五十一話、秋の想い
かー・・・傘。
「あの状況には、そんな理由があったのですか・・・」
美咲が昔話を始めてからしばらく。ふと扉の向こうを見てみると、景色は真っ暗だった
もう夜か。美咲の話に聞き入りすぎて、時間のことをすっかり忘れていた
「そういえば、あの時はありがとうね。正直秋くん達が来てなかったら、笑い事じゃ済まなかっただろうし」
「結構危ない状況だったもんね」
「・・・でも、助けに来た動機が不純だったような?」
「なんとも言えません」
あの時。厚樹と二人で帰宅している最中に、さつきと出くわしたのは本当に偶然だった
僕達の前を颯爽と駆けて行く さつきを見た厚樹が『秋! 謎の美少女が、全速力でダッシュしてるぞ!? ナンパしよう!!』と、訳のわからない事を言い出したのも事実。
普通、全速力でダッシュする女の子をナンパしようなんて発想できないよね。うん、厚樹は世界一のバカ。
でも、そのバカのお陰で美咲が助かったのも事実なわけで・・・
「なんか、誇っていいのか。いけないのか・・・」
微妙なところだった。
「でも、あのことがあったから、こうして仲良くなれたんだって考えると厚樹は最高だね!」
「確かに。そう考えると厚樹は最高だね・・・バカ万歳?」
このやり取りを本人が聞いたら、めちゃくちゃ嬉しがるだろうなー。とか思いつつ、
「それで、そのボイコットした先輩達ってどうなったの?」
「んー・・・大体予想はつくと思うけど。退部しちゃったよ」
「そっか・・・」
結局、あの騒動はボイコットを起こした先輩達が退部届けを出す形で幕を閉じた
責任を感じた部長が自ら退部しようとしたり、それを部員達が止めたりと、その後いろいろな騒動があったらしいけど、それはまた別の話。
騒動の中心にいた美咲とさつきの二人は、残念ながらレギュラーメンバーからおろされてしまったのだが
多くの先輩達が退部してしまったバレー部には、美咲たちの実力が必要だったようで、レギュラー落ちも一時的なものだった
『しばらく反省したら、またレギュラーメンバーとして頑張りなさい』と顧問の先生は言ってくれたらしいが・・・
「さつきは、レギュラーに戻る気が無いみたいなんだよねー」
「・・・責任を感じてるから?」
「そういうことかな。自分は何にも悪くないのにね? まったく、不器用すぎるんだよさつきは」
「確かに、不器用すぎだよね」
さつきはなにも悪くない。それでも、自分なりにいろいろと考えた結果が『朝に弱いという嘘』だったのだろう
「なんか・・・勿体無いなぁ」
呟きながら、コート内で練習に励んでいるさつきを見た
美咲の話に出てきたさつきは、バレーをやっている先輩達のことを『かっこいい』と言っていた
そして、今バレーをやっているさつきの姿もかっこよかった。それでも・・・本当なら、その姿はもっとかっこいい筈なのに
勝手に責任を感じて、勝手に部活をサボるようになって、好きなはずのバレーを全力で楽しまなくなって、本当は参加したいはずの朝練にも顔を出さなくなって・・・
「ホントに、そのままでいいの? さつき?」
・・・小さく呟きながら、僕は。
本当に『かっこいい』さつきの姿を、見てみたいな。なんて、思っていた・・・
次回、茶道部再び!
秋:おい・・・お気に入り登録者が、二人も増えてる・・・
厚樹:なに!?二人もだと・・・?
又二郎:やべ、涙が出てきた・・・
秋:いや、それ汗だから。
又二郎:違うわ!!
厚樹:お気に入り登録者が誰もいなかった頃が懐かしいな・・・
秋:あの頃はいつまで続くか心配だったけど、今週も一応乗り切れそうだね・・・
又二郎:まぁ、努力の結晶だな!!
秋:それじゃ、お気に入り登録してくれた皆さんありがとう!
厚樹:これからも頑張って書くぞ!こいつが!!
又二郎:わかっておる!任せろ!!