お互いを語り交流する中で事件!魔王の消火活動
目の前の小さな少年は170cmを超えるアリナよりも、遥かに身長が低い。
その差は40cm差ぐらいと思われる、彼の幼い見た目に反して年齢は900歳。
人は見かけによらない、それと同じように魔族も見かけによらなかった。
「魔族じゃ全然子供だっての、900歳程度で驚くなよ」
「むー、マルシャもたったの1800歳のくせに」
「俺の方が年上っつーのに変わりねぇだろ」
頬を膨らませるコリンと、その彼の頭へと飛び乗って前足でバシバシ頭を叩くマルシャ、見た感じ2人の付き合いはかなり長そうだ。
「猫って1800年も生きられるの!?」
「猫って呼ぶな人間!」
猫の平均寿命を遥かに超える年齢、それに驚くアリナへマルシャはフーッと威嚇して怒鳴る。
猫呼びが気に入らない様子だ。
「俺はルシファーキャットだ、その辺りの猫と一緒にすんなよ!」
「えーと、つまり魔王のね…キャット?聞き馴染みが無いけど何か凄そうじゃない?(人の言葉話してる時点でただの猫じゃないのは分かってたけど)」
そう呼ばれるのが嫌と聞いて、また猫と言いそうになりながらもアリナは言い直す。
「ルシファーキャットは代々魔王を守護する猫って言われててね、マルシャの親もその先祖も同じように守護してきたんだ」
「俺の場合は守護っつーかガキのお守り、な」
「む〜」
補足説明をしていくコリンに、マルシャからお守りだと言われて再び頬を膨らませる。
「はあ〜、という事はコリンの前も魔王とか居るんだね。その人達も争わず仲良くしたいってタイプ?」
「ううん、人と争って世界を支配しようとしてた」
歴代の魔王もコリンと同じ思考だったか、アリナの問いに彼の答えはNOだった。
「遥か昔とか、人や魔物…色々な種族が争って沢山の殺し合いが起こったり、沢山の血が流れて多くが命を落としていったんだ」
先程まで明るく話していたコリンも、この話をすると表情は暗くなる。
彼の様子をアリナは黙って見つめ、話を聞く。
「歴代の魔王がそうやって争い、血を流して来たけど僕はそういうのやりたくない。殺し合うより、皆で仲良くのんびり暮らす方が楽しいと思うからさ?」
彼がこの国を攻め込んだ時、剣を向けて来る騎士達を殺さず眠らせていた。
おかげで城の騎士達は全員が健在、殺さずコリンは大陸一の城を制圧。
双方の犠牲を出す事なくやってのけたのだ。
「皆で仲良くのんびりかぁ、本当それが一番だと思うよ。あたしの世界も色々物騒だし、詐欺とか犯罪とかホント色々あったりしてるからさ」
アリナが自分の現実世界を思い出せば、そこも全く安全じゃないと軽くため息をつく。
コリンの目指す世界、それが実現するのはとても素敵な事だろう。
争いの無い世界、それが一番平和と思っていた時。
「おい…焦げ臭いぜ、街の方だ」
「街?」
マルシャの嗅覚が何か焦げたような臭いを感じ取り、コリンに伝えると視線を街が見える方へと向けた。
するとそこには先程まで無かった黒い煙、空へと昇って行く姿が見える。
出ているのは街中からだ。
「焚き火、じゃ無さそうだね!」
ただ事ではない、そう感じたアリナは街の方へと走る。
「あの女、俺らの監視忘れてねぇか?」
「気になるから僕らも行こう」
アリナの後を追いかけ、コリンも走り出せばマルシャは彼の頭から降りて共に駆けて行く。
ベッラ帝国の城下町、多くの建物が建てられて様々な店が並び普段賑わいを見せる場所が今、大きな建物の一部が燃えて火事になり、住民の人々はパニック状態となっていた。
「急げ!早く火を消せ!」
騎士達が駆けつけて火を消そうと、水をかけたりと試みるが予想以上に火の勢いは強く、燃え盛るばかりだ。
「くっそぉ!バケツじゃ間に合わない!もっと水をかけないと!」
ベリーショートの金髪が焦げそうになるのも構わず、消火活動を続ける騎士の男。
このまま消せなければ更に被害が拡大してしまう恐れがある、何としても此処で消さなければと必死だった。
「!?」
そこに建物の一部が燃えて崩れ、塊となって騎士に落下する凶器となって襲いかかる。
気付いた時には目前まで迫っていた。
「せぇい!」
これを駆けつけたアリナがダッシュで勢いに乗ったまま、落下してきた塊へと向かって右足の飛び横蹴りを当てる。
アリナの蹴りによって塊は粉々に砕け散り、相当なパワーと破壊力を思わせた。
「勇者殿!?すまない、助かった!」
「それよりこれどういう事!?」
「分からない!急に建物に火が付いて燃え出したんだ…!」
アリナは騎士から説明を聞こうとするが、彼らも把握出来ていないらしい。
「現実世界なら消防車、だけど此処異世界だから来る訳無いよなぁ…!」
これが日本ならスマホで消防車にすぐ連絡し、彼らに消火活動をしてもらうのが当たり前だが、此処は異世界でそんな常識は通じない。
どうにか火を消さなければ、その場の皆がそう考えた時。
「レイン」
コリンが言葉を発すると共に、杖を地面にトンと軽く叩くと共に上空に雨雲が発生。
それも火災が発生している建物の真上にだけ出現し、そこから大量の雨が降ってくる。
他が水浸しの被害等になる事は無く、調整していた。
瞬く間に火の勢いは収まり、コリンは被害を最小限に抑える事に成功。
町の住民が火が消えたと皆喜び、安心する。
それが魔王だとは知らないまま。
此処まで見ていただきありがとうございます。
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マルシャ「此処で何語りゃ良いんだ?」
コリン「うーん、特に決まってないよね?」
アリナ「始まったばかりでトーク広げるの難しいねー、まあ少しずつ盛り上がるといいかな」