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四十三話、学校で探し物

ツインテール!

「財布、無いなぁ・・・」

「ねー、ないねー・・・」

 二人で床を見つめながら、教室の中をうろつきまわる

人手が増えたからあっさり見つかるのでは? と思われたあたしの財布は、まだ見つかっていなかった


「んじゃ、僕はあっちのほう探してみるよ」

 そういって、秋君が教室の後ろを指差す

そこは秋君がここに来る前、少し探してみた場所なんだけど。せっかく好意で言ってくれてるんだし、もう一度探してもらおうかな


「うん。それじゃ、あたしはあっちを探すから」

「はーい、りょーかいです!」

 まだ探していない教卓の方を指差すと、秋君は笑顔で頷いた

相変わらず、男の子とは思えないルックスだなぁ。まさに男の娘ってやつかなぁ



 そのまま、二手に分かれて財布を捜す


 がさがさ・・・

「・・・」

 がさがさ・・・・・・

「・・・・・・」

 がさがさがさ・・・・・・・・・



・・・ちょー!?

良く考えたら、なんなのこの状況!? いきなり秋君と二人っきりってオイイイイ!?

いやいやいやいや、確かに好きだった! 以前は! 以前はね!? 初めて見たときから「秋君可愛すぎだろハァハァ・・・」とは思っていたけれども!!

でも、あまりの鈍感さに正直諦めてた・・・・・・途端にコレだよ!! なんだよもぉ、最高だよ!!


「未来ー? こっちには無いっぽいけどさ、そっちはー?」

「ひぇぇっ! な、無いですっ、すみません!」

「え、な、何が!?」

 しまった。混乱しているときに話しかけられて更に動揺してしまった

落ち着け、あたし。素数を数えるんだ。


「い、いや。なんでもないよ秋君」

「そう? えっと、こっちの方は無いみたいだけど?」

「こっちにもないよー」

 これで教室の中は一通り探し終えたが、結局財布は見つからなかった

どうしよう。あの財布にはそこそこの金額が入ってるのに。


「だ、大丈夫だよ! きっと見つかるって! 僕も見つかるまで手伝うからさ!」

「ありがとう、秋君・・・」

 その優しさはめちゃくちゃ嬉しいんだけど、今は素直に喜べないよぅ

せっかく男女水入らずなのになぁ。神様もひどいことをしてくれるね。


「それじゃぁ、もう一回教室全体を見て回ろうか!」

「う、うん。わかった」


 その後、どれだけ探しても財布が見つかることもなく時間は過ぎていった・・・





「うがー! 見つからない!」

 時刻は午後12時ジャスト

未来の財布を捜し始めて二時間ほどたったが、未だに財布は出てこない


 薄々勘付いてはいたけど、これはもう教室の中には無いんだと思う

未来のほうを見ると、財布が見つからない焦りが表情に出ている


 それに、今までずっと床を探し回る作業を続けていたから疲れのほうも大分溜まっていた

僕に限っては、朝から何も食べて無いしね。とてもお昼ごはんが食べたいと。


「未来、どこで落としたのか心当たりはある?」

「その心当たりが、ここなんだよねー。残念ながら」

「そっか。それもそうだよね」

 まぁ、心当たりが他にあるんだったら、教室を探したりはしないもんね

というか、なにゆえ未来はこんなところにいたのだろうか? 今は夏休みだし、学校で財布を落とす機会なんて無いはずなんだけど。休憩もかねて、その辺の話を聞いてみるか


「そういえば未来? 財布を捜してるのはわかったけど、なんで学校に来てたの?」

「え? あ、そっか。そこはまだ話してなかったね」

「休憩もかねて、そこら辺の話を聞きたいんだけど。いいかな?」

「おぉー、いい案だね! いいともー!」

 休憩と聞いて、ぱっと笑顔を浮かべた未来は近くの席に座ると、次に隣の席の椅子を引いた

「・・・?」

 ふたつも椅子を引いて、どうしたんだろう?

・・・っは!? まさか!? その席に僕を招いているということか! いやいや落ち着け、まだそうと決まったわけでは! 特別仲が良い訳でもないこの僕をっ、隣の席に招く可能性は極めて低いはず!!


「秋君? どうしたの? ほらほら、はやく座ってよー」

「は、はい! わかりました!」

 まじかよ、予想的中か! やっぱりあれは『うっふん。椅子を引いてあげたわよ? こっちにいらっしゃい?』的なアピールだったのか!

・・・わかった。未来がそこまで心を開いてくれるのならば、僕も行動で答えるまで! いざ、『お隣の席』という親密な関係をぉ!!


 気合をいれ、未来に促された椅子に腰掛けた。その時

・・・ふにっ。と、木製の椅子の堅さとは似つかない、柔らかい感触が。


「えっ・・・秋君?」

「・・・ん?」

 な、なんだ? この感触は?

椅子の上に、棒状のナニカが乗っていたようだ


 一体なんだろう。と手で確認してみる

ふにふに。ふにふに。

「なんだ、これ? この生暖かく、やわらかい・・・まるで細身の女子高生の生足のような・・・」

「―――っ!!? あああああああ、秋君! 足! それあたしの足だよ!?」 

「足って・・・足? ああ、足ね。なるほど納得だ・・・っでぇええええええええええ!!!?」


 がたたんっ!!

未来の悲鳴にも似た声を聞いて、慌てて椅子から飛びのいた

振り返って確認してみると、なんと僕の座った椅子には細くてスラっとした二本の足が乗って・・・


「ってなんで椅子の上に足上げてるのさ!? おおおっ、お行儀が悪いですよ浅田さん!?」

「ずっと教室歩き回ってて、足が疲れてたの!! 椅子の上で伸ばしたかっただけなんだけど!?」

 そ、それで椅子をふたつも引いてたのか! なんて紛らわしい! っていうか、ごめんなさい! なんか足触りまくってごめんなさい!!

「て、ていうか! なんで人の足があるのに座ったの!? せせせっ、セクハラだよ真鍋さん!?」

「セクハラ!? 誤解だよ! 未来が隣の椅子を引いた後に『うっふん。椅子を引いてあげたわよ? こっちにいらっしゃい?』なんて言ったから、誤解したんじゃないか!!」

「言ってないよ!? そんなエロティックな台詞捏造しないでよ!?」

「捏造!? 馬鹿なっ、僕は確かにこの耳で・・・っ!!」


 聞いて、なかった。

その『うっふん。以下略。』という台詞は、100%、間違いなく、若さゆえが作り出した捏造だった


 つまり。僕が勝手に勘違いして、勝手に未来の足の上に座り、あろうことか、彼女の白くて細いその生足を触りまくった。と、いうことか・・・


「・・・セクハラだ!?」

「そ、そうだよーっ!? ひどいよ秋君ー!!」

 改めて思い返すと、僕はとんでもないことをしてしまったらしい

どうしよう、あんな事をするなんて。未来になんて謝ればいいか・・・


 そうだ! ここは素直に、僕が感じたままに、謝罪をすれば!

心の奥に感じた、謝罪の気持ち。そう、真剣な想いは、きっと相手に届くはずだ。さぁ、感じたままに、謝ろうではないか!


「・・・・・・や」

「・・・や?」


「とても柔らかかったです!」

「アホー!!!!!」


 ぴしゃーんっ!!

「ぐはぁっ!!」

 猫のような素早さで一気に間合いを詰めてきた未来の平手が、僕の頬を打った

「信じらんない! 秋君がこんなエロティックだったなんて!」

 そのまま地面に崩れ落ちた僕を罵倒する未来。エロティックて


「ご、ごめんなさい・・・」

「最初に言ってよ、もぉ!!」



 結局この後何度も謝って、なんとかお許しをもらえたのだが

このときの騒動で、なんとなく僕と未来の距離が随分と縮まったなー。なんて思った事は、墓まで持っていこう。うん。





「・・・茶道部?」

「そう。実はあたし、その茶道部の部員なのですよ」


 『真鍋秋セクハラ容疑』の一件を水に流した僕達は改めて隣同士の席に座り

ようやく本題の、未来が学校に来ていた理由。についての話を進めていた

・・・まだ、お互いの顔が赤いような気がしないでもないが、そこは触れないでおこう。


「へぇ、ウチの学校に茶道部なんてあったんだね」

 高校に入ってから部活には見向きもしなかったので

この学校にどれだけの部活動があるのかは、全く知らないが『少林サッカー部』なんてふざけた部活があるくらいだ。他にも色々な部活があるんだろう


「いやいや、知らなくて当然だよ? ウチの茶道部は部員二人に活動記録なしの、やる気の無い部活だから。教師も顧問以外に知ってる人はいないんじゃないかな?」

「そ、それは部活と言えるのですか・・・?」

「ひどいなぁ。ちゃんと顧問も居るし、部室もあるんだよ?」

「ウチの学校に、茶道の道を歩む教師がいたとは」

「いや、全く茶道の経験とかないんだけどね。その顧問・・・担任だし」

 担任。つまり僕達のクラスの担任である。なんというか、どこにでもいそうな普通の教師だ

確かに、あの担任が茶道経験があるとは思えないなぁ


「それじゃあ、その茶道部は普段一体なにを?」

「えっとー、普段は部室に集まってお菓子食べたり、ゲームしたり駄弁ったり・・・」

「茶道関係ないじゃん!!」

「だ、だって顧問が部室に来ないんだもん! あたし達部員も、お茶の立て方なんて知らないし!」

「えぇ!? って事は、茶道部の全員が、お茶の立て方を知らないって事ですか!」

 とても部活動とは思えない惨状に驚くと同時に、今も汗水流して頑張る運動部員達が物凄く不憫に思えてしまった

「あたしだって、ホントはお茶点てとかやってみたいよ! で、でも、部室は小さいし、お茶を点てる道具だって足りないし・・・かと言って、道具を買う予算も無いし・・・」


 言いながら、どんどん小さくなっていく未来

なるほど。本人にはやる気があるけど、活動するための環境が不揃いって事か


 確かに、部員二人で活動記録なし、更に顧問のやる気も無い。そんな部活に予算が出されるわけがない

そう考えると、未来以外の他の部員や顧問は一体なにをやっているんだろう。と気になった


「えっと、もう一人の部員って誰なの?」

 これだけ頑張っている未来の代わりに、僕がそいつに一言言ってやろうか。と意気込んで聞いてみる

「同じクラスの有紀だよ? 知ってるよね?」

「うっ!? ゆ、有紀かぁ」

 有紀といえば、厚樹のヤツが『ブリザード・ガール』という称号を与えるほどのツワモノだ

それに、柔道初段で大の格闘技好き・・・や、やっぱり、一言言ってやるのは今度にしよう。うん、それがいい。


「その有紀は、普段はなにを?」

「有紀はねー 普段は部室に持ち込んだゲーム機と、一日中にらめっこしてるよ」

「茶道しろよ!!」

「う、うわわっ! ごめんなさい!」

「あぁいや! 未来に言ったんじゃなくて!」

 思わず未来にツッコんでしまった。服部有紀・・・いや、ブリザード・ガール。お前は、なんて恐ろしいヤツなんだ

慌てて未来に頭を下げた後、気を取り直して次の質問へ移る


「えっと、それじゃあ顧問は?」

「顧問はねー たまに部室に顔を出すとねー あたしが買ったお菓子を、自分の通勤鞄に詰めて持ち去っていくよ」

「茶道しろよ!! てか、お菓子ぐらい自分で買えよ!! なんで教え子からパクってんだよ!!?」

「ご、ごめんなさい! お菓子は自分で買ってるんだけど、ごめんなさい!!」

「あぁいやいや! 未来に言ったんじゃなくて!」

 また未来にツッコんでしまった。茶道部の人間は、どうしてこうも僕の調子を狂わせるのか

再び頭を下げた後、気を取り直して次の質問へ移る


「いつもお菓子を買って部室で食べてるの?」

「そうだよ? 有紀と二人で買って、部室に持ち込んでるのだ!」

「それで、顧問は部活動もせずに、二人のお菓子を持ち去っていくと?」

「いや、持ち去っていくのはあたしの買ったやつだけなんだけどね? なんでだろ?」

「それは有紀にびびってるからだよ!? ちゃんと一言、文句言ってやれよ!!?」

「・・・」

「今のは未来に言ったんだよ!? なに『あたし関係ない』みたいな顔してるのさ!?」

「えぇ!? 今のあたし!? ごめんなさい!!」

 ここに来て、ようやく気付いた。この学校の茶道部の人間は、『全員』ツワモノらしい

これ以上彼女達を関わってはいけないと、僕の中の本能が告げている。だがしかし、未来の財布はまだ見つかってないので逃げ帰るわけにもいかない


 こうなれば、さっさと財布を見つけて、ファミレスにでも逃げ込もう。それがいい。この学校に長居は無用だ

ということで、無駄話は打ち切りにして早速本題へ戻る


「未来、財布を落としたのって、いつのこと?」

 今日の朝から探していたという事は、多分落としたのは今朝か昨日のことだろう

「財布をなくしたことに気付いたのが、今朝なの。だから多分昨日落としたんだと思う」

「昨日も部活をやってたんだ?」

「うん。それでね? あたし財布は普段、鞄に入れてるし。鞄を開いた場所は部室と、この教室だけだから・・・部室はもう探したんだけど」

「そっか・・・えっと、職員室には行った?」

 財布を落としたのが昨日のことなら、その後財布を見つけた誰かが職員室に届けている可能性もある

生徒が拾った場合、財布の中身が消えているかもしれないが。そこはまぁ、無いことを祈ろう


「職員室? そういえば、まだ行って無いかも」

「良かった! もしかしたら誰かが届けてくれたかもしれないし、聞きに行こう!」

「う、うん!」


 正直これで駄目なら、後は手当たりしだい探すしか方法はなくなるのだが

その場合、見つかる可能性は極めて低いので、これが最後の賭けといってもいいだろう


 どうにか、見つかってくれないかな・・・

そんなことを願いながら、未来と共に職員室へ向かっていった





 その道中のこと


「そういえば未来?」

「ん? どうしたの?」

 ふと気になったことがあったので、聞いてみることにした


「昨日は教室でなにやってたの?」

「あぁ、それはー・・・あ。」

 何か思い出したようで、彼女の足がピタリと止まる

そんな未来につられて、僕も足を止め彼女の表情を伺う


「そ、それはー・・・・・・」

 なんだか、顔が赤いような? 気のせいだろうか?

「それは?」


「も、黙秘権を使います!!」

「え? いや、黙秘権って・・・」

「黙秘権を使います!!」


・・・なんなんだ、一体?


次回、有紀!





又二郎:インフルエンザだぁぁぁぁぁぁ・・・この俺様が、インフルエンザって・・・

秋:うん、知ってる。馬鹿は風邪引かないの定義が崩れたんだね?

又二郎:ちげーよ!!?ううっ、頭痛い・・・悪いけど今回のあとがきはパスで・・・


厚樹:大変だな、まぁ学校さぼれるんだからいいんじゃないか?

又二郎:ふざけるな!小説内のからみやギャグ、インスピレーション諸々、普段の学校生活から取り入れているんだぞ!?

厚樹:知るか!俺に言うな!!


秋:まぁまぁ、んで明日の更新は危ういのか?

又二郎:・・・頑張ります。


厚樹:こっちは休み無しだからな?

又二郎:ひぇえええええええええええ!!!!

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