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強襲の魔王、恐怖の世界が始まるかと思ったら!?

「止まれ!此処を何処だと思っている!?早々に止まれ…!」



 白銀の甲冑を身に纏い、剣の切っ先を相手に向けて忠告する騎士。


 周囲の同じような格好で剣を握る騎士達が殺気立つ、剣を握り締めた手からは汗が滴り落ちている。



 忠告された方は向けられてる剣に構わず、左手に持つ赤い宝玉がはめられた杖を軽く振るう。



「う…!?」



「ぐ…」



 騎士達は崩れ落ちるように次々と倒れ伏す、まるでドミノ倒しのようだ。




「は〜、人間は敵わないと分かって無駄に抵抗するのが好きなのかぁ?それとも騎士の意地って奴か?くっだらねぇの」



 杖を持つ人物の肩に乗る白猫、その姿に似合わぬ乱暴な言葉を倒れている騎士達に対して言い放っていた。



「どちらにせよ、我らが魔王様に歯向かう事自体が愚か。浅はかな彼らは放っておいて、参りましょう」



 青い肌に青い燕尾服を身に纏い、かけている眼鏡を右手人差し指でクイッと上へ上げる長髪緑髪の美麗の男。



 主に対して優雅な仕草でエスコートする。



 その彼らと共に、魔王と呼ばれる人物は目の前に聳え立つ巨城へ入って行った。






「こ、皇帝陛下!我が国精鋭の白銀騎士団が魔王軍に破られ城門を突破されましたぁ!」



 小太りで若干頭が禿げ上がった男、国のNo.2である大臣が慌てふためきながら豪華絢爛な玉座の間へと現れて、報告していた。



「なんと!?まさか、魔王軍が攻め込んで来たとはいえ…こんな短期間で白銀騎士団が破られるなど、早過ぎる!」



 50代ぐらいと思われる眼光鋭い男、黒い口髭を蓄えて黒髪の上に王冠をかぶる彼こそがこの国の主。



 ベッラ帝国の皇帝、ロードハルト。



 若い頃は傭兵を経験しており、歳を重ねた今でも屈強な肉体は健在、時に自ら戦場に出て剣を振るう勇猛果敢な皇帝と知られる。



 彼の帝国は数多くの騎士団を抱え、世界最強と名高い。



 世界は今、魔物によって脅かされており、それを束ねるのが魔王と呼ばれる存在。



 それをなんとしても討伐しようと、腕の立つ者を集めている所だった。




「こんな、勇者が不在の時に攻め込んで来るとはなんと間の悪い!お前達、此処の守備を固めるのだ!何としても玉座の間は死守せよ!」



「は、ははっ!」



 苛立った様子で少ない髪を掻き毟る大臣、苛立ちながらも近くの衛兵に此処の守りを固めるよう指示を伝える。



 帝国には魔王に対抗する手段として、勇者と呼ばれる者を助っ人に引き入れていた。



 だが間の悪い事に勇者が旅立っている間に、魔王軍が帝国に攻め込んで来てしまったのだ。




 何としても勇者が戻り、騎士団と共に戦い魔王軍を一網打尽と行きたいが、戦況は悪化するばかり。



 このままでは、この玉座まで侵入されるのは時間の問題だろう。




「!?」



 そこに玉座の間へ通じる大扉が勝手に開き出し、その場に居る一同がぎょっとしながらも、開かれる扉に注目が注がれた。



「な、何だ貴様は!?まさか貴様が魔王軍を纏めるリーダーか!?」



 扉から現れた青い肌をした美麗の男、明らかに人間ではないと一目で分かり、化物を見るような目で大臣は叫ぶ。



「俺を高貴なる魔王様と間違えるとは…本来なら万死に値するぞ貴様」



 自分を一番上の立場、すなわち魔王と間違えられ、彼は大臣をひと睨みした。


 その視線を受けて大臣は竦み上がってしまう。




「(この者ではないのか?彼から漂う雰囲気は歴戦の強者を思わせるが…それより上が居るというのか?)」



 ロードハルトは青い燕尾服を纏う男が魔王と思ったが、違うようだ。


 つまり魔王は強者であろう彼よりも更に上を意味する。



 どんな恐ろしい存在なのか、緊張から頬に汗が伝って落ちてきていた。




「我らが魔王はこのお方だ、一同控えよ」



 美麗の男がスッと右に避けると、そこから小さな人影が現れる。



 180はある美麗の男よりも大分背は低く、サラサラの黒髪短髪。


 人間の10歳ぐらいの男の子と同じ背恰好だ。



 半袖の黒シャツに黒い短パン、そこに黒いロングマントを纏い全身黒い格好で固めており、右手に杖を持っていて先端に赤い宝玉がはめこまれている。



 その肩には白い猫が乗っていた。




「この少年が…魔王だと…!?」



 その姿を見た時、ロードハルトだけでなく大臣達もまさかと思った。


 こんな幼い子供が魔王なのかと、恐ろしい姿ばかりを想像していた彼らを裏切るかのように、彼はその姿を見せる。




「お前達!チャンスだ!あれが魔王だとすれば無防備に姿を見せた今が最大の好機!魔王を葬り世を清めるのだぁ!」



「おおお!」



 大臣の命を受け、兵士達が剣を構えて一斉に襲いかかる。




 だが、次の瞬間に彼らは強風によって吹き飛ばされていた。



「わぁぁぁ!!」



 集中的に3人だけが風を受けて壁に叩きつけられ、気絶してしまう。




「人は見かけによらない、そういうの教わらなかった?」



 トン、と杖で床を1回軽く叩く魔王の少年。



「まあ、僕は人じゃなく魔族だけどね」




 少年から発せられる圧力、それを感じてロードハルトは確信する。



 彼こそが恐るべき魔王であると、その見かけに騙されてはならないと自分に言い聞かせた。




「改めて、僕は魔族のコリン、人から見れば魔王軍をひきいる悪い魔王、と言った所かな」



 コリン、それが魔王である彼の名だった。



「さて、そこの利口そうな王様。このまま戦いを続ける?この状況で騎士団が誰も駆けつけない、もう分かってるよね」



「…!」



 この玉座の間に敵が侵入してきた、にも関わらず勇敢な騎士団達が誰一人として姿を見せない。


 つまり世界最強の騎士団が全滅している事を意味する。



「…我がベッラ帝国もこれまでか」



「こ、皇帝陛下ぁ!」



 観念したか、ロードハルトは無駄に命乞いはせず静かに目を閉じる。


 その姿に大臣が慌てふためくと、構わずコリンはロードハルトの前に立つ。



 大陸一の大国が敗北を認める、つまりそれは世界が負けた事を意味し、魔王の世界征服を受け入れる事となる。


 騎士団を失った彼らに抗う術は残っていない。




「魔王の支配…人々を恐怖に陥れ、戦いと死に満ちた混沌の世界に変えるのだろうな…貴様らは…!」



 これから彼らは人間を支配し、恐怖に陥れ、世界を地獄に変える。


 それが魔王の征服する世界だろうとロードハルトは恐ろしくも思いながら、そうだろうとコリンを睨みつける。





「恐怖に陥れて混沌の世界?何時の時代の事言ってんの?」



 魔王である彼からは意外な言葉が飛び出していた。




「僕が目指す皆仲良くのんびり暮らせる世界だよ♪」



「…へ?」



 無邪気な笑顔を浮かべながら言ったコリンの言葉、それにロードハルト達は呆然となってしまう。

此処まで見ていただきありがとうございます。



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