表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/32

対面

 夢を見た。


 それはいつもの夢ではなかった。真っ暗闇というシチュエーションは一緒だった。けれど、倒れている亜美の姿は無く、あるのは向かい合った椅子だけだった。

 そして直樹は片方の椅子に座って誰かを待っていた。

 どんなものが向かいに座るか。それは、どんな恐ろしい悪夢なのか。


 なんてことはない。そこに座ったのは自分だった。



 —なんのようだ?


 ソレは言った。僕は言葉がでない。ずっと隠してきた。ソレを心の奥にしまって出て来れないようにしていた。


 —何を怯えている?俺が何を言うかわかっているんだろう?


「何も言うな」


 —お前が俺を招待したんだ。今更それはない。


「言わないでくれ」


 —お前が何をしたかを?


 —お前は何もしてないじゃないか。…いや。何も言わなかったというのが正しいか。


「やめろ」


 —何も言わなかった事がお前の罪だ。


「やめろ!」


 —言えよ。彼女が殺したんだと。


「違う!」


 —何が違う?彼女を追って亜美は死んだ。


「彼女は何も知らない!」


 —だがお前は知っている。


「…」


 —彼女に言ってやれ。お前が亜美を殺したんだと。お前が俺の恋人を殺したんだと。


「違う」


 —何が違う?お前は恋人を殺されたんだ。憎いんだろう?彼女が


「…」


 —お前は彼女を憎んでいるんだろ?今まで、お前を騙し続けていた彼女を。


「違う」


 —殺してやりたいくらい憎いんだろう?


「違う!」


 —何が違う。何が違うのか言ってみろ。お前は何が違うと言うんだ?


「彼女のことを…憎んでいない」


 —なぜだ?恋人を殺されたのになぜ憎まない?


「…あれは事故だった」


 —事故だって?でもお前の恋人は彼女を追いかけて事故にあったんだろ?彼女のせいで事故にあったんだ。なのに彼女が憎くないのか。


「憎くないんだ」

 直樹は顔を手で覆う。その手は震えていた。

 

 —お前は何故そんなに震えている?怯えているのか?何を恐れている?


 恐れている。ずっと、恐れていた。


 —お前が一番恐れている事はなんだ?


 一番恐れている事。

 それは…


「彼女に…知られる事」


 —何を知られる事だ?彼女が亜美を殺した事をか?


「違う…」



 —ではなんだ!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ