五十九話、世話焼きなお姉ちゃんは言いました。
水夫!
夕飯を食べ終えた僕達は、皆でリビングに集まり思い思いにくつろいでいた
「なぁ、何がラーメン屋なんだよー?」
「・・・別にー?」
厚樹の馬鹿は夕飯の時に言った僕の一言が気になって仕方ない様子だが、
その前にコイツは紙袋の中身を教えてくれなかったので僕も『ラーメン屋』の意味を教えない事にした
中々口を割らない僕に痺れを切らした厚樹が「うがぁあああああああー!!!」と雄たけびを上げる
・・・人の家でうるさい奴だな。近所迷惑。
「っち。まぁいいだろう! 今日の俺は、この辺で引き下がるぜ」
「・・・なんだと?」
いつもなら意地でも問いただそうと、
ありとあらゆる手段を駆使してくる筈の厚樹が、今回は不敵に笑いながら右ポケットに手を突っ込む
「いつもなら更に追求したんだろうがな。今日は一味も二味も違うぜメーン」
「へぇ、成長したじゃん厚樹」
厚樹の珍しい対応に少し興味が沸いたので、テレビの画面から厚樹へと視線を移す
「見るがいい! これが、その理由だぁああああああああああ!!!」
「うっさいなぁ・・・」
ヤツは雄たけびを上げながら、右ポケットに入れていた手を引き抜く
・・・その手の中には一枚のクーポン券。
「ラーメン半額?」
クーポンに書かれている文字をそのまま読む
・・・なるほどな、これがあったから厚樹の機嫌が良かった訳だ。
【ラーメン半額】という文字がデカデカと書かれたそのクーポンを厚樹は指に挟んでひらひらと弄ぶ
「どうだ? 欲しいか?」
「いや、別にいらないけど」
「ははは! やっぱ欲しいよなぁ!? でも残念、このクーポンは俺様の・・・・・・っ、は? い、いらねーの?」
「うん。 ・・・あ、タダならちょうだい」
「・・・ポカーン」
ポカーンて。
僕がそのクーポンを欲しがると思っていた厚樹は、
『いらない』と即答されたのが相当ショックだったらしく、文字通りポカーンと口を開けて思考停止状態になった
厚樹の持っているクーポン券は隣町に新しく出来たラーメン屋のモノだった
正直、ついさっきラーメン食べたのに、わざわざ隣町までラーメンを食べに行く気にはなれないよね
・・・というわけで、特別そのクーポン券が欲しいとは思いませんでした。ごめん厚樹。
「大体なんでラーメン? さっきも食べたでしょ?」
「・・・」
「いつまで思考停止してんだよ、お前・・・」
未だに思考停止状態を続けている厚樹から、ひょい。とクーポン券を拝借する
やっぱり隣町のヤツか。それだけ確認した僕は、そのクーポンを厚樹のポケットにしまっておいた
「おい、厚樹! いい加減戻って来ーい!」
「・・・ん、おぉ! えっと、なんの話だっけか? あぁ。だから、このクーポンを見て今日はラーメンが食いたくなったんだよ!!」
・・・ガキかお前は。
「秋、ちょっといい?」
「・・・うん?」
急に呼ばれたので、少し驚きながら声の方を見る
リビングを出たすぐにある、階段の手前の位置。
今まで一緒にテレビを見ていたはずの姉が、そこで僕を手招いていた
僕がそれを確認したのと同時に、階段を上がっていく姉。どうやら『ついてこい』という意味らしい。
なんだろう? と首をかしげながら、階段を上がっていった姉の後を追いかけた
後ろで「あれ!? クーポンが消えた!! イリュージョンか!!?」と騒いでいる厚樹は放っておきました。はい。
僕がお招きされたのは、姉の自室。
姉はベットの端に腰掛けて、僕の顔をじーっと見つめている
・・・えっーと、なんか姉を怒らせるような事でもしたのだろうか。
と思いつつ、適当なクッションの上に胡坐をかいて座った
そのすぐ後に「んー・・・?」と首をかしげながら口を開く姉
「ねぇ秋、あんた部活入った?」
なんでもう知ってるんだあんた。
まぁ、隠すようなことでもないので素直に頷く
「え? うん、そうだけど・・・それがどうしたの?」
僕の返事を聞いて「やっぱり。」と頷く
「今日部活の時に、一年生たちが噂してたのよ。『秋くんが部活に入ったー』って」
「うわぁ、なんで知ってるんだろ・・・?」
「知らないわよ。秋が部活に入った事が嬉しくて、先生達が言いふらしたんじゃない?」
・・・なんて迷惑な。やっぱり鬼だなウチの教師。
「それで、どの部活に入ったのかって聞いてみたけど、
そこは皆知らなかったのよね。でも姉としては、そーゆー事はちゃんと知りたいの。わかる?」
「あぁー まぁ、わかったような、そうでないような・・・」
・・・僕にはさっぱりだが、そーゆー事らしい
っていうか茶道部の知名度低すぎでしょ。流石に驚いたよ。
「茶道部だよ。知ってる・・・訳ないか」
「茶道部って・・・そんな部活あったの?」
「やっぱり。」
予想通り、姉は知りませんでした。
「部員三人の小さい部活だからね。知られてないのは無理もないかなー」
「部員、三人!? あんたの知り合いで三人っていうと・・・
えっと、秋と厚樹君と・・・確か又二郎君だっけ? その三人でやってるの?」
僕の身近な友達を挙げた姉。だが、その中に茶道部部員の名前は無かった
・・・姉は未来や有紀のこと、知らないもんね。
「ぶー、ハズレ。部員は僕と・・・・・・っは!?」
待て待て待て! なに部員の名前言おうとしてるんだ僕は!?
よく考えてみろ! 部員は未来と有紀の女子二人! 『美少女二人と楽しく部活してます。』なんて言えないって!!
・・・そんな事言ったら、姉にからかわれる。間違いなく。
冷静に考えた結果、姉には黙秘する選択を選んだ
ただ黙っているだけでは怪しまれるため、適当に、
「・・・厚樹と又二郎」
ごまかした。とてもわかりやすい形で。なんてこった。
「嘘ね。さっきハズレって言ったじゃない」
「ごもっともです」
これは・・・言わなきゃいけないんだろうなぁ・・・
茶道部について、これ以上ないくらい興味津々な姉を見て、そう思った・・・
次回、茶道部部室に乗り込み!!
秋:さて、とうとう冬休みに入っちゃったわけですが・・・
厚樹:書き貯めが無いんだよなぁ、又二郎?
又二郎:・・・はい。
秋:質問です。『二十話先まで書き貯める』これは誰が言った言葉でしょうか?
又二郎:わたくしでございます。
秋:正解!そんなあなたに馬鹿の称号をプレゼント!
又二郎:っく・・・又二郎、一生の不覚でございます。
厚樹:んで、冬休み中の更新はどうするんだよ?
又二郎:ははっ、とりあえず今書き貯めてある所までは更新するつもりですが宿題が追いつめてくるので・・・
秋:書き貯めが尽きたら冬休み中の更新は無し、と?
又二郎:不覚でございます・・・
厚樹:ちなみに書き貯めの数は三話先まで・・・って・・・
秋:お気に入り登録者が減ったらどうするこの野郎!!
又二郎:うるっさいわ!!これでも頑張ったんだぞ!!?
秋:嘘つけ!『村クエクリアできねぇ』とか言ってゲームにかじりついてたくせに!!
又二郎:ラージ○ン二頭なんて無理だっつの!!しかも一人で狩るんだぜ!?
秋:知るか!!