七十四話、暑苦しいのが売りなんです。
んー・・・思いつかねぇっす。ハハッ!
「涼しーっ! ひゃっほー!」
学食に着いた途端にさつきさんが生き返りました
ってか、なんかキャラ崩壊してるんだけど。
「ここが、楽園か・・・」
いかん。未来のほうもなにやらおかしくなっている
今まで見たことがないほど真剣な眼差しで、どこか遠くを見つめている
・・・なんか変なものでも見えてません?
「み、未来さーん?」
「懐かしい風が吹いているな・・・あ、あれ? あたしは一体なにを?」
見かねた僕が声をかけると、未来さんは無事に戻ってきました
よかった、熱でやられたのかと思ったよ。
「未来とさつきが暑さで死にそうだったから、部室からここに移動してきたでしょ? 覚えてない?」
「お、覚えてないです」
き、記憶まで飛んでたのか!? あのまま部室にいなくて本当によかった!
「あ! でもジュース奢ってくれる話は覚えてるよ! えへへ、あたしオレンジジュースがいいなー!」
「・・・」
なんでそこだけ覚えてるんですか。
「私の分も奢ってくれるんでしょ? えっと、ミルクティーよろしくね」
落胆する僕の肩に手を置きながら告げるさつき
お、追い討ちですか。まぁ、奢る約束だったしね・・・
「さぁ俺の分も奢れ! 俺はデラックスパフェを所望する!」
「てめぇはファミレスでも行ってろ!」
横から沸いてきた厚樹に向かって右ストレートを放つが、ヤツはそれを片手で受け止める
「ふっ、甘いぜ秋・・・それよか、なんで女の子には奢って俺には奢らねぇんだ? ん?」
「なんでかって? そりゃお前の日頃の行いが悪いからだよ、わかるかね。ただでさえ野郎に奢るなんて無駄な出費だ。それも奢る相手が柄の悪いチャラ男だぞ? お前なら奢りたいと思うか? どうなんだ?」
言いながら握られた拳を押し込むと、厚樹の方も足を踏ん張ってこちらに力を入れてきた。
ごごごごごご、と僕達の周りに謎の炎が燃え上がる。
「言うようになったなぁ、秋。いいぜ、どうしても奢らねぇってんなら、実力行使で納得させるだけだ」
「もはや『奢る』じゃなくて『恐喝』になってるんだが・・・いいさ、それで奢らなくて済むなら、こっちも実力行使を行うまで!」
「いくぞ秋ィ!!」
ジュースの交渉を始めた厚樹はまず、肘を浮かせてきた。
おそらくヤツの狙いは僕の顎。
いきなり大技を仕掛けてくるのは厚樹の十八番、その技はすでに見切っている!
「隙が大きいんだよ! くらえぃ! 弱P連打!」
顎を引いて厚樹の膝蹴りを難なくかわした僕は、素早いジャブを連続で打つ
「ふははははは! 甘い! 甘すぎるわ! 貴様の小刻みパンチなど俺には利かん!」
「なっ!?」
馬鹿な! 全てかわしているだと!?
この高速の連続ジャブをかわせるとは、流石僕の幼馴染!
「だが、まだまだ! 僕のスピードはこんなもんじゃ・・・―――」
「ええい! 暑苦しいぞ!」
「―――え? うわっ、有っ、ぐはァ!?」
ジャブを連打していた僕の頬に、有紀の拳がめり込んだ
そのまま食堂のカウンター前まで吹き飛ばされた僕の姿は、もはやボロ雑巾。
「ぐ・・・な、なんで僕だけ」
言いながら厚樹のほうを見ると、
「こっちまで暑くなったじゃないかー!」
「ちょ!? 待て美咲ちゃん、俺はただジュースが欲しかっただけでっ、オブッ!!?」
ヤツのほうも美咲に成敗されていた。
ざまぁみろ。っていうか、先に実力行使すると言い出したのはお前だからな。
僕同様ボロ雑巾と化した厚樹をあざ笑いながら、ヨロヨロと起き上がる。
「あんたら、学食で騒いでるんじゃないよ」
「・・・すみません」
カウンターの奥にいたおばちゃんに怒られてしまった
なんで僕が、ってかおばちゃん怖いです。
「んで、ご注文は?」
「あ、えっと。オレンジジュースとミルクティーと、水三つ」
ちなみに水は僕と有紀と美咲の分だ。
厚樹? 知らん。
次回、今度こそ白状!
秋 厚樹:なにがハハッ、じゃコラァッ!?
又二郎:っはっはっは。
厚樹:なぁ、これぶん殴っていいのか? いいよな?
秋:いいと思うよ? ついでに僕も殴るから。とりあえず人の原型無くなるくらいめちゃくちゃにするから。
又二郎:や、やめて!? 怖いよ!? 人の原型無くなるってよくわかんないけどやめてくださいお願いします!!
秋 厚樹:・・・
又二郎:もはや聞く気すら無い!? ま、待って! お待ちください! よく考えてみろ! 俺のおかげでしりとりがまた再会されたんだぞ!? ほら『は』から始まる言葉を考えようぜ!
秋 厚樹:・・・『ハ』ァ?
又二郎:ひぃいいいいいいいいいいいいい!?