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六十二話、女将とクラス長。

とんかつ!

「海ノ麺・・・ここですね? 舞さんが来たかったラーメン屋というのは」


 目の前のラーメン屋、『海ノ麺』を見上げながら、女将さんが尋ねてくる

・・・忘れている方に説明します。こちらの女将さん『D組サマーイベント』の時に少しだけ活躍しました。

 帰りのバスに潜り込んだ女将さんは、いろいろあって今は我が校の保険医になっています。どんな方法を使って保険医になったのかは、よくわかりません。てか、わかりたくも無いです。



「そうなんですよ! ここ、まだ出来て新しいんですけど、かなり美味しいって評判なんです!」

「本当ですか? それは楽しみです。坂部さん、早く入りましょう」


「はい!」


 そう答えてから、私と女将さんは揃って海ノ麺に入店した・・・



 こんにちは、坂部舞です! 本日私は、最近オープンした美味しいと話題のラーメン屋『海ノ麺』にやってきました!

 D組サマーイベントの時に仲良くなった女将さんも一緒なので、今日はとても楽しい一日になりそうです!

 余談ですか実は私、ラーメンが大の好物だったり。なのでラーメンにはちょっとうるさいのです。

・・・さて、この海ノ麺は私の舌を満足させてくれるのでしょうか・・・。




 店員さんに案内された席で、私達は早速メニューを確認する


「あれ? なんか、メニューが少ないですね?」


 ページの無いペラペラなメニュー表。そこに書かれている商品は、たった一品。

・・・海鮮ラーメン。


 メニュー表をひっくり返してみると、裏面にはサイドメニューがつらつらと書かれていたのだが、麺類はやはり『海鮮ラーメン』のみ

・・・なるほど。きっとこの海鮮ラーメンとやらに、全てをかけているってことなのね。たった一品だけで繁盛しているなんて、このラーメン屋・・・できるっ!!



「海鮮ラーメンですか、きっとこの商品にかなりの自信があるんでしょうね」

「注文に悩む手間が省けていいですね。それじゃ私は海鮮ラーメンにします」


 にこにこと楽しそうに笑う女将さんとは対照的に、私の表情はこれ以上ないくらいに真剣だった


「それじゃあ、ウチも海鮮ラーメンにしますね」

「わかりました・・・それでは、いざ注文を」


 お互いに注文する商品が決まったので、私は近くにいた店員を呼んだ



「はいはーい、ご注文は・・・って、おおおおおおお! クラス長!!」

「え? あら、又二郎じゃない。バイト?」


 偶然にも、私の呼びかけた店員はクラス一の問題児である又二郎だった


「この店の店長とはちょっとした仲でな! 是非バイトしないかって誘われたんだよ!」

「へぇ。誘われたとはいえ、あんたがバイトしてるなんてね」

 まともに仕事ができるのか、少し心配だった。


「全ては、俺ん家の庭にバスケットゴールを置くためだ!!」

「あぁ、バスケットゴールが欲しいからね・・・」

 やっぱりバスケ馬鹿だなぁ。でもま、動機がバスケ関係ならちゃんと仕事もこなせるでしょ。安心安心。



「それで、そっちの女の人は・・・」

 言いながら、私の向かい側にいる女将さんに視線を移す又二郎

「・・・どっかで見たことあるんだけど、確か・・・」


「あんた忘れたの? 旅館の女将さんよ、海行ったときに会ったでしょ?」


 そう言うと、又二郎はようやく思い出したようで。ポンと手を打った


「あぁ、そうそう! D組サマーイベントん時に、俺達が泊った旅館の女将さん・・・って、おおおおおお女将さん!!? 何故ここに!!!」

「又二郎さん、お久しぶりです」

「あ、はい! お久しぶりです! ・・・な、なんだ? 何故だか女将さんを見ると、恐怖のようなものが込み上げて・・・なにゆえ?」


 又二郎は以前、女将さんの手によって人造人間に改造されていたのだ

 その時の記憶は綺麗に消されていた筈なのだが、やはり人間の本能が女将さんへの恐怖を忘れてはいなかったらしい


「そ、そんな。ウチを見て、恐怖を感じるなんて・・・ちょっとショックです。よよよ・・・」

「うっ・・・すみません」


 少しいじけた風におどけるという愛くるしい仕草を見た又二郎は「や、やっぱり、気のせいか」と自分に言い聞かせた

・・・哀れ又二郎。と思いながら、海鮮ラーメンを二つ注文した。



「はいよ、海鮮ラーメン二つな?」と再度確認した又二郎は、厨房の方へ引っこんでいった

 その後、厨房から「客と長話してんじゃねぇ!!」と言う怒鳴り声と「すまっせん店長!!」と全力で謝る又二郎の悲鳴が聞こえてきた

・・・又二郎が知り合いって言ってた店長さん、怖い人だなぁ。


「あら? この声は・・・」


 厨房のやり取りを聞いた女将さんが、なにやら驚いた様子で席を立つ


「え? どうしたんですか、女将さん?」

「ごめんなさい、ちょっと聞き覚えのある声がして・・・」


 言いながら、厨房を覗き込む女将さん

・・・一体どうしたのだろうか、と女将さんの行動を見守っていると、


「やっぱりウチの旦那でした! あなたー! おーい!!」

「だ、旦那っ!!?」


 まさか、この店に女将さんの旦那さんがいらっしゃったと!? 又二郎と言い、なんという偶然!!

嬉しそうにぴょんぴょん跳ねながら、厨房の奥に向かって手を振る女将さん。そんな女将さんに気付いた店長が、厨房から顔を出した



「あぁ? なに店で騒いでんだ・・・うおぉお!? なんでよっちゃんがここに!?」


 非常に迷惑そうな顔をして出てきた店長。しかし、女将さんの顔を見た途端、ぎょっと目を見開いた

 ・・・あぁ。よっちゃんって言うんだなぁ、女将さんの名前。初めて知ったわ。


「へぇー 『ラーメン修行に行く』って、ウチの旅館を飛び出していった末が、このちっちゃいラーメン屋だったんですね?」

「あ、あぁー そうだよ、悪かったなちっちゃいラーメン屋で」


 女将さんの言葉に、頬をかきながら答える店長。

なんかもぉ、いろいろと話しについていけないけど。とりあえずいろいろあったらしい。


「っつうか、旅館の方はどうした? まさか休業してるわけじゃないよな?」


 自分に続いて、女将さんまで旅館を飛び出していたことに気付いた店長が、少し心配そうに聞いた


「大丈夫ですよ、旅館のほうはちゃんと皆さんに押し付け・・・じゃなくて、お任せしてきましたから」


 皆さん・・・以前女将さんが言っていた、下の者達のことだろう。


「あいつ等、ちゃんと運営できんのか・・・?」

「もう何年働いてると思ってるんですか? 皆さんなら、大丈夫ですよ。多分。」

「多分ってなぁ・・・まぁ、今更気にしても仕方ねぇ。ホラ、すぐラーメン作ってやるから、席で待ってろ」


「ふふ。修行の成果、期待してますよ?」


 悪戯っぽく笑う女将さんに「舌唸らせてやるよ」と言って厨房に戻る店長

 それを見届けた女将さんは、とても楽しそうに私の待つ席に戻ってきた。


「えっと、旦那さんですか?」

 女将さんが戻ってきた所で、先程から置いてけぼりだった私は尋ねた


「そうなんですよ。ずっと前、ラーメン修行に行ったきり会ってなかったんですけど・・・」

 と、懐かしそうに話し始めた女将さん。私はそんな女将さんの話に耳を傾けながら、海鮮ラーメンが出来上がるのを心待ちにしていた・・・




 そんな二人のいるラーメン屋に、秋達ご一行が来るのはもうすぐのことである・・・


次回、ラーメンデート!






秋:あれ、何気にしりとり続いてるね?

厚樹:超時空しりとりはなんか終わっちまったけどな。


又二郎:つかやばいって!!遅刻する!!


秋 厚樹:早く学校行け!!!

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