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操魂のまほうつかい  作者: 星川護
四季国編
4/13

4 蒼い瞳

 竜花(たつか)は、背後にいる白兎(しろう)に一瞬目をやる。変わらず微動だにしない。しかし、竜花が戦うのに足でまといになる上、白兎に怪我をさせてはならない。


 「白兎! 動けるなら、一気に走り抜けろ!」


 しかし、白兎は1歩も動かない。

 竜花は待ちあぐねて、白兎に向き直る。


 その瞬間、後ろから竜花にナイフが飛んでくる。

 竜花は「しまった…!」と声を漏らしながら慌てて振り返るが防ぎようがない。

 せめて白兎に当たらないようにと体を大きく広げる。



 固いもの同士がぶつかる音がした。




 …どこにも衝撃が来ない。

 白兎がいたはずの方向に向き直るが、白兎がいなくなっている。


 竜花が焦って周囲を見回すと、竜花の背後に少女が立っていた。


 その少女は右手に薙刀を持ち、そのまわりには落とされたと考えられるナイフが雪に刺さっていた。

 竜花はその少女に守られたのだ。

 その少女は見た目だけなら白兎と言えるが、雰囲気が全く異なる。殺伐としていて、殺気が漏れ出ている。

 竜花は白兎のような少女に声をかけるが。


 「…しろ「おかしいな…、まだ力は扱えないはずなんだけど」」


 竜花の呼びかけをかき消して聞こえる低い声。白兎が対峙している者から発せられたようだ。茶髪の青年。先程の少年、八緒と心なしか似ている。


 「__残念だったね。『俺』がいて」


 …今の発言は、白兎のような少女から発せられたもの。しかしいつもの白兎の明るい声ではなく、腹の底から出すような、比較的暗く、低い声。


 「ふぅん? 『最後の良心』ってとこか。しかも、魂にくっついてんなら…、邪魔だね」


 茶髪の青年は、さも予想外だと言うような表情を浮かべたあと嘲るように暗い笑みを湛えた。


 一方の竜花は完全に蚊帳の外である。訳が分からず、ひとまず戦闘手段として剣を構える竜花。

 戸惑っている竜花の様子を傍目に見た『白兎』は青年に呼びかける。


 「可哀想な奴がいるから、自己紹介してやればいいじゃないか?」


 青年は「お前が言うのか…」と愚痴りつつ、竜花に嫌々視線を向ける。



 「僕は八つの”尾”で八尾(やお)だよ。…こんなんでいいか」


 見た目も名前もそっくりだ。今日だけで、そんな人間2人に出会うなんて、なんか繋がりがあるんじゃないかと勘ぐってしまう。

 そんなことを考えている竜花の反面、『白兎』は卑怯にも薙刀で攻撃を加える。しかし、呆気なく八尾のナイフで防がれる。


 「なんというか、流石、だよね。罪悪感なしに不意打ちしてくる」


 『白兎』はひたすらに八尾に攻撃するが、八尾は涼しい顔で避け続ける。


 「ねぇ、『君』を白兎から剥がすには、やっぱり一旦殺さないとダメかな。あんまりやりたくないんだけど」

 「世界何個か壊滅させたくせに、あんまりやりたくないだと? どの口が言うんだ。そんなことはそもそもできないだろうさ。『俺』と竜花もいるからな」


 『白兎』はその身の丈ほどの大きい薙刀を軽々と横に振るが、八尾はひょいっと軽く跳躍し避ける。


 「竜花なんて取るに足らないでしょ? 白兎の体にいる『君』と、もとの白兎ならいざ知らず」


 蚊帳の外にいる竜花がいきなり貶された。しかし、それを諌めにこの戦いに参加できるほど、実際竜花は自分の能力に自信を持っていない。見たところ両方卑怯な考えを持っていそうなので、それに乗せられて、誤って白兎を攻撃してしまう可能性がある。だからといって何もしないのも良くは無い。


 「ほら、僕らについてこないし」

 「お前の醜悪さを感じてるんだろ、いい判断だ」

 「君も、甘くない? 僕が君たちの指示役だとしたら、そいつはかえって足でまといだから、付けさせないけどね。『今まで』もそうだったろう? どっちが『守り手』か分かんないなぁ!」


 『白兎』は軽い身のこなしで一旦後退して、打ち合いから離脱する。そのまま竜花の近くまで下がってきて、八尾に聞こえないように静かに竜花に話しかける。


 「竜花、今のままではこっちが体力負けする。だから結界内に走り抜ける。一瞬目くらましさせるからそのうちに行くぞ」


 竜花は「俺は戦力のうちにも入らないか」という言葉を飲み干し静かに頷いた。

 それを見届けた『白兎』は右手に薙刀を持ったまま、左手のひらをそのまま雪に埋める。途端に六芒星の陣が浮き出て、一気に光が広がり、一瞬雪が淡く光った。そして雪が動き出す。

 『白兎』は素手で雪玉をひとつ作り、それを八尾に投げつける。それと同時に周辺の全ての雪が八尾を中心にドームを形成した。


 竜花と白兎は無事結界内へ逃げのびることが出来た。




 一方、ドームに閉じ込められた八尾は、もう諦めて雪に座り込んでいた。今からドームを壊しても、気配がしなくなってしまったので追いかけられないだろう。足跡も恐らく『アイツ』が消す。

 それならばいっそ白兎の魔力で作られたこの場にいる方がいい。


 ドーム内の雪が動いて、雪だるまや雪うさぎが形成されて、自我を持ったように動き出す。

 『アイツ』は嫌いだが、白兎と白兎の魔法は好きだ。

 八尾は雪うさぎの体に指を当てると、雪うさぎが少し溶けて、八尾の指先が冷たくなった。

 だんだん壁の形が変わって、絡繰(からくり)のように動き出す。

 それは過去の八尾の姿。そして。


 「__ほんと悪趣味だね、『アイツ』は」


 一瞬でドームを破壊する八尾。小さな雪の生き物も無惨な姿。とはいえ、もとの雪に戻っただけだが。

 八尾は雪に接地していた部分の雪を叩き落とし、立ち上がった。落とされたナイフを1本1本回収し、腰のベルトに収納する。

 そして、押しの強い『八緒』に動揺していた白兎の姿を思い出す。



 「__ま、久々に会えたからいいや♪」





 一方、無事に塔にたどり着いた『白兎』と竜花。

 二人とも息を切らして、肩を上下させながら何とか塔内に入れた。『白兎』はいつの間にか薙刀をどこかに消し、塔の壁に寄りかかっていたが、ズルズルとしゃがんで、しまいには床に手をついた。


 「…はぁ…はぁ……」

 「…大丈夫か」


 竜花はだんだん息が落ち着いてきて余裕になってきた。『白兎』が寒い外から全力疾走で帰ってきたにしても、顔が赤く、そして青白すぎる様子を見て額を白兎に当てる。冷えきっている手だと適切に測れないと判断したためだ。『白兎』は少し複雑そうな表情をするが、竜花は黙殺する。


 「熱があるな…」

 「……あんまり運動してなかった上、……まだ扱いきれない魔法を…、使ったからなぁ…」


 息も絶え絶えに話す『白兎』。竜花は『白兎』を背中に担ぎながら部屋に向かっている道中、静かに問う。


 「『お前』は何なんだ」

 「…ずいぶん範囲が大きい質問だが、……色んな理由で、それには答えられない。……もう限界だ。返すぞ」


 白兎が意識を失って体勢が崩れたので1回背負い直した。部屋にたどり着いて、白兎を横たわらせ、毛布を掛ける。


 「また、天野(あまの)さん、呼ばないとだな…。それに、『あの人』にも、…聞かなければ」








 __黒い力に包まれて、『彼』は再び戻ってきた暗闇のなか、ひとりで佇む。


 久しぶりに浮上した意識。

 再び(まみ)えた宿敵。

 かつての『身体』と同じ力を纏わせる八尾。

 あの頃と『変わらず』、庇われている竜花。



 「さすがにこの身体は弱い。身体能力を補完すれば、もとのレベルまで上げられるが、長い時間は()たない」



 ふと、白兎の体に勝手に寄り付いていたことがバレたときの『管理者』の声を思い出す。



 「……この身体を現世や、ほかの世界で『使える』ようにする…、なんて。ほんと無茶を言ってくれる。欠片の俺に何を期待してんだか」



 『彼』__白兎を昔から見てきた魂の欠片、蒼雨(そうう)は嘆息した。

このタイトルでの初投稿はここまでです。

今後はまったりカメよりも遅く更新していきます。

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