四十八話、美咲の冗談は面白いなぁ
・・・もう、しりとりはやめない?
飽きたわ。
「女だらけのコートに、何の違和感もなく溶け込む真鍋秋・・・果たして彼は、本当に男なのか!!」
「っはっはっは。相変わらず美咲の冗談は面白いなぁ」
口では笑いながらも、ジト目で美咲を睨む
「っへっへー! そんなに褒めても、なんにも出ないけどね!」
うん、美咲には勝てないよ。わかってたけどね
あの後、すぐ練習に戻ってしまった姉だが。正直こんなところで置き去りにされた僕はどうすればいいのか。
と、悩んでいたところに暇を持て余していた美咲が来て、話し相手になってくれていた
「ところで、美咲は練習サボっててもいいのかな?」
さっきから気になっていた事を聞いてみる
「大丈夫大丈夫! 今日のノルマはとっくに終わってるし、実は今から帰るところだったんですよ」
「そ、そうなの?」
「だから安心するがいい秋くん! ここでサボってても、あたしは決して怒られない!」
その自信満々な言葉に、ほっとした。僕のせいで怒られるのはいい気分じゃないしね
これで心置きなく、話が出来るわけなんだけど・・・そこでふと、コート内のさつきに目が留まる
部活中もポニーテールなんだな・・・やっぱり、あれは目立つなぁ
「・・・あ」「―――っ」
そんなことを考えていると、ばっちり目が合う二人。しまったなぁ、あんまり凝視しすぎてたらしい
お互い、なんとなく視線を逸らしてしまったが。まぁこんな状況で見詰め合っても仕方ないしね。うん。
・・・ちょっと残念だったのは、心の奥にしまっておこう
「ふぇっふぇっふぇ・・・あ・き・くーん?」
「うわっ! な、なに!?」
気が付くと、僕の顔を覗き込んだ美咲がいやらしく笑っていた
な、なんだ一体!? まさか今の気まずいやり取りを見られていたのか!
「お暑いねー、部活中に見つめ合う二人! しかし、お互い恥ずかしくなって思わず視線を逸らしてしまう! ・・・くぅっー、ラブコメだねー!」
・・・なにを言っとるんだお前は。
「はいはい。違うから」
「えー つまんねーのー!」
つまんねーのーって、美咲さん・・・
「とにかく、この話は終わりってことで!」
「はいはい。了解ですよー」
と言うことで、話題を変えることに。
「ところでさつきってさぁー」
「さつきの話しかよ!!」
最近、異性とまともな会話が成立して無いような気がするけど。
まぁいいや、これ以上は何も言わないでおこう
「いいじゃんいいじゃん! それで? どうですか秋くん! 部活中のさつきを見た感想は!」
「か、感想って言われてもなぁ」
いいながら、再びコートに立つさつきを見る
・・・うん。やっぱり、コート内でもお美しい・・・いやいやいや! なにを馬鹿なことを!?
「か、かっこいいんと思います!」
とりあえず、一瞬過ぎった意見は伏せる
「うんうん。そうだねそうだねー! 流石、見る目があるよ秋くんは! あー、でも・・・」
「・・・? 美咲?」
満足げに笑った後、何故か表情が暗くなる美咲
あれ? 急にテンションが落ちたけど、どうしたんだろ・・・
「ホントはね? もっと、かっこよかった筈なんだよ。さつきのやつ」
「・・・ホントは?」
「・・・あ。」
聞き返した僕を見て、しまった。という顔をする美咲
もしかして、秘密ごとだったのかな?
「美咲? えっと・・・続きは?」
それでも、なんとなく続きが気になった僕は珍しく話を急かした
普段なら、気を遣って話題を変えたりするのに・・・なんでだろう。それでも気になる話題だった
「あ、あぁ。でも、これは・・・・・・」
やっぱり。なにか、言い難いことだったらしい。美咲がこんなに動揺することなんて滅多にないのに。
これ以上は、美咲の・・・いや、さつきの『ナニカ』に触れてしまう気がした。今ならまだ、話題を変えることができた。それでも・・・
「駄目、かな?」
「う。・・・ううん、ごめん。秋くんなら、大丈夫だよね! わかった、いきなりシリアスになっちゃうけど、話すよ!」
・・・それでも僕は。話を急かしてしまった。ごめん、美咲。
話すと決めた美咲は、いつもの元気な様子で話し始める。その話の内容は予想したとおり、さつきの話だった
「さつきってさ、朝に弱いの知ってるでしょ?」
「あ、あぁ・・・うん。確か、それで朝練にも来れないってヤツだよね」
その話は以前姉からも聞いていたし『D組サマーイベント』の時も、寝起きのさつきを見ているから知っていた
でも、なんでその話題が今出てきたんだろう。
「それね、全部嘘。演技だよ」
「えぇ! ま、まじですか美咲さん!?」
驚いた。今まで全く気付かなかった・・・でも、朝に弱いなんて嘘、どうして・・・
思ったことをそのまま聞くと、美咲は続きを話す
「えー いきなりですが、問題です! さつきはバレーが好きです! それに実力もあります!
ホントは寝起きもよく、毎日朝練に来ることができます! しかし、さつきは朝練には来ません! なぜでしょうか!」
い、いきなりだなぁ。でも、それを解けば さつきの抱えている『ナニカ』がわかるってことか。だったら真剣に考えてみよう
えっと。とりあえず、部活がめんどくさいって訳では無さそうだし・・・なにか、さつきの話題で、似たような会話をしたような・・・
「・・・あ、そういえば」
夏休みに入る少し前、朝食の時に姉と・・・確かあの時、姉が言ってたのって・・・
『ホント、勿体無いのよ! さつきってバレーうまいし、もうちょっとでも朝練に参加してくれれば、試合にも出させてあげられるのにー! いや、それだけじゃなくてレギュラー入りも確実・・・くっそー!!』
あの長い台詞に、こんな伏線があったとは!! 流石だよ、我が姉!!
あの時の台詞と、今美咲が言った言葉を踏まえて考えた。すると、
「お。これはもしかすると、わかったんじゃないかな?」
なんと答えらしい答えにたどり着いてしまった
だが、僕の言葉を軽く笑い飛ばす美咲
「えー! うそだぁー 絶対わかんないって、あれだけじゃ!」
「う・・・確かに。それでも、一応言っとくよ・・・『さつきは、試合に出たくない』・・・とか?」
「・・・嘘。あ、当たってる」
・・・まじですか。当たってましたか
自分でも驚いたが、なんとなく確信していたような気がして、表情には出さなかった
「でも、少し違うね。すっごく惜しいけど、正しくは『レギュラーメンバーにはなりたくない』。かな」
「なるほどね、そういうことか・・・」
どうやら、完璧な答えではなかったらしい
それでも、正解に近い答えを出せたのは、ちょっと嬉しかった
「っていうか、なんでわかったの? もしかして、さつきに聞いてた?」
心底驚いてますって様子の美咲に向かって、首を横に振った
「だったら、ホントにわかっちゃったんだ! ・・・ははっ、やっぱり秋くんはすごいねー! ・・・・・・なるほど。秋くんには敵わないって事かな・・・」
「・・・え? ごめん、最後のほうがよく聞こえなかったんだけど」
「秋くん。昔の話をしよう!」
「え、あ、うん」
最後のほう、聞こえなかったんだけど。
それでも、なんとなく。ここからが本番って気がして、それ以上追求するのはやめた
「昔って言ってもね、入学式のことなんだけど・・・」
「うん。えっと、ウチの高校の。だよね?」
僕の言葉に頷いた美咲は、そのまま話を始めた―――
特別編!! 西山厚樹と! 萩又二郎がおくる!! 『非モテ脱出会議』ー!!!
いぇーい!! ドンドンパフパフー!! わっしょいわっしょい、やっと出番が来たぜうぇーい!!!
「いやぁ、はじまりましたね! 又二郎さん!」
「そうですね、厚樹さん!」
「一体このコーナーはなんですか!? 又二郎さん!」
「ふっふっふ・・・コレはですね! 普段モテてモテて、モテすぎて仕方ない我々が! 世界の皆に、このモテ技術を披露してやろう! というコーナーですねー!!」
「っへ! この俺様のモテ技術を真似たいだと!? っはっはっは! できるもんならやってみろっつーの!」
あはははは(スタッフ笑い)
「・・・どっかの誰かさんが俺の出番を書かないせいで、こんなめんどくせぇ企画に・・・ブツブツ」
「オーイ!? 素が出てるよ!? 素が!!」
「なんのことですかねー!?」
あはははは(スタッフ笑い)
「つーか、あのスタッフ笑いが妙にむかつくんだよな・・・殴ってきていいか?」
あはははは(スタッフ笑い)
「やっぱてめーらなめてるわ!! 待ってろ! 今すぐ捻り潰してヤラァ!!」
「ちょ・・・っ! 待てって厚樹!? せっかくの出番だぞ! 暴れて終わるのは勿体無いだろう!?」
「くっそ、離せ又二郎!」
「いいや、離さないぞ! 乱闘オチなんて御免だからな! ・・・ってか、スタッフのみなさん! それ以上は笑わないでくださいよ!?」
ア――――――ッハッハッハッハッハ!!!! なッ、なんだッ、あのキモイヤツ!!
ヒィ―――ッ、ヒィ―――ッ、苦し―――ッ!!! 又二郎ってッ、ヒッ、ヒヒッ、苦し―――――ッ!!! (スタッフ達の笑い声)
「ブッ殺したる!!!! 絶対あいつ等殺す!! 行くぞ、厚樹!!」
「お? お前もその気になったか!! 足ひっぱんなよ、又二郎!!!」
「「ウルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」」
アッハッハッハッハ・・・ハッ!? ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!! (スタッフ達のガチな悲鳴)
「はーい、放送事故でーす。すみません、一旦とめまーす。 ・・・あ。 私! 出番の少ない、三谷さつきでーす! 皆ー、ばいばーい♪」
・・・ちなみに、次回さつき大活躍です。
次回、美咲の過去!
厚樹:うおぃ!?さつきちゃん!しりとりやめるってどういう事だよ!!
さつき:言葉のままよ、もう疲れたわ
厚樹:諦めんなよ!昔を思い出せよ!!
秋:昔・・・?
さつき:でもね、しりとり自体はやめないわ、私が言いたいのはただのしりとりをやめようって事。
又二郎:こらこらこら!勝手にあとがきに入ってくるな!!!
さつき:うるさいわね、今回だけよ。
又二郎:あ、はい。すんません。
厚樹:で、そのしりとりというのは・・・
さつき:超時空しりとり。
秋:な、それはまた子供騙しなしりとり・・・っ!!
さつき:このしりとりは、前言った人の物より、一回り大きいものしか言ってはいけないの。
厚樹:な、なんだと・・・っ!?
秋:・・・別に超時空も何もないじゃん。
さつき:そう、このしりとりは続けば続くだけ大きくなっていく・・・そして・・・
厚樹:・・・そして?
さつき:最後にたどりつくのは、神の領域・・・いえ。それ以上か・・・
厚樹:うおおおおおおおおおおおおお!燃えてきたぁああああああああああああああ!!!
秋:・・・馬鹿だろお前。
又二郎:・・・どうするよ、秋?ここでまともなのは俺達だけのようだ。
秋:そうだね、これは次回に話を引っ張るしか方法が無いんじゃ・・・
又二郎:そうだな、それじゃ・・・最終奥義!!
秋 又二郎:―――次回に続く!!