朽ちても魂はそこに残り続ける。私はその魂と話をすることが出来るの」
「でも、その魂が無いのよ
まるで誰かに持っていかれたかのように」
その瞬間、俺はあの人形のようでで、人のようで、血に塗れたあれを思い出した
「そして貴方は、その魂が持ちさらわれたのを目撃している」
「教えなさい、あの時何があったのか」
俺はその少女に人形の事を話した
「そう、ありがとう」
そう言って少女は立ち去ろうとした
「おい待てよ、何の説明もなしかよ」
少女は立ち止まり、くちを開く
「貴方には関係のないことよ」
「ふざけんな!あれは何で何が起きているか説明しやがれ!」
「これ以上この事件に首を突っ込まない方がいいわ。じゃないと貴方...」
「死ぬわよ」
彼女は目を紅く染め、近づいて来る
「人間っていうのはね、だた決められたレールに置かれて歩いているだけなの」
「ただね、そこにレールの行き先を変えることができる人物がいるのよ」
「そういう人たちにとって、レールの上を歩いてるだけの人間は人であって人じゃないの」
「ただの道具。そう扱っているのよ」
「私はね、レールの行き先を変えることなんて簡単なの」
「貴方の行き先を失くす事だって出来る」
そう言った彼女の目は元に戻っていた
「そうなりたく無かったら、これ以上かかわらないことだわ」
どうやら何も教えてくれないらしい
彼女は歩いて行く
「一つ聞いていいか」
彼女は立ち止まる
しかし、こちらを見ることはない
「質問によるわ」
「そうか、じゃあ教えてくれ」
俺は疑問を投げかける
「あんたは俺の名前を知っているか?」
「貴方の名前?知らないわ、興味すらない」
そう言って彼女は歩いて行った
やはり双子かなんかなのだろうか
俺には分からなかった
赤みを帯びていた空はいつの間にか、黒くなっていた
とりあえず、帰る事にした
誤字脱字がありましたら教えて下さい