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七話、厚樹の恋は蜜の味。

うな重たべたいんだな。

 さつき達のデラックスパフェを平らげた後、せっかくなので彼女達と少しお茶する事になった。

 僕の向かい側にさつき。隣の厚樹は美咲と向かい合って座っている。


「それじゃあ美咲が彼氏役だったんだね」


 僕とさつきは自分達がデラックスパフェを食べるまでのいきさつを話題に盛り上がっていた。


「で。秋が女の子役ってわけね。お疲れ様だこと」

「厚樹の押しに負けたんだよ。そっちはどっちから言い出したの?」

「うっ、それは……」


 何気ない質問だったのだが、言った途端にさつきの表情に焦りが生まれた。


「わ、私の方は……そう、アレよ! 美咲がパフェ食べたいから男役やらせろって聞かなくてさ!」

「そうなんだ?」


 さつきのヤツなに慌ててるんだ?


 普段は大人しいさつきがこうも取り乱すとは珍しい。是非理由を尋ねたいところだが、ここは空気を読んで堪えた。

 ついでといってはなんだがさりげなく話題もすり替えておこう。


「それにしても自ら男役を買って出るとはね。流石美咲、僕にはとても真似できないよ」

「美咲は男っぽいこととか全く気にしてないから」

「気にしないほうが楽そうでいいなぁー」


 僕も見習いたいものだと本気で思う。


「そうね。いっそのこと秋もその外見受け入れちゃえばいいのに」

「それは断固拒否します」


 話題が変わったことに安心したのか、ほっと安堵の息を漏らすさつき。

『女の子が困っているときは迷わず助ける』という父上の教えが役に立ったようだ。よかったよかった。


「んー やっぱり秋は今のままでいいかも。美咲はむしろ開き直ってとことん男のように振舞ってるからうるさいのなんのって」

「あー、厚樹もそんな感じだよ。いつか耳が壊れるんじゃないかと心配で心配で」


 どうやらお互いに苦労していたらしい。僕とさつきの間に共通のナニカを垣間見た気がした。



「つーかさ! 美咲ちゃん達があんなでっけーパフェ食おうなんて無謀な挑戦したもんだなぁ」


 ふと隣を見ると厚樹達はデラックスパフェの話で盛り上がっていた。

 丁度こっちの話題が一区切り付いたところだったので、なんとなくさつきと一緒に二人の会話に耳を傾みる。


「いやぁそれはねー? さつきがどうしてもパフェ食べたいって言う 「ぶはっ!」 から、あたしが彼氏役買ってやったんだよねー……ってどうしたのさつき?」

「ごほっ、こほっ!」


 顔を真っ赤にして咳き込みながらさつきはブンブンと頭を横に振る。

 てか今、さつきのやつ何か噴かなかったか? 僕の顔が紅茶で濡れているのだが。


 咳がおさまったさつきが美咲に詰め寄る。


「なんで言っちゃうのよ美咲! 私が甘いもの好きってこと言わないでって言ったのにっ!」


 紅茶で目は開けられないけど、向かいに座っているはずのさつきが随分と慌てているということがわかった。


「何焦ってるんだよさつき? 別にいいだろー、女の子が甘いもの好きなのはよくあることなんだし!」

「そうだけど! それじゃ私が食い意地の這った大食いとか思われるじゃない!」

「っはっはっは、大丈夫だって! 今の時代は細身のかわいい女性でも大食いフードファイターとしてテレビ出演を」

「それはテレビの話でしょ!」


 実に珍しくさつきが大声で騒いでいる。

 この光景を学園のさつきファン達が見たら驚くだろうなぁ。



「二人とも仲いいのなー」

「だね。流石幼馴染……厚樹、お手拭取って」


 僕と厚樹が感心したように言うと美咲が嬉しそうに笑う。


「まぁね。伊達に幼馴染やってねぇってんですよ! なー、さつきー」


 そう言いながらさつきの頭をわしわしと掻き回す。


「や、やめーぃ」


 派手なポニーがより派手になったとさ。


「つーかさっさとお手拭とらんかい」

「は? あぁ悪い。今はちょっと」


 僕のお手拭は現在、厚樹が紙飛行機の様に折りたたんでいるので手元に無い。


「ってなに意味不明な事してんだよ! 自分のでやれよ!」

「自分のでやったら俺お手拭使えねーじゃん」

「いや知らねーよ!?」


 なんという理不尽! 少しは隣の仲良し幼馴染を見習って欲しいものだ!


「てか何でお手拭?」

「なんでか、さつきに紅茶噴かれた」

「おぉー、役得ですなー」

「ナナナナナァニ言イッテンノサ?」

「ふむふむ。んで? 実際のところはどうなんですかな秋様?」

「う、うぐ」


 役得でした。とは死んでも言えない。



 その後も取り留めの無い日常会話で盛り上がり、しばらく時間が経ってから気が付くと、時計の針が8時を示していた。

 それを見た美咲が慌てて席を立つ。


「やばいさつき! もう8時だよ!?」

「え、嘘? もうそんな時間?」


 美咲に続いてさつきも席を立った。


「あらま、もうお帰りで?」


 解散の雰囲気を察した厚樹が少し残念そうに言った。


「うん。明日も朝練あるからね!」

「運動部の朝は早いのよ」


 美咲の言葉にさつきがうんうんと頷く。

 いや、さつきは朝練行って無いでしょーが。


「そうだ、せっかくだから一緒に帰る? 二人とも帰る方向同じだよね?」

「んあ、あー……いや、俺達はまだ残るわ。積もる話もあることだし、なぁ秋?」

「え? 積もる話は無いけど厚樹が残るなら、まぁ。ごめんね二人とも」


 僕としては願ったり叶ったりの素敵な提案だったのだが、厚樹が残ると言ったので僕も残る事にした。


「おぉっとー!? 男達だけで怪しいですよ! これは何かする気だね!? どう思いますかさつきさん!」

「どーでもいいわ、それじゃ二人ともまた明日ね」


 一人盛り上がる美咲を華麗にスルーして僕と厚樹に手を振るさつき。


「うん、また明日ー」

「グンナイ! 美咲ちゃんにさつきちゃん!」


 こちらも二人に向かって手を振り返した


「ほら帰るわよ美咲」

「き、気になるのにー! 明日なにやってたのか教えてくれよー!?」


 最後まで騒がしかった美咲はさつきに襟首を引っつかまれてずるずるとレジのほうに引きずられていった。





 ……おかしい。


 これでもう何度同じ言葉を思い浮かべたか。

 そこは忘れてしまったが、ヤツの様子がおかしいことは確かである。


「ポテトうめぇなー」


 ぼやーっと呆けながら、割り勘で買ったポテトを齧り続けている厚樹。

 やっぱりおかしいんだよな。さつき達が帰ってからずっとこれだ。


 先程から「うめぇうめぇ」と、ただポテトを口に放り込む作業を延々と繰り返す姿をずっと眺めていたのだが、すっかり飽きてしまったので声をかける事にした。


「なぁどうしたんだよ?」

「何がだー?」


 意外にも返事はすぐに返って来た。どうやら周りの音は聞こえているらしい。


「何がって、さっきからずっと黙ってるじゃん。どうかしたの?」

「あー、そうだなー」


 再びポテトを摘まみ、口の中に放り込もうとしたが。

 ふとその手を止め僕の方を見た。


 いつの間にか呆けていた表情から普段の目つきが悪い顔に戻っている。どうやら、ようやくまともな会話ができるらしい。


「それで、何?」

「俺さー……」

「うん?」

「美咲ちゃんの事、好きかも」

「へぇー」

「あぁ」

「ほぉー」

「あぁ」

「はーん、好きねぇ」

「……」

「……え?」

「……」

「でぇえええええええええええええええええええええええええぇえぇぇぇぇぇぇぇえ!?」


 この日、一番の驚きだった。



次回、厚樹の恋煩い!




又二郎:出番があああああぁぁぁっぁぁあ・・・

秋:うるさい。


又二郎:ひっど!

厚樹:だってうざいし。

秋:ウェイトレスになって来るんじゃなかったのか?


又二郎:いやそのつもりだったんだけどさー、遂に書き貯めが底をついたんだよなー。とてもそんな遊んでる場合じゃなくて・・・


厚樹:な!何だと!!

秋:遂に底を突いたか・・・


又二郎:しかし!!折角こんな小説を見てくれてる人もいるんだ!今日も頑張って書くぜ!!

厚樹:おぉ!なんか今日は意気込みが違う!!


秋:すごいぞ又二郎!

又二郎:だろ!もっと褒めろよおおおおおののいもこおおおお!!!


厚樹:って事で頑張るから、意見感想があれば何でも言ってくれ!

秋:ちなみにお便りは受け付けておりませんけど!!

又二郎:お便り!!?関係無いでしょ!!?

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