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可愛い子大好きな勇者、おっさんに従ってられるか!

「勇者!?一体何時から…!」



 突然降臨し、現れた勇者に驚くロードハルトにゲータと衛兵達。



「そこの魔王君が侵入して皆とのんびり仲良く暮らす、ていう所から居たかなー?」



「ほぼ最初からではないか!?ならばすぐ助けに…いや、それはこの際良い!」



 この状況にも関わらずアリナは平然と話す余裕がある、ゲータがアリナの姿を見た後に視線をコリン達へと向けた。



「今こそ勇者の務めを果たす時だ!魔王を討ち取ってくれぃ!」



 宿敵である魔王が目の前に居る、ならば勇者としてすべき事は一つだとゲータはアリナに魔王を倒せと、彼らを右手人差し指で指した。



「む…!」



 自分が感じ取れなかった程の相手、相当出来ると思いセオンは右手に紫色の光を纏わせる。


 この世界の魔力と呼ばれる物で、魔法を使う為に必要不可欠だ。



 魔王軍の自分達にとって勇者は最大の障害、天敵と言える存在で衝突は避けられない。





「え、嫌ですけど?」



「は?」



 その勇者が魔王と戦う事を拒み、一瞬アリナの言葉を理解出来なかったか、ロードハルトやゲータ達だけでなくセオンも呆然となる。



「だって彼、殺さずに此処まで来てるし争う気無さそうだしさ、無理に戦わなくて良くない?いきなり襲いかかるのは勇者じゃなく野蛮人になっちゃうし」



「な、何を申すか!?魔王だぞ!我々人類を脅かす最大の敵を討伐するのは当然だ!それが勇者の役目だろう!?」



 戦おうとしないアリナに、ゲータは怒鳴るように立ち向かえと言っていた。


 この時彼の髪の毛が一本二本、気の所為かハラハラと抜け落ちた気がする。



「あー、凝り固まったイメージだなぁ〜。頭の硬いお偉いさんは柔軟性が足りなくて困るねぇ、あたしさっき外で騎士団の人達見て来たけど、皆外で爆睡してたよ?」



「!?」



 面倒くさぁ、という感じで軽く赤髪をかきあげるアリナ、外で騎士達が戦死しておらず、眠っているだけだと伝えるとロードハルトやゲータが揃って驚く。



 彼が騎士団を殺していないのは本当だという事に。



「本当に我が騎士団を誰も殺さず、此処までやって来たのか…!」



 ロードハルトの中にある魔王、そのイメージは音を立てて崩れ落ちていく。


 おぞましく、恐ろしい姿をして圧倒的な力を兼ね備えた人類の脅威。



 それが魔王という存在と、教えられて来たがコリンを見ているとイメージに全く当てはまらなかった。




「えー、勇者の貴女は僕達と争わないって方向で良いのかな?」



「合ってるよー、魔王君」



 コリンと会話を交わすアリナ、その顔はゲータと話している時よりもにこやかに笑っていた。




「ゆ…勇者まで戦う気が無い…もうこの国は終わりだ…」



 絶望からか、ゲータはバタッと仰向けに倒れて、それに衛兵は慌てて駆け寄る。




「魔王よ…お主がこの国を支配しても、民は無事に暮らせるのだろうか?」



「皆仲良くだから、そこは国民の皆も笑って過ごせないと駄目じゃん。国を統べる人なら分かるでしょ?」



「むう…」



 魔王にそう言われるとは思っていなかったか、ロードハルトはコリンに対して返す言葉が無い。




 しかし不安が残るのも事実だ。



 彼がいくら害が無くて皆でのんびり暮らせる世界を目指す、と言ってもすんなり信じるのも危険だと、ロードハルトは慎重に考えていた。



「皇帝陛下、提案があります」



「む?何だ勇者アリナ、申してみよ」



 彼の心を読んだかの如く、アリナはロードハルトに向けて案を述べる。




「あたしがこの魔王君と行動して、監視します。それでやっぱり人類を脅かす敵なら成敗、言葉通りだったら取り越し苦労って事で損はないと思いますよ」



「ほう、勇者が魔王を監視か…うむ、コリンという魔王を見極めるには良いかもしれん。よかろう」



 勇者が魔王を監視するという形で同行、此処に口うるさいゲータが居たら勇者が魔王と行動するなど何事だと、また一騒動起きていた所だ。


 ロードハルトはそれが良いと、アリナに魔王へ同行する事を許可した。




「おい待て、人間の女…貴様何を勝手に決めている?我々は良いと言っていない」



「良いよ♪」



「魔王様!?」



 勝手に決めるなと、セオンはアリナを睨むような目で見ていて、同行など認めないとしていたが、コリン本人はそれを認めた。



「だって変わってて面白そうだし、勇者に会うの初めてだからさ」



 勇者に対して全く敵意を持たず、むしろ興味を惹かれていたコリン。


 それ以前にアリナという人物が変わっていて、他と違う雰囲気が感じられる。



 それがコリンにアリナへと、より関心を持たせたのかもしれない。




「…おい、我らが魔王様に傷一つでも負わせたら真っ先に貴様を消すぞ。その事を肝に銘じておけ勇者」



「怖い眼鏡イケメンさんだねぇ〜、心配しなくても傷一つ付けないし、あんま怒るとシワが出来ちゃうかもよ?男でも美容に気を使った方が良いからねー」



「余計なお世話だ…!」



 魔族のセオンに睨まれても、アリナは恐怖に陥る事なく肩を竦めながら軽口を叩いていた。




「おいおい、人間の女が魔族と居て大丈夫かよぉ?お前うるさく言われんじゃねぇの?」



 そこにコリンの肩に乗るマルシャが口を挟む、勇者の身でありながら魔族と行動は立場的に不味いんじゃないかと。




「あー、そんなん良い良い。むさっ苦しいおっさん共に仕えるより良いからさぁ。何よりあたし的にも目の保養になったりするし」



「?目がどうかしたの?」



「おっと、こっちの事だよ魔王君♪」



 最後の言葉が少し気になったコリンに対して、咳払いでアリナは誤魔化す。




「(あっちよりも超絶可愛い半袖短パンのショタっ子と一緒の方が最高でしょーが!漫画で見てるだけだった天国が目の前!異世界バンザイって感じー!?)」



 現実世界からこの世界へと転移し、勇者と呼ばれるようになったアリナ。



 彼女は可愛い子が大好きであるが為に、彼との行動を提案していた。



 完全な私利私欲と勇者らしからぬ女性、これが変わった魔王と変わった勇者の出会いとなる。

此処まで見ていただきありがとうございます。



 この魔王と勇者の組み合わせが良い、この作品を応援したいとなったらブックマーク、☆のマークをポチッと押して応援いただけると凄い嬉しいです。

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