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第2話 マリッジ・オンラインへようこそ!

「ようこそ! 私は冒険者ギルド受付嬢のリンと申します。どんなクエストをお探しですか!?」


挿絵(By みてみん)


 中世ヨーロッパ風ファンタジー的な冒険者ギルドのカウンターで、私は元気よくお辞儀した。


 恋愛小説とRPGの大好きな私が、新卒で婚活ベンチャー企業【マリッジ・オンライン・サービス】に就職して1ヶ月。新入社員研修を終え、いよいよフロントサービス課のGM仲人受付嬢としてデビューさせてもらえたのだ。頑張るぞー!


「ええっと、まだ始めたばっかりでよく分からなくて……何かオススメあります? せっかくだから、どこか絶景の楽しめるクエストとか」


 カウンターの前に立つのは、魔法使いのお姉さま。手元のコンソールでステータス――もとい、GM用非公開プロフィール画面を確認すると、アバターどおりの綺麗なお姉様で、まだ特定のパーティは組んでないみたい。だったら――


「それでしたら、こちらの失われた天空都市の探索クエストはいかがでしょう? パーティ未編成の冒険者様がいつも多数いらっしゃいますし、雲海が素敵で、雰囲気が良いのでオススメです!」

「へえ。じゃ、それにしよっかな」


 魔法使いのお姉さまはお気に召したようで、カウンターのメニュー画面からクエストを受諾した。


「受諾ありがとうございます、ぜひお楽しみください!」


 私はとびっきりの笑顔でお辞儀して、お姉さまを見送る。お姉さまは少しわくわくした様子で、転送室の方へ向かっていった。やった、初仕事にして超順調!


 と思っていたら、お姉さまが転送室の扉の前でチャラそうな勇者さまに話しかけられている。むむ、大丈夫かな。お姉さま、ちょっと困ってるようにも見えるけど……。


 私はちらっと、隣の受付に立つ先輩GM仲人執事の宮間慶(アバター名:ケイ)さんを見た。ケイさんは私の指導担当で、ぶっきらぼうだけど100組成立の実績を持つデキる仲人。執事らしくビシッとセットされた短髪にスマートな体型のアバターは、女性ユーザ様のファンも多い。


 ケイさんは、カウンター下でこっそりチャラい勇者さまのプロフィール画面を見せてくれた。女性とパーティを組んでは即解散しまくり、過去2度の警告済み。いわゆる遊び目的の【出会い系勇者】だ。3度目の警告は無い。つまり――垢BAN。


 ケイさんは顎でクイと『行け』と合図した。了解です、と私は小さく頷いて、カウンターのスイング扉を開け、お姉さまのもとへ助けに走る。


 私の記念すべき初仕事。大事なお客様であるお姉さまに、心から楽しんでほしいから。出会い系勇者は、お断りです――!

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