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魔王探偵の目は誤魔化せない、犯人確定じゃね?

 火はすっかり消え、辺りが落ち着きを取り戻す頃にコリンの元へアリナが駆けつけた。



「凄いねー!ピンポイントで建物だけ狙い撃ちしての雨降らし!あんなん出来ない出来ない!」



 コリンの魔法にアリナは目を輝かせる、天地を操るだけでも充分な高等魔法だが、彼の場合は更にコントロールして強さを調整出来ている。



 寸分の狂い無く、火の元の建物へと一点集中に雨を降らせる、そんな事が出来る魔法の使い手は早々出て来ない。



「あれくらい余裕余裕♪」



「この程度出来なきゃ魔王名乗る資格なんざねーよ」



 コリンやマルシャにとっては当たり前で驚く結果ではない、出来て当然の事をしただけに過ぎないのだ。




「魔王が人助けだと…?」



「どういうつもりだ、何か裏があるんじゃないのか…?」



 一方騎士達は遠巻きにコリンの姿を見て、警戒するような目を向ける。


 火災の危機を救ったにも関わらず、彼に対して礼の一つも言わなかった。



 あくまで彼はこの国を侵略する魔王、騎士達の中で変わりは無い。




「ありがとう、助かったよ!人は避難してて怪我人は特にいなかったし、大きな被害が無くて済んだ!」



 そこに一人の騎士がコリンの前に進み出て、爽やかな笑顔で礼を言う。



 190cm程の大柄な体格で金髪のベリーショート、身に纏う白銀の鎧は所々焦げていた。



「えーと」



「ああ、名乗るのが遅れたな。俺はサイラード、白銀騎士団の小隊長を務めている」



 コリンに対して騎士らしく、礼儀正しく名乗り挨拶をする。



 見た覚えあるなぁ、と頭の中で振り返るとコリンは思い出していた、外の騎士団達を眠らせる時に彼もその1人に居たなと。



 彼らからすれば敵である魔王、それでも関係無くサイラードはコリンを恩人として扱う。




「良いの?他の騎士さん、コリン君をめっちゃ敵扱いの目で見てんだけど」



「関係無いよ、彼の働きで火災の危機は免れたんだ。それを無視するのは良くないだろう!」



「わー、相変わらず爽やか真面目優等生君だぁ」



 小隊長がそれは立場的に不味いのでは、とアリナがマイペースに指摘してもサイラードは態度を崩さない。




「しかし何故急にこんな火災が起きたのか…マッチの類いを使って燃え始めたらいくらなんでも我々や住民達が気づくはず…」



「今の火、魔力を感じたから誰かが魔法を使って火を放ったんだと思うよ」



「何、分かるのか!?」



 どうして今回の火災が起きたのか、分からずサイラードが腕を組んで難しい顔を浮かべ、考え込むとコリンは既に原因が分かったようだった。



「魔法を使えば魔力の痕跡って残るもんだからさ、これは分かりやすく残ってるよ」



 コリンから見て先程の炎は魔力を帯びて見え、彼はそれを感知していたのだ。



「つまり撃ったら線状痕が残っちゃうピストルの指紋みたいなもんだね、何かと便利な魔法も完全犯罪が出来るという訳じゃないんだなぁ」



 この場で理解に及ぶ者はおそらくいないであろう、現代日本で例えたアリナは納得するように頷く。




「となるとまだ不審者が近くに潜んでいる可能性があるかもしれない…」



「騎士様ぁ!」



「むお!?どうなされたのだ御婦人?」



 不審者が近くにいるかもしれないと、サイラードが部下に指示をしようとした時に、30代ぐらいの女性が泣きそうな顔で駆けつけて来た。


 それに驚きながらもサイラードは何があったか、礼儀正しく尋ねる。



「家が、襲われて…!娘が、娘がいなくなったんです!!」



「何!?」



 火災に続き、家を荒らされて女性の娘が行方不明。



 ただ事ではないと感じたのはサイラードだけでなく、コリンやマルシャにアリナも同じだった。




 母親が買い物の為に外出していた時、あの火災騒ぎが起きて騒動が落ち着いた時に戻ると、金品が無くっており、更に娘まで消えていたのだ。



「その娘さん、年はいくつでしょうか?」



「今年で10歳を迎えました、ああ…シャリア…!」



 サイラードの質問に答えながら我が子の無事を祈る母。



 シャリアと呼ばれる10歳の女の子、それが母親の娘だ。



 火災の後に起こった金品と共に行方不明の少女、偶然とは思えない。


 狙ったとすれば火災を起こした者と家を荒らし、少女を攫ったのは同一犯、または共謀する仲間の可能性が考えられた。



「すぐに捜索しなければ!犯人も一緒かもしれん!2人とも、すまないがこちらは忙しくなってしま…」



 サイラードがコリン達へと振り返った時、彼らの姿は既に消えている。



 被害者の話を聞いてから既に行動を開始したようだった。






「コリン、わざわざ人間のガキを助けに行くのかぁ?」



「僕らが攻め込んで混乱に乗じて、とかならこっちに原因あるからさ」



「ま、お前がそう決めたんなら付き合うけどよ」



 城下町を出て森の中を移動するコリン、再び彼の肩に乗るマルシャは彼が失踪した少女の所へ行くのだと、長い付き合いからすぐ分かった。



「けど分かるの?何処に向かったのか分からないのに」



 魔王の監視役として同行する勇者ことアリナ、彼女もコリン達と森林を歩いて行く。



「放火を起こした者の魔力は分かる、家を襲ったのと同一人物、または仲間だったとしたら、この魔力を辿って行けば女の子の元に辿り着けると思うよ」



「おお〜、異世界に来て探偵のような推理が聞けるとは思わなかったわぁ」



 コリンの推理を歩きながら左隣で聞いていたアリナから、拍手が起こる。



「このまま突き止めれば魔王少年探偵団、お手柄ってねー」



「あ、着いたよ?」



「早!?おっと…」



 ノリでアリナも探偵団の一員となってる間、どうやら目的地に辿り着いたらしい。


 犯人が居るかもしれないと思い、アリナは両手で自分の口を塞ぐ。




 茂みの中で身を隠し、一行が見つめる先にはアジトとおぼしき家が建てられていた。


 その前には大勢の男達が浮かれ、騒いでいる。


 いずれも軽装だが体格の良い男ばかりだ。



「わー、見るからにカタギじゃなさそうだなぁ。いかにも悪役丸出しって感じ、スキンヘッドにモヒカンとかその要素強めてるし」



 どう見ても善良な市民とは程遠い、それぞれが下品な笑いを見せていてアリナから見れば、悪党ほぼ確定じゃね?という感じだった。




「ビンゴみてぇだぞ、あそこ見ろ」



 マルシャの視線の先には大木もろとも縄で縛り付け、動けないまま涙を流す少女。


 茶髪のツインテールで10歳くらいの年と思われる。



「…」



 コリンの男達を見る目が鋭くなっていく。




「犯人確定っと、金品奪うだけでなく幼い女の子までさらうなんて、まさかあいつらそっちの趣味ありまくりとか…!?」



「それか、奴隷として売り飛ばして更に金を得る為だろうよ。あれぐらいのガキって高く売れるらしいからな」



 アリナの妄想が働く中、マルシャはそれか奴隷として活用する為に攫ったんだろうと推測する。




「んで、どうする?あいつら眠らせてサクッとガキを救ってトンズラか?」



「ううん、それはしない」



 騎士団を眠らせたように、連中も眠らせて少女を助けるのかとマルシャの言葉に対して、コリンは首を小さく横に振る。




「ちょっと懲らしめる必要あるから」



 男達をこのままで済ます気は無い、口元に笑みは浮かべているがコリンの目は全く笑っていなかった。



 この時、アリナは初めてコリンから魔王としての威圧を感じ取る。



「…オーケー、あたしも可愛い幼い子を攫う平和的な話し合い絶対無理そうなクソ野郎はぶっ飛ばさないと気が済まないって思ってたからね、いっちょフルボッコタイムと行きますか…!」



 ポキポキと両拳を鳴らすアリナ、彼女も賊をタダで済ます気は全然無かった。



 魔王と勇者、初めての共闘が始まる。

此処まで見ていただきありがとうございます。


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アリナ「あー、突入まだなんだ〜」


コリン「暴れるのは次からだね」


マルシャ「見逃すんじゃねーぞー」


アリナ「うん、アニメとかの次回予告っぽくなってきた!」

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