六十三話、ラーメンデート! そのいち!
ツンデレ攻略中!!
朝です。気持ちのいい日差しが、僕を頭から照り付けています
・・・クソ暑いよ。これっぽっちも気持ちよくないよ。
こんな暑い日は、午後までぐっすりと寝ているのが正しい過ごし方だと僕は思います
故に、今日は午後までぐっすり寝ていよう。そう思って夢の世界に入り浸っていたのですが・・・
「おはよう秋氏。今朝はいい天気だな」
「・・・クソ暑いよ」
家のすぐ目の前。そこにさわやかな笑顔で立っていたのは、服部有紀。
僕を夢の世界から引き剥がしやがったのは、彼女の鳴らしたインターホンだった
・・・こんな朝っぱらに、何の用があると言うのだ。
「なんだ、随分機嫌が悪そうだな? まさか嫌な夢でも見てたのか?」
「たった今、悪夢を目の当たりにしてるからね」
「・・・わかった。そんなに寝足りないのなら、私が病院のベットに連れて行ってやろう」
そう言って、どこからともなく木刀を取り出す
「オーケー、僕が悪かった。とりあえず用件を言ってください」
すかさず謝罪すると「ふん」と鼻で笑って、木刀を納める有紀。ちなみにポケットイン。
・・・あれですか、あなたのポケットは四次元に繋がっているタイプのアレですか?
「昨日言っていたラーメン屋の件だ」
「ラーメン屋? あ、もしかして昨日言ってた?」
「そうだ。どうせ我々は暇なんだから、今日食べに行こうと思ってな。ちなみに未来も誘ってある」
「そういうことでしたか」
オーケー、とりあえず事情はわかった。今日のお昼にラーメンを食べようってことだね
実は一昨日もラーメン食べたけど、それは気にしないよ・・・でも・・・
「なにゆえ、連絡してくれないのですか。正直いきなり来られたから焦ったよ」
「っはっはっは! ・・・秋氏の驚く顔が見たかったんだ、連絡しないのは当然だろう?」
・・・ごめん、意味わかんないです。
「・・・はぁ、とりあえず、立ち話もなんだから入ってよ。コーヒーくらい出すからさ」
「おぉ、気が利くな。お言葉に甘えて、お邪魔しようではないか」
家に有紀を上げた僕は、とりあえず顔を洗おう。そう思った・・・
「久しぶりね、秋ちゃんが女友達を家に連れてくるの。それも知らない子で、お母さん驚いたわー」
「始めまして、服部有紀です。秋氏にはいつもお世話に・・・なって、ます」
紛らわしい言い方するなよ。しっかり茶道部の件でお世話になってるじゃん。
有紀を家に上げ、まず彼女をリビングに案内した
・・・そこですかさずコーヒーを持ってきた母上は、流石としか言いようが無い。
「とりあえず、僕は顔洗ってくるから、大人しくしててよ?」
洗面所に向かう前に、有紀にはしっかりと釘をさしておく
他人の家だから、妙なことはしないと思うんだけど、念には念を入れてってね。
「当たり前だ。流石の私も、人様の家ではちゃんと猫を被る」
「・・・安心したよ」
『猫を被る』て。
有紀の返事を聞いた僕は、洗面所に向かうためきびすを返す。すると、
「すみません、母上様。秋氏の昔のアルバムってありますか?」
「ふふっ、もちろんあるわよ! ちょっと待ってね、すぐ持ってくるから」
「持ってこんでいいわ!!」
油断もすきも無い! 頼むから大人しくしててください!!
「・・・それで、未来はいつ来るの?」
なんとか洗顔と着替えを済ませた僕は、再び有紀の待つリビングに戻ってきた
「秋氏が顔を洗っている間に『もうすぐ着く』と連絡が来たよ。しかし、勿体無いな。せっかくだから未来にも秋氏の寝起きを見せてやりたかった」
「有紀だけで十分だよ」
「冗談だ。そう不貞腐れるな」
「・・・」
あぁ、有紀と話していると心が疲れるよ。
早く来ないかな、未来。今こそあの太陽みたいな笑顔が見たい。そして、出来ることなら、その華奢な身体を抱きしめたい。そう思う真鍋秋であった。by有紀。
「・・・モノローグで遊ぶな!!」
「冗談だ。そう不貞腐れるな」
未来さん早く来てええええええええええええ!!
来てこの理不尽女の暴走を止めてぇえええええええええええええ!!
「あら、まだ誰か来るの?」
僕等のやり取りを聞いていた母上が、マグカップを取り出しながら聞いてくる
「あと一人来るよ」と言うと、母上はマグを一個だけ取り出して、もう一杯分コーヒーを造り始めた
そんな母上を見た有紀が、
「あ、すみません。これから来る子は、無糖コーヒーが苦手なんですよ」
そう言うと、母上は困ったように首を捻る
「あら、そうなの? んー、そうだなぁ、どれだけ甘かったら飲めると思う?」
普段無糖コーヒーしか淹れない母上は、砂糖の分量がよくわからないみたいだ
「そうですね・・・小学生が喜ぶくらいの量でお願いします」
「・・・おい」
「待て秋氏、私は本当のことを言ったまでだ。むしろそれくらいじゃないと、本当に飲めないと思うぞ?」
・・・まじですか。
まぁ、確かにあの未来が苦いコーヒーを好んで飲むとは思えないが。
母上は「小学生・・・秋ちゃんが小さい頃は・・・んー・・・」と頭を悩ませながら、砂糖を取り出した
ぴんぽーん。
・・・そんな時、玄関のインターホンが鳴った
「未来かな?」
「だろうな。秋氏、女の子を待たせるのは良くない。一秒でも早く行ってやるといい」
有紀の言葉に「サーイエッサー」と答えてから、玄関に向かう
玄関に行き、ドアを開けると「ここで合ってるかな・・・?」と不安げにごにょごにょ言っている未来の姿が。
・・・か、可愛いな。僕が悪いおじさんだったら、確実に連れ込んでいる所だ・・・って、いやいやいや! 今の無し!!
「おはよう未来」
「あ、おはよう秋君! よかったぁ、場所、間違えてなくて」
僕の顔を見るなり、ほっと胸を撫で下ろす未来
そういえば、有紀や未来はどうして僕の家の場所を知ったのかな?
気になったので、そのまま聞いてみる
「そういえばそうだよね、あたしは有紀に大体教えてもらったから来れたんだけど・・・有紀はなんで知ってたんだろ?」
「さ、さぁ・・・なんでだろうね?」
有紀のことだ。きっといろんな手段を駆使したんだろう
・・・まぁいいや。暑いし、とりあえず家の中に入ろう。
「未来、有紀もいるし上がってよ。母上がコーヒー用意してるし」
「うん。わかった、お邪魔します秋君!」
元気よく挨拶する未来を、先に玄関へ通し、その後僕が扉を閉め・・・ようとした、その時。背中に何か、視線のようなものを感じた
「・・・?」
なんだろう・・・『羨ましい、怨めしい』という視線を、ひしひしと感じるのだが・・・
「ま、いっか。」
「? どうしたの秋君?」
「ううん、なんでもないよ! ささ、ゆっくりしてってください未来さん!」
「はーい!」
結局、その視線の主が誰なのかは不明だったが、僕は特に気にしなかった・・・
「・・・羨ましい、怨めしい」
厚樹の家。
俺は自分の部屋から、秋と未来ちゃんの姿を眺めながら、そう呟いた
休日に女の子を自宅に連れ込むとは、言語道断!!
俺の幼馴染が、あんなプレイボーイだったなんて、羨ま・・・じゃなくて、けしからん!!
「秋の野郎・・・今まで全く縁の無かった未来ちゃんと有紀ちゃんを一気に連れ込むたぁ、いいご身分じゃねぇか・・・」
厚樹は不敵に笑いながら、ある人物にメールをうち始めた・・・
「っていうか・・・羨ましいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」
・・・これが、本音である。
次回、ラーメンデートそのに!
秋:昨日は遅刻したの?
厚樹:お前この時期に遅刻とかすんなよ?
又二郎:大丈夫、俺の自転車は音速を超えるのさ・・・
秋:黙れ
厚樹:そして、腐れ。
又二郎:冷たいんだよお前ら!!!