第4話 パーティ編成を支援します!
「あらためて、サラと言います。リンさん、よろしくお願いしますね」
「はい!」
私は転送室の扉を開け、サラさんを通す。小部屋の床には転送のための魔方陣――転送陣が描かれていた。私はコンソールでぴぴっと転送先を選択し、サラさんに声をかける。
「じゃあ、行きますよ!」
「はい、お願いします!」
私が転送ボタンを押すと、視界が真っ白な光に包まれる――
――ブゥンッ――
◆
「うわあ……綺麗」
サラさんが感嘆の声を漏らす。転送陣でワープした先は、失われた天空都市――マチュピチュをイメージした古代帝国の遺跡で、高山の頂上にあり、眼下には一面の雲海が広がっている。現実では簡単に行けない場所も、ひょいっとワープして体感出来るのがマリッジ・オンラインの売りの一つだ。
「さあ、神殿前の広場に行きましょう。たくさんの冒険者達が、一緒に探索するパーティを捜していますよっ!」
私は石造りの遺跡群の中でも一際大きい神殿跡を指差し、お姉さまをエスコートする。石畳が敷かれた神殿前広場には、わいわいと話し掛け合う冒険者達がいた。周りには冒険者向けの屋台もあり、ドリンクや軽食を片手にパーティ勧誘している。
「わあ……どうしよっかな」
あたりをキョロキョロ見回すサラさん。私はふんすと意気込んで、自信満々に説明する。
「まずは、他の冒険者の方々のプロフィールを確認しましょう!」
見本として、サラさんの公開プロフィールをパッと宙に表示させる。
【公開プロフィール】
アバター名:サラ
性別:女性
年齢:26歳
職業:調理師
希望:30代以下の誠実な男性
趣味、資格……etc
「皆さんユーザ登録時に、公開用プロフィールを入力いただいてます。年収や居住地など相手方の同意が無いと見られない情報もありますが、これを参考に気になる方を探してみましょう。あと、パーティ募集中のサインを出しておけば声をかけてもらいやすいですよ!」
「へえ、やってみます!」
ビシッと説明する私に、サラさんは胸の前できゅっと拳を握って頷いた。うーん、仕草が可愛らしい。ますます応援したくなっちゃうっ!
サラさんが目の前にたくさんプロフィール画面を開いて、うんうん唸っていると、騎士のお兄さんが近寄ってきて、サラさんに話し掛ける。
「すいません、もし良かったら僕らのパーティに入りませんか。男2、女性1で、皆30歳前後なんですけど」
「えっ!? ちょ、ちょっと待って下さい」
画面ばかり見入っていたサラさんはびっくりして、慌ててたくさんの画面を消した。するとお兄さんはふふっと笑いこぼして、自分のプロフィールを表示させる。
「驚かせてすいませんでした、僕はソウと言います」
【ソウのプロフィール画面】
アバター名:ソウ
性別:男
年齢:26
職業:会社員(外資系IT企業)
希望:海外勤務を許容できる方…etc
「あ、ありがとうございます。私はサラと言います」
サラさんはぺことお辞儀して、自分もプロフィールを表示させた。私は1歩下がって2人を見守りながら、手元の管理コンソールでこっそりソウさんの非公開プロフィールを確認する。もし出会い系勇者だったらいけない。
が、そこに表示された顔と氏名を見てどきっとした。ソウさんの本名は高遠草介――子どもの頃隣に住んでいて、よく私と遊んでくれたソウ兄ちゃんだった! 初恋の人とかでは全然無いんだけど、良い人なのは間違いなし! これは……推せる……っ!
「サラさん、迷ったらとりあえずパーティを組んでみて、積極的にクエストに参加しましょう!」
私は元気よくサラさんの背中を押した。
「は、はいっ! じゃあ、その……パーティに入れて下さい! よろしくお願いします」
サラさんはソウ兄にぺこりと頭を下げ、長く綺麗な髪がさらりと垂れる。よーし、まずはパーティ編成支援完了。いよいよクエスト開始だ――!