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六話、再びファミレスへ

天体望遠鏡!

 放課後。僕達はいつものようにファミレスへとやってきた。

 ファミレスの前に置かれていた『お知らせ板』を見て厚樹が驚愕する。


「こ、これは……っ!?」

「? お知らせ版がどうしたの?」

「おぉぉぉ……」

「ちょっと邪魔だからいっぺんどいてよ」


 驚きのあまり動かなくなってしまった厚樹。


「ぉぉぉぉおお……」

「……仕方ない」


 お知らせ版を見るためにはどうしても邪魔なその背中をトン。と押した。

 軽く押しただけなのにごろごろと地面を3メートルくらい転がっていった。

 OH,スタントマンデスカー……?


「一体何が書いてあるんだよ? ……なっ、こ、これはっ!!」


 厚樹の意外なスキルよりもお知らせ版の内容に驚いてしまった。

 お知らせ板に書かれていた内容は……これだぁ、わんとぅーすりー♪(ザ・ベス○ハウス風に)。


 【本日、カップル限定! デラックスパフェがなんと半額!? 日本のカップル達よ、このチャンスを見逃すな!!】


 これは恋人の居ない人たちへの嫌がらせか?


 ちなみにデラックスパフェと言うのはこのファミレスの看板メニューで、とにかく巨大なのが売りである。

 巨大なグラスの中央には巨大なプリンが置かれ、その周りには生クリーム、アイス、果物が盛り付けられた普通のパフェ。作りはシンプルだが、その大きさはまるで富士の山。

 巨大なだけあって価格が高く、学生には中々手の出せないメニューなので僕達としてはこのチャンスを逃す訳にはいかないのだ。


「おい秋!」


 地面でぐったりしていた厚樹が立ち上がり僕の肩をがしっと掴む。


「な、何だよ?」

「お前って女だよな!」

「はぁ!? 何言ってんの!?」


 珍しく真剣な顔つきの厚樹を見て戸惑うが、すぐにヤツの考えがわかった。


 こいつは本気でそんな事を言っている訳では無い。

 お知らせ版の【カップル限定】という文字を見ればわかるだろうが、要するに女顔の僕が彼女役をやれ、と言う事である。


 そうすればなんの問題も無くデラックスパフェにありつけるのだが、僕にだってプライドというものがある。たとえデラックスパフェのためとはいえ僕は男だ。


「厚樹の言いたい事はわかるよ、でも」

「バッキャロゥ!!」


 ぱっしーん! と、怒鳴りながら厚樹が僕の頬を叩いた。

 綺麗に決まった張り手の音が辺りに響く。


「な、何すんだよ!!」


 頬を押さえながら厚樹を睨む。


「俺だってなぁ、お前の考えている事はわかる! でもな! 見ろよこのポスターをよ!!」


 言いながら「見ろ見ろ!」とポスター中央のプリンを指差す。


「見ろよこのプリンを! こんなでかいプリン見たことねーだろ! こんなでかいプリンを一度食べてみたいだろ! やっぱりスーパーに売ってるプリンじゃ物足りねーだろ! こ、これを見てもまだプライドを捨てねえつもりか!! なんてやつだ!? てか、食いたくないのかデラックスパフェ!!」

「厚樹……」


 ごめん、必死なのはわかるけど。アホな事しか言ってないよコイツ。


「もう一度聞く! お前は女か!? 男か!?」


 余程デラックスパフェが食べたいのだろう。厚樹の目が怖いくらい血走っている。


「どうなんだ!? 秋!」

「……っく、僕はっ、女だっつーのおおおおおおおおぉぉおおおおぉ!!」


 もうやけくそで叫んだ。だって僕もデラックスパフェ食べたかったし。


「ママー、あのお兄ちゃん達何騒いでるのー?」

「しっ、指差しちゃいけません!」


 僕達の横を一組の親子が通り過ぎていった。


「……」

「……」


 ぽかんと立ち尽くす 『お兄いちゃん達』。


「穴があったら」

「入りたい」


 もうなんでもいいや。







「それではごゆっくりどうぞー」


 テーブルの真ん中にデラックスパフェを置き、相変わらず美しい営業スマイルの店員さんはカウンターの奥に消えていった。

 普段ならその後ろ姿を眺めている厚樹だが今日は違う。もうテーブルに置かれたデラックスパフェしか眼中に無かった。


 僕と厚樹はお互いにスプーンを構え、同時に叫ぶ。


「食わせていただくぜ!!」

「いただきます!!」


 デラックスパフェの巨体が無くなるのにそれ程時間は掛からなかったという。




「食った食った、堪能したぜプリン様ぁー」


 厚樹が巨大なグラスの中央にスプーンを投げ入れる。


「まさかここまで美味だったとは……」


 僕もスプーンをグラスの中に入れる。


「やべ。これ半額じゃ無い日でも食いてぇわ、おそろしやデラックスパフェ」


 空になったグラスを見つめながら厚樹が呟いた。


「やめとけ。財布が泣くよ?」

「だよなぁ……」


 名残惜しそうに厚樹がスプーンを手にとり、グラスに溶けて残っていたアイスを掻き集め始めた

 意地汚ねぇって……。



「うぁあー ぎぶぎぶ! もう食えない!!」

「私も……」


 厚樹の意地汚い行動を眺めていると、隣のテーブルから聞き覚えのある声がした。

 僕と厚樹は一度目を合わせてから隣のテーブルに視線をやる。そこにいたのは。


「あ、さつきと美咲だ。おーい」


 隣のテーブルではさつき達がデラックスパフェと格闘していた。

 まだ半分も食べていないようだが、どう見ても二人のお腹はいっぱいいっぱいの御様子。


「え? おぉ秋くんに厚樹ー! 丁度よかった、このパフェ食べてくれないかね!」


 僕達に気付いた美咲がぱっと笑顔を浮かべてデラックスパフェを指差し僕達を手招く。


「いいのか美咲ちゃん!?」


 そのお誘いに勢いよく厚樹が食いついた。


「私からもお願い。もう死ねる」


 美咲と同様お腹一杯のさつきが言う。


「任せとけって! 当然秋も食うだろ?」

「聞くまでもない!」


 もちろん美女二人のお誘いを断る理由も無く、僕達は意気揚々と隣のテーブルに移動した。

 こうして僕達は本日二杯目のデラックスパフェを食べる事になりましたとさ。


次回、仲良くお茶!



秋:いやぁデラックスパフェはうまかったねー

厚樹:あぁ、あれは素晴らしかったなー


又二郎:来たぜ皆あああああああああああ!!

秋:・・・馬鹿が来たよ。

厚樹:うぜぇな。


又二郎:まぁまぁ、んな邪険に扱わないで。今回はちょいとした交渉に来たんだって。

厚樹:交渉?

秋:ヒロインとか主人公になりたいとか言ったら殺すからな。


又二郎:そんなんじゃない!もうちっと俺の出番を増やしてくれないかと言いたいんだ!!

厚樹:何様だお前。


又二郎:神だ!

秋:天に昇らせてやろうか?


又二郎:あ、ごめ・・・じゃなくて!お前らセコいじゃん!?ファミレスに仲良しメンバー勢ぞろい的な事になってるけど、俺居ないじゃん!ずるいじゃん!!


秋:うるさいな、お前が来るとただうるさいだけのコントになるじゃんか。

厚樹:そうだそうだ!お前が居ると空気腐るんだぞ!


又二郎:黴菌扱い!!?酷くね!!?

秋 厚樹:妥当な扱いだ。


又二郎:っく・・・こうなればウェイトレスに化けて出てやる!!!!

秋:やってみなよ。

又二郎:あらほらさっさー!

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