六十六話、あぁ。お母さんのおむすびが恋しいわ
カルパッチョ!
「いやぁすまんすまん! 秋が久しぶりに女友達を連れてきたもんだから、ちょっと驚いちまってなぁ!!」
そう言ってがははと笑った父上は、未来と有紀の二人に頭を下げた
・・・全く、とんだ人騒がせだったよ。
「い、いえっ! あたし達はその、全然大丈夫ですから!」
「そうだな。私が驚いたのは、秋氏の父上様が見事に男前だったことだからな」
有紀・・・その言葉の意味は『僕が女顔だから、僕の父上も女顔だと思っていた』とかじゃないだろうね?
・・・怖いから聞かないけどさ。
とりあえずまぁ、二人ともあまり気にしてないようなので安心した
「おっ! 俺が男前ってか!? っはっはっは!! 君、男を見る目があるじゃねぇか!」
『男前』というワードに気分を良くする父上
「恐縮です。それと、私は服部有紀、こちらが浅田未来といいます」
褒められついでに、さりげなく自己紹介を挿む
有紀に名前を呼ばれた未来が「ど、どもども・・・」と、へこへこお辞儀をする
「そうかそうか! 有紀さんと未来さんだな! ・・・おい、秋!」
「・・・何?」
未来達と話していた父上が突然僕の耳元に顔を寄せる
鬱陶しいな。と思いながら、父上の言葉に耳を貸す
「・・・んで。実際のとこ、どっちが本命なんだ?」
「 知 る か っ ! ! 」
バゴォッ!!
耳元にあった父上の顎を、肘で打ち抜く
いきなりなんてことを言い出すんだこの馬鹿は!!
・・・ど、どっちが本命なんだ。って言われても・・・
「うわっ、何!? どうしたの秋君!?」
「・・・秋氏、父上様が気絶してしまったのだが、いいのか?」
「ご、ごめん。いつものことだから、気にしないで」
驚いている二人の視線に目を逸らしながら答えた
・・・別に、照れくさくなったって訳じゃない、です。はい。
グロッキー状態の父上をソファーに寝かせた僕等は、そろそろ隣町へ出発することにした
今は午前11時だし、向こうにつく頃には丁度お昼時になるだろう。という有紀の計算である。
「お邪魔しましたー!」
「お邪魔しました。コーヒー、ご馳走様です」
家を出る前に、未来と有紀の二人が母上に挨拶。
「いえいえ。こちらこそ、大したおもてなしも出来ませんで。また来てね、ふたりとも」
「はい、是非!」
「また来ます・・・あ、そうだ」
ポン、と。有紀が思い出したように手を打った
「そうだ、母上様。今度来たときには是非、秋氏の昔のアルバムを拝見したいのですが」
「あら、すっかり忘れてたわ。今度来た時はちゃんと用意しておくから、一緒に見ましょうね」
「あー! 有紀ずるい! あたしもあたしも!!」
待て待て待て! 何勝手に話し進めてんだあんた等!?
「・・・はぁ。」
・・・もうなんでもいいから、早く行きませんか?
そんなこんなで、ようやく家を出た僕等
目的地のラーメン屋は隣町にあるので、まずは電車に乗っていく必要がある
・・・お忘れの方に説明すると、隣町というのは電車で片道20分の所にあり、
繁華街や高いビルが立ち並んでいる隣町は、僕達田舎人にとっては大都会とも言えるところである。
そんなわけで、僕達はまず駅に向おうと、歩き出した・・・その時。
「あぁー 腹減ったー」
「駄目よ、私。こんなところで倒れちゃ・・・でも、お腹がすいて、もう歩けないわ・・・」
「飯を・・・誰ぞ、飯を・・・っ!」
僕の家の目の前で、見知ったクラスメイト三人が行き倒れていた。
・・・なんという、カオスな光景。
正直、ドン引きの一言だが。あまりの光景に、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった
「・・・あの、秋君・・・」
隣にいた未来が困惑しながら袖を引っ張ってくる
「未来。僕達は、何も見ていない。何も見えない。 ・・・行き倒れの人達なんて、見ていない」
「いや、でも・・・有紀ぃ・・・」
次に、有紀の袖を引っ張る未来
・・・その表情は、若干恐怖を感じていた。
「未来、秋氏の言うとおりだ。我々は何も見ていない・・・ホラ、さっさと行くぞ」
「え、えぇー・・・」
僕と有紀の反応に不満顔の未来であったが、
正直。これは僕等の手に負える状況ではないので、放置しておくのが一番だろう。
「腹減ったー 腹減ったよー」
「あぁ・・・お母さんのおむすびが恋しいわ・・・」
「飯をー スーシーをー・・・」
「「「・・・。」」」
僕達はなるべく目を合わせないようにして、行き倒れの三人を通り過ぎた
・・・一体なんだったんだアレは。というか、さつきまであんな茶番に付き合って・・・まさか本当に行き倒れだったのかな?
色々と疑問は残るが、無視してしまったものは仕方ない。あの三人のことは、忘れよう。
そんなことを考えながら、僕達はただ、駅に向かって歩き続けた・・・
すると突然、
「秋氏。後ろを見ろ」
「・・・え?」
有紀に言われ、反射的に振り返ると・・・そこには・・・
「「「無視してんじゃねぇぇぇぇええええええええええええええええ!!!!!!!!!」」」
なんか行き倒れの皆さんが追っかけて来たあああああああああああああああああああああああ!!!!???
次回、ラーメンデートそのよん!
秋:なんか寒いねー
厚樹:今日雪積もってたしなぁ。
又二郎:そうだなぁ、こんな寒い日は、こたつでのんびり寝るのが・・・
秋 厚樹:お前はそんな暇ねーだろ!!
又二郎:・・・ハイ。ガンバッテ書キマス。