表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/32

変化

 大学三年の三月一五日。悪夢を見るようになってから、直樹のすべてが変わった。

 何が?と聞かれてもわからない。けれど、変わったという事は間違いなかった。

 変わった事は自分でもわかっていたし、家族や友人も口を合わせて言った。

「お前、変わったな」と。

 大学の友人達とは、更に表面上だけの付き合いになった。

 香奈に別れを告げたのも、あの日のすぐ後だった。

 香奈も気づいたのだろうか?直樹が変わってしまったことを。

 だからすんなりと頷いたのかもしれない。自分の目は、きっと香奈に向かって言っていたのだ。

 お前じゃない、と。


 亜美がなぜ彼女の事を追いかけたのかはわからない。そして、なぜ彼女が亜美から逃げるように走っていたのかも。

 でも直樹は、自分が亜美を殺したとしか思えなかった。どれだけの人にお前は悪くないと言われても、どうしてもそうとしか思えなかった。

 どうしてそう思うのか、その理由を考えようとすると思考は停止した。


 だって自分が悪いのだから。それ以外の理由などいらない。


 恵美の存在を知ってから、何度も彼女の家に行きたいという衝動に駆られた。

 決して行く事はなかったが。

 この感情はなんなのか。

 それを、考えようとしても、思考は停止し続けた。

 「特別な亜美」が恵美だと分かった瞬間、浮かんだ恐ろしい考え。

 今は思い出す事ができない。

 彼女のことが、憎いのか。

 自分は、彼女に会ってどうしようというのか。


 …殺したいのか。


 考えようとすればするほど、眠りに襲われた。

 そして、その眠りは悪夢を連れてきた。


 夢は続く。

 直樹の目はいつも足下の亜美から、背中を向けて立ち去る恵美に向かう。

 なぜ。直樹は思う。

 なぜ、逃げていくのか。

 待ってくれ。

 直樹がいくらそう思っても、声は出ない。


 そして、彼女が振り返る事もない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ