屋敷
初書きなので至らぬ所もありますが、今後ともよろしくお願いします!
探偵、佐伯一郎はどんな謎でも解く自信があった。犯罪者の心理を読み解くその鋭い目は警察すらも畏怖していた。だが、その日彼は予想を超える事件に遭遇することとなる。
依頼人は地元の裕福な実業家、椎名邦彦だった。彼の家族は最近何度も奇妙な物音を聞くようになり、家の中に何かが潜んでいるようだという。椎名は家族を守るためにその真相を探ってほしいと頼んできた。
「ただの迷信か、何かのいたずらでしょう。しかし、私の家族が恐れているのです。どうか確かめていただけませんか?」
佐伯はその晩、椎名の屋敷に足を運んだ。屋敷は古びた大邸宅で、長い廊下と重厚な扉が並んでいた。どこか不気味な静けさが漂っていた。
佐伯は家の中を一部屋一部屋、念入りに調べた。特に目を引いたのは屋敷の奥にある大きな書庫だった。その書庫には椎名家の代々の書物が所狭しと並んでおり、なぜかその一角だけが不自然に埃をかぶっていなかった。何かが隠されているようだった。
佐伯は静かに棚を調べ、隠し扉のようなものを発見した。それを押し開けるとそこには何もない広い部屋が広がっていた。しかし、真ん中に置かれていた古びた金庫に目が止まった。
「これだ…。」
佐伯は金庫を開けるために暗号を解読し始めた。その瞬間、背後で「カチリ」と音がした。振り返ると、そこには椎名が立っていた。
「何をしているのですか?」
「金庫を…開けようと思って。」
椎名は一瞬、固まった。だがすぐに冷静な顔を見せ、微笑んだ。
「どうぞ、開けてください。」
佐伯は金庫を開けると中には小さな箱が入っていた。箱を開けると中から一枚の古びた手紙が出てきた。手紙には、こう書かれていた。
『最期の鍵を開ければ、すべてが明らかになる。』
その瞬間、佐伯は背後から激しい冷気を感じた。振り返ると、椎名が不気味に微笑んでいた。
「これで、全てが終わりました。」
佐伯はその瞬間思わず足元がふらつき、膝をついてしまった。目の前がぼやけ、全身が震えだす。手にした手紙がまるで火のように熱く感じられ、息が詰まった。
椎名の表情が変わった。冷たい笑みの中に、何か恐ろしい真実を隠し持っているような目をしていた。
「あなたが解けなかった最後の謎…それは、この屋敷に仕掛けられた呪いなのです。」
その言葉が佐伯の耳に届いた瞬間、視界が急に暗くなり、頭の中が真っ白になった。全身に冷たい汗が流れ落ちるのを感じながら、佐伯はただひたすらに驚愕と恐怖の中に包まれていった。
そして次の瞬間、佐伯は気づく。彼が目を覚ましたのは、椎名家の書庫の隠し部屋ではなく、おどろくべきことに|自分の家のリビングのソファだった。
「おかしい…」と呟きながら、佐伯はそっと時計を見た。それは、昨夜の依頼を受ける前の時間を指していた。