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五十三話、有紀の頼みごと

イングランド。

 入部の話は一時保留となり、話は本題に入っていた


「さきほど秋氏が言った通り、この部室は狭い。私は別にどうでもいいのだが、この茶道部を大きくしたいと思っている未来にとって、この部室の狭さは少し厄介でな」

 有紀が話し始めてから僕はあまり口を挟むことなく、こくこくと頷くだけの人形になっていた

また話が逸れると、話が長引いちゃうしね。その間に未来が帰ってきたら、話どころでは無くなってしまうからだ


「そういえば、未来本人もそんなこと言ってたなぁ。部活はやりたいけど、いろいろあって出来ないとかなんとか」

「はぁ・・・どれもこれも、やる気の無い顧問のせいだな。まったくけしからん」

 ・・・オイ。人のせいにするなよ、やる気のない部員、服部有紀。

と、思ったが。余計なことを言うと話が逸れるので我慢する



「秋氏、夏休みが明けてから最初のイベントといえば?」

「え? えっと・・・創立記念日の、何だっけ? 創立祭?」

 また唐突な話題だな。と思いながら答える

 そういえば、ずっと前に姉から聞いたことがあったなぁ。よくある学園祭のようなものだって

僕が答えると、有紀は「正解だ」と頷いた


「その伝統ある創立祭に、各クラス、そして各部活が出し物をする事も知っているな?」

「うん、毎年家族で創立祭には来てたからね」

 ウチの高校は昔から創立記念日に大きな祭りを開催し、文化祭のように出し物や出店をやったりしているのだ

一般開放もされているので、毎年多くの来場者が来るんだとか。


「噂によれば、その創立祭の時に大きな儲けを出した部はとても便利な『得点』がもらえるらしい」

「・・・得点?」


「そ、得点だ。簡単に言ってしまえば、その得点があれば部室の移動や予算の繰り上げを頼みやすくなると言うことだ」

「あぁ、成る程ね。なんとなく理解したよ」

 つまり、有紀が言いたいのは、その創立祭で大きな儲けが出せるように協力してくれ。ということだ

・・・よかった、無茶なお願いじゃなくて。



 有紀の話を一通り聞き終え後、二人でジュースを煽りながら伸びをする

 有紀は「久々に長話をして、のどが疲れた」とのこと。普段どんだけ無口なんだよ。と言いたい所なのだが、確かにペラペラと喋る彼女の姿は想像しがたいのでスルーしておいた


「ふぅ・・・とりあえずはまぁ、こんなところだ。私的には、そこまで無茶なお願いでは無いと思うのだが」

「うん。一生奴隷のようにコキ使われるのかと思ってたから、ちょっと安心したよ」

 有紀の話を一通り聞き終え後、二人でジュースを煽りながら伸びをする

有紀は「久々に長話をして、のどが疲れた」と


「・・・秋氏は私のことをどう思っているんだ?」

 冷酷非道でドSなブリザードガールです。とは死んでも言えない

「カワイラシイ、女ノ子ダト思イマス」

「・・・わかった。もういい、結構だ」

「じょ、冗談だってば!?」

 片言な返事を聞いた有紀が、ちょっとむくれてしまった

・・・しまった。つい怒らせてしまったか


「いやいや。いいんだ、どうせ私は他人を奴隷のようにコキつかいそうな、酷い女だからな」


 ごめん、その通りだよ。

・・・なんて、少し前の僕ならそう思ったんだろう。でも、今は少し違った。


 ボイスレコーダーで僕を脅したり、無理矢理茶道部に入部させたり。

 やってることは確かに酷いけど。さっきの話を聞いていた僕は、彼女がそんな酷いことをする理由がわかっていたのだ


 『私は別にどうでもいいのだが、この茶道部を大きくしたいと思っている未来にとって、この部室の狭さは少し厄介でな』 

 と言うことは。つまり・・・


「有紀は、アレでしょ? すごく友達想いの、いいヤツなんだよね?」

「っな!! おいっ、いきなり何を言う!?」

 ボンッと弾ける様に赤くなった有紀が目を見開いた

・・・お? なんか一気に乙女チック? こんな表情の有紀を見るのは初めてだ。なんか感動。


「だってさ、さっき有紀が話してたことって、有紀には何の得もないでしょ?」

「うぐ・・・」


 もし。この計画が成功したとしても、せいぜい予算が増える事くらいしか有紀には得が無い

つまり今回の計画はほぼ全て未来のために作られた計画だったということである


「い、いや。それはだな・・・」

「やり方は強引だったけどね。でもまー、それも友達のためにやってたんだし仕方ないよね」

「く、くそ。秋氏のくせに生意気なことを」


 珍しく頬を染めながらうろたえる有紀は、やっぱり新鮮だった

よし。これからは、ブリザードガールなんて呼ばないでおこう。有紀は冷酷非道でもなかったんだし

・・・ここに来て初めて。有紀を女の子として認識しました。



「さて、それじゃ! 友達想いな有紀の計画、僕もできる限り協力するよ!」

「なんか腑に落ちんが・・・歓迎しようじゃないか、秋氏」


 妙に納得のいっていない様子だが、それでも彼女は微笑んで。そして僕に向かって手を差し出した

「うん。よろしくね、有紀」

 その手を掴んで、二度振った

よろしくお願いしますの握手。正式に入部するという握手。そんな握手を交わした僕等は・・・


 ・・・僕達『茶道部』は、創立祭に向けて一歩踏み出したのであった・・・

 







「なっ、なんだってええええええ!!??」

「ひぅ・・・」

 ・・・た、大変な事になってしまった


「いいいい今っ、耳がおかしくなってしまったようだ・・・すまん浅田。もう一度言ってくれないか?」

 目の前の男性教師。あたしの担任兼顧問であるサトケンが、驚愕を顔に浮かべている

 まぁ確かに、いきなりこんな事言ったら誰だって驚くよね。と思いながら、先程言った台詞をリピートする


「1年D組の真鍋秋君が、茶道部に入部しま・・・」


「なんだってええええええええええええええええ!!??」

「ちょっとー!? またですか先生ー!?」

 ちなみに、このやり取りはこれで4回目。

・・・はぁ、信じられないっていうサトケンの気持ちもわかるけどね。いい加減、入部手続きを進めて欲しいよ。



「だからね? 秋君が茶道部に入部するって言ってるの! あんだすたん?」

「あぁ・・・浅田。その言葉に、嘘偽りは無いな!!?」

 今のでようやく理解したサトケンは椅子から立ち上がって、あたしに詰め寄ってきた


「う、うん・・・」

 ち、近いよ・・・ってか、怖いよ・・・どんだけ嬉しいんですか、サトケンさん・・・


 帰宅部で有名な秋君がいきなり部活動を始めるという事態に、担任だけじゃなく他の職員達も驚いていた

正直、こんなに注目されるのは嫌だよ。早く帰りたいなぁ。



「こ、これはきっと、先生の熱意が真鍋に届いたんだな! そうに違いない!! ・・・よし、入部を許可しよう!! っはっはっはっはっは!!」

 サトケンは心底嬉しそうに目を輝かせながら、せっせと入部の手続きを始めてくれた

えっと・・・入部手続きって、本人がいなくても出来るんだっけ・・・?


 まぁー・・・いっか。これで秋君が入部してくれたんだし、万々歳だ! 細かいことは気にしないでおこう!

「じゃあね、サトケン! 入部手続きは頼んだよ!」

「おう! 任せておけ!」

 その返事を聞いたあたしは軽い足取りで職員室を後にしたのだった・・・






 ど、どういうことなの? 秋君が・・・あの秋君が・・・


「・・・茶道部に入部、ですって? まさか、なんであの秋君が?」

 職員室に入ろうとしていたところで、偶然秋の話を耳にした坂部舞は驚愕しながら呟いた



 あの帰宅部の代名詞である秋君が自主的に入部するなんてありえないわ! それも茶道部なんて得体の知れない部活に!

「一体何故・・・? もしかして、天変地異の余興?」

 ・・・なわけ、ないか。


 だとすれば・・・っは!? ままままさかとは思うけど! 秋君は何か弱味を握られているんじゃ!?

なるほどね。それで仕方なく茶道部に入部させられたってことね・・・っく、なんて極悪非道なの! 茶道部!! ・・・というか、ウチの高校に茶道部なんてあったのね。初耳だわ


「茶道部め・・・『私の』秋君に、手出しはさせないわっ!!」

 私は手に持っていた書類の束を握り潰すと、職員室に背を向けた

・・・ちなみに、その書類の束は今から担任に渡そうとしていた大事な書類だったのだが。まぁいいか。


次回、坂部舞!








厚樹:何やっとんじゃあああああああああああああああ!!!!!

秋:ん?何が?


厚樹:イングランドでかすぎだっつの!!

秋:いや、別に大きかったら何言ってもいいんでしょ?


厚樹:っく・・・

秋:いやぁ、楽しいねー超時空しりとりー

又二郎:だなー


厚樹:っくっそおおおおおおおおおおお!!!!!

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