話し合いの末に明かされる正体
「侵略を止めに来た…だと?」
魔王と名乗る者の言葉を受けて、アマンダは右手で仰いでいた扇を閉じる。
すると女王の口元に笑みが浮かぶ。
「小僧、いきなり我が城に乗り込んだ無礼を働いた事に加えて侵攻を止めようと口にした者はお前が初めてだ」
「何かおかしな事言ったかな僕?ベッラ帝国に侵攻するのを止めてもらいに来たんだけど」
愉快そうに笑うアマンダ、それにコリンは彼女が何故おかしそうに笑うのかが分からず首を傾げた。
「もはや怒りを通り越して愉快だ、フフフ…しかし魔王軍の頂点に立つ者がお前のような小さき者とはな?それが事実だとしたら帝国も落ちたものよ」
魔王であるコリンがこの場に居る、そのまま信じるならば帝国は魔王軍との争いに敗れたという事だ。
アマンダよりも、女王を守りながら話を聞いていた重装兵の方が戸惑いを見せていた。
「(こんな子供が本当に魔王…?)」
「(まさか…でも此処まで侵入された説明はそれでつく)」
信じられない思いを抱きつつコリンの姿を見据え、各自が武器を握り直す。
子供な見た目に騙されないよう、警戒を強めたようだ。
「一体どんな武力をもってして、あの帝国を沈めたのか。やはり魔族の計り知れん力を振るって蹂躙したのだろうな」
「勘違いしてそうだけど誰も死んだりしてないよ」
「何?」
帝国との戦いを制した事を思えば、無傷では済まなかったはず、アマンダの言葉に対してコリンは即座に返す。
「皆眠ったりとかしてるから、此処の兵士達も皆眠ってて誰一人死んだりなんてしてないよ」
コリンやアリナ達に傷を負った様子は無く、帝国の時と同じく皆を眠らせている。
なので玉座まで侵入して来ても彼らが起きて来ない限り、向こうの援軍が駆け付ける事は無い。
とはいえあまりグズグズしてる暇もコリン達には無かった。
侵攻しているエノルムの軍勢を、オッソやザリー達が食い止めていて眠らせている連中もいずれは起きて来る。
その間にアマンダが戦を止めてくれれば理想的だが、そう甘い相手ではなさそうだ。
「魔王…お前は何故侵略を止めようとする?侵略なら魔王軍とて散々やって来ただろう、下等生物の人間や世界を嬲り殺しにしたりと」
「昔の魔王とかはやってたね、それで多くの血が流れて絶望と悲しみに満ちて混沌を力とした…」
コリンが魔王を務める遥か昔、別の魔王が世界を我が物にしようと侵略し、恐怖と死の世界を作り上げて、アマンダの言ってる通りの事を昔は行っていた。
その事を思うと、コリンの表情は暗くなる。
だがすぐにアマンダへと向き直って、強い意志が宿る目で女王を真っ直ぐ見据えた。
「それに近い事を今人間の方がしてる事に気付いてない?町の皆が苦しんでたよ、侵攻の為に重い税金を取られたせいで満足にご飯を食べられない人も居たから」
そう語るコリンが思い出すのはエノルムの城下町で会った母子、共に腹を空かせて何時戻るか分からない主の帰りを待っていた。
彼女達だけではない、あの町には笑顔も希望も無かったのだ。
あんな笑えない世界に楽しさは微塵も無い。
今自分達の方がかつての魔王軍に近い事をしようとしている、コリンはそれをアマンダに訴えていた。
「何を言うかと思えば…民には少しの間ガマンをしてもらっているだけだ。妾が帝国を滅ぼして支配し世界の女王に君臨するまでの間な」
ふぅ、と軽く息を吐いてから、アマンダはそんな事かと言わんばかりにコリンへ言葉を返す。
「今は辛かろうが妾の野望が達成された時こそ民も救われ豊かな暮らしとなるだろう」
自分が世界に君臨すれば全てが解決、アマンダの考えに揺るぎは無い。
「つまりそれは…帝国の物とかそういうのを全部取って自分達の物にするから?」
「奴らは滅ぶ、それで残った物をこちらで有効活用するのは当然の事だ。死人には無用だからな」
この言い方だと帝国の財産をエノルム王国が強奪し、自国の民に配るという手段に聞こえた。
そして死人と口にしたのなら、帝国は生かさず皆殺しにするつもりだ。
エノルム王国の民を豊かにするのと引き換えに。
「何でそこまで頂点に立とうとしてるの?実現したとしてそういう世界って…楽しいのかな?」
コリンは心底疑問に思っていた。
何故そこまでして上に立ちたいのか、自分の国の民を苦しめたり相手の国を滅ぼしてまでそうしたい気持ち、それを知りたいと思いアマンダに問う。
「楽しいさ、皆が妾を崇めて頭を下げる。誰もが妾を世界の女王と認める最高の世界ではないか」
言葉に詰まる事もなく、アマンダは自分の望む世界が楽しいとコリンに対して言い切る。
もう言葉での説得は女王に効果が無いようだ。
「うーん、何か女王さんの方が悪の魔王って感じ。となると勇者としてはぁ…その野望は阻止するっきゃないよねぇ?」
コリンとアマンダが話し合う中、アリナが前に進み出てコリンと並び立つ形となる。
「…お前達、そいつらは魔王とその手先だ!遠慮はいらぬ、切り捨てろ!」
女王の命令と共に、重装兵が動き出して武器を振るいにかかる。
それと同時にコリンの右手に持つ杖、先端の赤い宝玉から小さな雷の矢が重装兵達に飛んで行く。
「ぐわぁぁぁーー!!」
金属の鎧を身に着けていたせいで、雷の痛みや痺れが貫通して体に伝わって来る。
重装兵達は黒焦げとなって気絶、これで女王を守る者は強いていうならば黒いフードの人物ぐらいか。
「荒っぽくやっちゃったけど、自慢の兵士はもういない。大人しく制圧されてくれないかな?」
コリンとアリナが共にアマンダに歩み寄る、魔王と勇者の2人に抗う術を人間である彼女が持ってるとは思えない。
これで侵攻が止まり、考えを改めてくれれば解決だ。
「…クク、流石は魔王と言った所か」
発した声は女王の物ではない。
コリン達の声とも違う。
「何?怪しさ満点だけど、あんたまさか黒幕ってパターン?」
アリナは黒いフードの人物へ話しかけるも、回答は返ってきてくれなかった。
「気を付けて!その黒いフード、魔族だ!!」
「バレていたのか…なら隠す必要もあるまい」
カリーノが後ろから叫ぶと、その人物は黒いフードを脱ぎ捨てた。
現れたのは銀色の短髪、格好は黒い燕尾服。身長は180cm程で格好は人間の男を思わせる。
だが明らかに違うのは肌の色に尖った耳、彼は魔族の男だ。
「俺はグレーゴル、悪魔として貴様らに姿を見せた事を光栄に思うが良い」
此処まで見ていただきありがとうございます。
コリン「魔族だったんだ、何か偉そうな感じするけどねー」
アリナ「絶対俺様で俺強ぇ!とか思ってるタイプだろうねぇ」
マルシャ「一体何を企んでわざわざ女王の側についたんだか」
カリーノ「あ、あれ…思ったより何か皆落ち着いてる…!?」




