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魔王と勇者の悪党蹂躙タイム、口上の長いボスは隙だらけ

「ガーッハッハ!こんな上手く行くもんかねぇ!?」



 ワインを瓶ごと一本飲み、ガラの悪い男は上機嫌に笑っていた。



「お頭の推察通り、騎士団の奴ら魔王軍に構って守備が手薄になってたし!ひと騒ぎ起こして町がパニックに陥ってる間、金品強奪!ついでに良い戦利品も手に入れた、簡単な仕事だったよな!」



「全くだ、ガキを奴隷にして売り飛ばせば俺達更に大金入るしよ!」



 連中こそが町に火を放ち、混乱に乗じて狙った家を襲撃し、少女をさらった犯人。


 彼らは金品を強奪し、更に少女を売り飛ばして大金を頂こうとしている。



 それが成功したから前祝いの宴を行っているのだろう。




「ホント、あのガキを売り払っていくら大金が入るのか。考えるだけでヨダレが出てくらぁ…」



 1人が改めて戦利品を見ながら酒を楽しもうと、攫った少女に視線を向けた時だった。



「あぁ!?どういう事だよおい!!」



「なんだぁ、どうした?」



 急に騒ぎ出した仲間を見て、何事だと周囲の男達は騒ぐ彼に注目する。



 すると木に縛りつけてあった少女の姿が、忽然と消えていたのだ。



「ガキがいねぇ!?何処行った!?」



「おめぇ縛り甘かったんだろ!もっときつく縛れや阿呆!」



「馬鹿言ってんじゃねぇよ!ちゃんと縛ったに決まってんだろ!」



 互いに揉めつつ、何処に行ったんだと賊達らは周囲を見回す。




「天誅ー!!」



「ぶげぇ!」



 アリナが何時の間にか賊の1人に迫って来て、顔面に右ストレートがクリーンヒット。



 賊の大柄な体は吹っ飛び、大木に激突。


 鼻をへし折られて、鼻血を出しながら白目を剥いて気絶する。



「何だぁ!?」



「女!?」



 急な襲撃に賊の一味が混乱に陥ると、アリナは続けて賊の1人へ向かい、右足の前蹴りを放つ。



「ごはっ!」



 アリナの右足が隙だらけな賊の腹部にヒット、大きな体が浮き上がり地面に叩きつけられると、蹴られた腹部を両手で押さえたままピクピクと体を痙攣させ、一撃で戦闘不能に陥る。



「オラオラオラァー!!」



 一撃が重いアリナの拳と蹴り、賊の一味を容赦無く殴って、蹴って、彼らは次々と無残に倒れていく。



「この…女ぁ!」



 仲間を次々と殴り倒し、蹴り倒すアリナの後ろから賊が剣を右手に持ち、斬り掛かろうとしていた。




「ボルト」



 そこに短く呟かれる魔王の言葉。




「ぎゃぁぁーーー!!」



 賊の体に突如、強い電流が流れて激しい痛みと痺れに襲われてしまう。



 体を焦がしながら、賊は地面に倒れると舌を出してピクピクと体を痙攣させていた。




「凄い…!」



 木に縛り付けられていた少女、シャリアは既に2人の手によって救出されて縄が解かれ、驚きの光景を目の当たりにしている。



 家を襲って自分をさらった恐ろしい男達が、突然現れた少年と女性によって次々と倒れていく。


 このまま行けば一味の全滅は間違い無い。




 だが、騒動に紛れて賊の一人が少女へ後ろから忍び寄る。



「(あいつら…!だったらこいつを人質にしてやる!)」



 向こうはおそらく自分達を捕まえに来た連中、ならば騎士達と似たような立場。


 人質さえ取ってしまえば身動き出来ず、形勢逆転するだろうと考えていた。



「大人しくしろぉ!」



「ひっ!?」



 シャリアの背後から賊が拘束しようと迫った。




 その時。



「ぎゃぁぁぁーーー!?」



 何か見えない壁にぶつかった、そう思う暇も与えず賊の体に強い痺れ、強い痛みが全身に走る。



 人質にしようとしていた賊は体を焦がしながら、仰向けにダウン。




「はい思った通り!絶対人質取ってくると思ったー、悪役お決まりのパターンなんざ真っ先に考えたっつーの!」



「ぐえぇぇ…」



 現代日本で漫画やアニメを見て来て、悪役のやりそうなパターンをアリナは把握し、彼らのやって来るであろう事は前もって対策していた。



 アリナが助けたシャリアに結界魔法を施し、そこへ更にコリンが雷魔法を付け加えれば、壁に触れた瞬間ビリビリ痺れるエレキウォールの完成だ(アリナ命名)



 賊の最後の一人へボディブローを叩き込み、悶絶させた後に人質取ろうとして倒れた相手を見て、アリナは「ざまぁ!」と勝利の雄叫びのように吠えた。




「まだ終わりじゃねぇよな?」



「ん、分かってる。親玉が居るよね、放火の犯人が」



 賊の一味は全員倒れ伏し、全滅してるように見えるがコリンとマルシャはこれで終わりとは思っていない。



 視線を小屋の方へ共に向けていた。




「俺の子分を可愛がってくれたようだなぁ、ガキ共」



 小屋の入り口から出て来た男は茶髪の短髪、左頬に十字傷があって右目に眼帯をしている。



 多くの子分達が倒されたにも関わらず、男は余裕たっぷりという感じでコリン達を見下すような目で見ていた。



「うーん、いかにもボス登場って感じの台詞を言うなぁ」



 漫画やゲームでよく見てきたボスを思わせる台詞、目の前の相手も本当に言ったと、ある意味で感動を覚えるアリナ。




「ボスで間違い無さそうだね、それに放火をやったのも…間違い無いよね?」



「何だ、バレてたのか」



 コリンが犯人だと指摘すれば、ボスの男は隠さず自分がやった事を意外にもすんなり認めていた。



「あれ、あっさり認めちゃうんだ。じゃあこのまま降参して負けも認めちゃう?そうすれば痛い目見なくて済むと思うよ」



「ふん、犯人とは認めるが負けまでは認めねぇよ」



 コリンの言葉に対して、ボスの賊は鼻で笑う。



「お前も魔法に心得があるようだが、俺の炎魔法と比べりゃまだまだ幼稚。本当の魔力って物を見せてやるよ!」



 自慢するかのように、右手が炎によって包まれる。



「これでも俺は業火のブレイザって名で通っててな、俺の炎を喰らって無事だった奴は1人もいねぇ。さあ、お前はどうなるかな魔法使いの小僧よ!」



 ブレイザと名乗る男、魔力を高めると共に炎の勢いも増していき、狙いをコリンへと向けていた。




「うん、無事じゃ済まないね」



 だが、この状況にも関わらずコリンは笑顔だ。




「貴方の方が」



「は…!?」



 一瞬コリンが何を言ってるのか、ブレイザの理解が追いつく前に彼の体が浮き上がる。




「自慢し過ぎて隙だらけー!」



「うおおお!?」



 ブレイザがコリンと向かい合って話してる間に、アリナは後ろへ回り込んでいた。



 背後からブレイザの腰付近に両腕を回すと、持ち上げると共に後ろへと上体を倒し、頭から思いきり地面にドガァンと叩きつける。



 魔力が消えたか、右手の業火がシュウウと消え去り、地面に叩きつけられたブレイザは頭がめり込んで、突き刺さったまま動けず。


 僅かに体が震えているので生きてはいるようだ。



「スリーカウントするまでもないね!ウィナー!あ、ゴングは無いんだっけか」



 賊のボスを一瞬で沈めても、独特のノリは変わらず。



 アリナがブレイザを倒した技、彼女が元々住む世界にあるプロレス技のジャーマンスープレックスだというのを、コリンやマルシャが気づく事は無かった。




 全員が倒された賊達、ボスのブレイザも含めて全員アリナの手によって縄で拘束している。



「見逃してくれよ!俺らもうあんたらとそこのガ…嬢ちゃんにも手を出さないし誰にも迷惑かけないからさぁ!」



 このまま連行される事を恐れたか、ブレイザは必死でコリンやアリナに向かって許しを請う。



「今の言い間違いで反省してない事確定ですけど?」



「た、ただの言い間違いだって!お前らも改心してるだろ!?」



 ブレイザの言葉を聞いて、子分達は揃ってコクコクと必死で頷く。



 シャリアの事をガキと言いそうになった辺り、反省してると思えずアリナは全く信じていない。



 こういうのを許したら後で手痛い展開が待っている、というパターンを知っているというのもあって、信じる気にはなれなかった。




「嘘だな、あいつら助かろうと思って必死だわ」



「つまり改心はしてない、と」



 マルシャから見て彼らが助かろうと、口で上手く言って逃れようとしているのはバレている。


 この白猫から見れば、賊の邪な心というのが丸見えのようだ。




「こうなったら、本当に反省するまで殴りまくり…」



「ストップ、あの子の前で拷問とか駄目だよ」



 更に殴ろうかと拳を鳴らすアリナに、コリンが止めた。




 アリナに痛めつけられそうになるが、止めてくれて賊達はコリンを甘い子供と思って助かる、内心でほくそ笑んでいた。



 このまま優しさにつけこめば助かるかもしれない、そんな可能性が生まれてくる。





「彼らは殴るより、食べられた方が良いと思うからさ♪」



「へ…?」



 その場の全員が耳を疑うようなコリンの言葉。



 魔王はニヤリと怪しく微笑んでいた。

此処まで見ていただきありがとうございます。


この後どうなるのか続きが気になる、この作品を応援したいとなったら作品フォロー、♡や☆のマークをポチッと押して応援いただけるとモチベやパワーになって凄い嬉しいです。



コリン「そういえば勇者だけど、アリナって剣持ってないんだね?」


アリナ「持ってたけど宿にうっかり忘れた☆」


マルシャ「大ドジ間抜け勇者じゃねぇか」


アリナ「てのは冗談で、あれくらい格闘で充分過ぎたし、あたしの剣はちゃーんとあるからね。使うまでも無かったってだけ」

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