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第一話「異世界とじいさん」

眩い光の中を僕は進む。

どこに繋がっているかなんて分かるはずも無いけれど、向日葵が冒険の旅に出ろと言うのだから行くしかないだろう。

「・・・僕は君を信じるよ」



やがて、光が途切れた。

また暗闇に戻されるかと思いきや、眼前には見たこともない空間が広がっていた。

少し高い崖の上に今僕は立っているらしい。そうじゃないと、こんなにも視界の範囲が大きいわけがないのだ。

見渡す限りの草原。

草たちは風に仰がれてどこもかしこも嬉しそうにしている。

蒼穹の空は、奥の奥まで続いていて、終わりが見えない。

「・・・・・」

それでも何も感じる事の出来ない自分自身に、寒気を覚えた。


ここで立ち尽くしていても何も始まらないので、僕は崖を降りる事にした。

横に石造りの階段が下に向かって伸びていたので、それを使い降りようと試みた。

すると、奇怪な音が空から聞こえてきたので、僕は上を仰ぎ見た。


()


「・・・ッ!」

丁度僕の乗っている段から5つ上に降り注ぎ、爆発した。

流石の僕もこれには驚きざるを得なかった。

また音がしたので、僕は階段を駆け下りた。一段ずつでは間に合わないので、もうほとんど三段跳びの最後の跳躍部分に近い状態だった。絶え間なく降り注ぐ炎。それでも僕は突っかかる事なく、下の草原に足を着けることに成功した。

「・・・ったく何なんだよ!」

その瞬間、すぐに炎が降ってきた部分を凝視した。


浮かんでいた(・・・・・・)


白いローブを頭の上まで羽織っていて、顔は影になっていて見えないが、それでも人間に違いなかった。

手には棒状の木の上に玉が埋め込められている物、そう、いわゆる杖と言うものを持っていた。しかも材質は木のくせに、炎を纏っている。どうして焼けないのだろう。

「お、お前は・・・何者だ?」

疑問点は腐るほど出てきたが、口から零れ落ちてきたのは、この言葉だった。けれど、やはりこれが一番聞きたかったのかもしれない。

「・・・・・フンッ」

白いローブを羽織った人間は、それしか言わずに踵を返した。

だけど一瞬ローブから手を出して”こっちへ来い”と言わんばかりの動作をしていたのを、僕は見逃さなかった。



あっちは空を浮遊していてしかも素早いのに対し、僕は全力疾走でノロい。何だこの仕打ち。

やがてついた所は、森だ。その中の一角に、白いローブを羽織った人の家らしき物があった。

「・・・正真正銘家だよ」

・・・何か突っ込まれた気もするが、気色悪いので忘れる事に・・・「気色悪いって何だ気色悪いってコンチキ、ショーーーーッ!」

・・・どうやら心が読めるらしい。

「はあぁ・・・。どうしてこんな奴ばっか何だろうな~!もうワシやんなっちゃうな~!あーあ!嫌、だなぁ!もう嫌、ですワシ!嫌嫌嫌ぁ!」

「うるさいですよ、ご老人」

「ちょっ・・・!何コレ?何なん?ワシが心読めるって分かった瞬間何コレ?言葉に出しちゃうの?え?えっ・・・心に閉まっておこうよそこは!・・・いやワシの場合心読めちゃうんだけどねあはは、じゃねえよ馬鹿野郎!」

多少うるさいが、しっかりローブの中は人間だった。

けれど、まだ安心するのは早い。だって空飛んでたし。

「・・・うん。そうですよ。どうせ魔法使いですよ」

「やはりそうか。そこは良いよ。期待通りで。うん。素晴らしい」

「いやさあ?もっと普通の人は良いリアクションするよ?たとえ期待していたとしてもそれが事実なんだと発覚した時はそりゃあもっと良いリアクションするよ?ねえ君?」


「僕は普通の人間じゃないですから」


「・・・え?」

「・・・・・」

(えっ!?どう見たって人間じゃん!何この人・・・電波さん?電波さんなの?ああそっか、だからあんな失礼な態度とったのか老人に対してまったくもう。ああそうね!合点承知の助だわ!それ相応の態度に変えて・・・)

「ご老人、あなたが何を考えているのか大体の予想がつくので殴っていいですか?」

「ッ!あ~いやっ!ごめん!いやごめんじゃないよまったく。ああ分かるよ?普通の人間じゃないってことはさ・・・あの、あれでしょ?いわゆる・・・あの有名な・・・」

「・・・分からないなら良いです。というか僕の事が分かる人なんて僕しかいません」


「胸にぽっかり穴が開いたんじゃろ?」


「・・・何故だ」

「ワシはのう、向日葵さんから何でも聞いておるよ」

「向日葵から!?」

「ホッホッホ!そうじゃ・・・。お前さんがずっとずっと向日葵さんを大切に大切に育てていたことも。堕落した人生も、何もかも聞いておるよ」

「・・・・・」

「旅をするんじゃろ?ならそんな手持ちじゃいけんわ!せめて必要最低限の物は持っておらんとな!その為にワシはいるんじゃからな・・・ちょっと待っておれ」

引き出しを開けて、色々と持ってきた。

「まず剣じゃ。あと盾もいちおうな。それから一週間分じゃが食料と、多少金もやろう。あとはな・・・」

「・・・どうしてそこまでしてくれるんですか?」

そこで急に苦虫を潰した様な顔つきになった。

「・・・仕事だからじゃよ」

「・・・そうですか」

「よし!これであとは自分次第じゃ!穴を埋めて帰ってくるか、さらに広げてしまい、落ちぶれてそこで終わるか。じゃがワシは・・・誰がなんと言おうとワシだけは・・・」


「成長して帰ってくると信じておるよ」


「・・・はい、必ず」

僕は扉を開けて、踏み出した。

新たな道に向けて。













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