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四十二話、避難場所は学校?

議会、可決!

「あー、なんでこんなとこ来ちゃったんだろ・・・」

 日も昇りきっていない午前9時・・・

目の前には、見慣れた校門。普段通っている高校のものだ


 まだ夏休みの真っ盛りだというのに、一体何故こんなところに来てしまったのか。それは・・・


「あの馬鹿親父のせいだよ・・・っ!! ―――って、うおぉ。悪寒が」

 朝の出来事を思い出してか、思わず身震いしてしまった

いかんいかん。今朝の一件は、忘れなければならないのだ。あんな恐ろしい体験は思い出すだけでも鳥肌が・・・


「・・・さ、さて! とりあえず教室で二度寝でもしようかな! うん、それがいい!」

 無理矢理明るい気持ちに切り替えて、僕は校門をくぐった






「お邪魔しまんぐーす」

「・・・ふぇ?」

 がらがらがらーと教室のドアを開ける

誰もいないだろうと思っていた教室には、なんと浅田未来の姿があった


「え? 未来?」

「あ、秋君・・・?」


 お互い、予想外の出来事に目を見合わせたまま固まってしまう

・・・い、一体何故、こんな朝っぱらから教室に? 正直、夏休みに学校くるなんておかしいよね・・・って、いやいや。それは僕も同じなんだけど。


「・・・あ、ぁと・・・なんで?」

「その・・・」

 頭は混乱しているが、いつまでもこの気まずい沈黙を続けているわけにもいかないので、おそるおそる声をかけた


「え、えっと・・・おっはー」

 いやいや、『おっはー』て。どんだけ動揺してんだよ僕。

こんな古墳時代に流行っていた挨拶を、女子高生相手に言うなんて・・・これじゃ、未来もドン引きだよ・・・


「お、お? ・・・おっはー!」

 なんと『おっはー』が元気一杯で返ってきた!

だ、だが向こうも動揺しているらしい。言った後に「あぅ。」顔を真っ赤にして俯いてしまった

・・・さすが『D組の子猫』。恥らう姿が核兵器並みの威力を持っていらっしゃる!


「そ、その。未来はこんな朝から、教室でなにやってたの?」

「あたしは、探し物をしてて・・・」

「あぁ、探し物ね・・・」

 ここにきてようやく、まともな会話が始まったことにほっと胸を撫で下ろす


「あたしは探し物だけど、秋君は? こんな朝から教室に来るなんて思わなかったからびっくりしちゃったよ」

「あぁ。僕がここにいる理由は・・・―――っは!?」

 『今朝の出来事』を思い出した途端、全身に鳥肌が立った

・・・しまった! つい、あの恐ろしい出来事を思い出してしまったではないか・・・!



「え! 何、どうしたの!? 急に顔色が悪くなったよ!?」

 そう言いながら、未来が僕の顔を覗き込むように接近してきた

その距離は、ポッキーゲームを彷彿とさせた!! って、近すぎるわ!!

「って、うぉおおおああ!!!!!??」

「―――ええっ!? こ、今度は何!?」

 こんな可愛い顔が目の前に来たら驚くって! やばいって! 絶対僕の顔真っ赤だ! トマトの如く!


「秋君がこんなに動揺するなんて・・・一体、秋君になにがあったのかな!?」

「それはっ・・・―――っはぁ!?」

 やべぇえええええええええええ!! また思い出してしまった! 悪寒がぁああああああ!!!!

あまりのショックに、自信の身体を抱きしめて悶え苦しむ


「秋君!? あああっ、また顔が真っ青に!!?」

「なんだって・・・っ」

 またか! 今度は青か! 赤青赤青って・・・それはつまり・・・


「誰が横断歩道の信号だよ!!」

「い、言ってないよー!!?」


 ―――10分後・・・ 



「えっと・・・落ち着いた?」

 心配そうな表情で、僕の顔を覗き込もうとした未来からさりげなく顔をそらす

これ以上は駄目だ。これ以上接近されたら、僕の中の野生本能が解き放たれてしまいかねん


「だ、大丈夫だから・・・もう平気」

「ホントに?」

「ほ、ホントだって! もう落ち着いたから・・・アンダスタン?」

「おーいえす、あんだすたん!」

 とりあえず僕が落ち着いたとわかった未来は、元いた位置に戻った

・・・残念なような、良かったような。


「ええっと、それで? 秋君がここに来た理由の話は?」

「あ、そっか。その話だったね・・・うん」

 仕方ない。ここまで来たら素直に話してしまおうじゃないか

いつまでもウジウジしてるわけにはいかないし


 僕は覚悟を決め、今朝の出来事を話すことにした

「未来さんや、今からワシが語ることはのぅ。半端な覚悟で聞いてちゃ怪我しますぞ?」

「・・・? うん?」

「いや、ごめん。気にしないで」

 最終確認のつもりで言ったんだけどね、理解できなかったらしい・・・では・・・






 それは、いつもと変わらない筈の朝だった

朝から気だるい熱気が全身を包み、寝起きの額には汗がびっしり


 寝起きから汗をかいているのは、あまり気持ちのいいものではない

起きたついでに、顔でも洗おうかな。と思った僕は洗面所に向かうため自室の扉を開けた


「う・・・何この臭い」

 扉から出た途端、鼻の奥を刺激する異臭に眉をしかめた。階段の方から、ものすごい異臭がただよっていたのだ

・・・なんだ、この匂いは!? この朝の眠気を、一瞬にして吹き飛ばすほどの悪臭!?


 鼻をつまみながら、おそるおそる階段を下りて、リビングに顔を出すと・・・

「ちょ、母上!そして姉!?」

 ・・・なんと、母上と姉が顔を真っ青にして倒れていた

慌てて二人に駆け寄り、とりあえず姉の身体を揺さぶってみる

「おい! しっかり!?」

 「ぅ・・・」と、小さくうめいた後、姉はゆっくりと瞼を上げた


「よ、よかった! 姉、一体これはなにが・・・え?」

 僕の顔を見た姉は弱弱しく腕を上げ、その指先をダイニングの方・・・おそらくは、その奥のキッチンだろう・・・に向けた


「あそこに・・・核が・・・にげ・・・う゛っ」

「核!? 我が家のキッチンには核があるの!?」

 ・・・返事は無かった。どうやら、完全にグロッキー。

僕は姉に向かって念仏を唱えることも無く、急いで洗面所に駆け込んだ


 この家に居ては、何かがヤバイ気がする! ここはさっさと家を飛び出さなければ!

顔を洗って歯磨きを高速で済ませた僕は、最後に自室においてあるはずの携帯を確保するため、リビングに戻った



 このとき、携帯を諦めて素直に外へ出ていれば・・・あの恐怖を体験せずに済んだのかもしれない・・・

リビングには、馬鹿でかい大鍋を持った、馬鹿でかい大男・・・父上がいた。ヤツはリビングに駆け込んできた僕を見つけると、ニヤリと笑う


「秋じゃねーか! おっはー!! はっはっはっは!」

「お、おはよう、父上・・・つーかその挨拶は無いだろ」

 しかも自分で言って、自分で大爆笑してるし

相変わらず父上は馬鹿だな。と思いながら、僕は父上の持つ大鍋に目をやる


 大鍋の中でうごめく、どろどろとした深緑の物体・・・一瞬で理解したよ。アレが・・・『核』だ・・・


「その、持ってるブツはなんなのさ?」

「これか! いやぁ、せっかく帰って来たことだしな、久しぶりに俺が朝飯を作ったんだ!」

 ・・・なんて迷惑な!?

「それが・・・そのゲル状の物体が、朝飯だと・・・!?」

「鍋に入ってるんだ、当たり前だろう? ホラ、コレを食った二人が、あまりの美味さに悶絶して倒れたぞ!」

「毒を盛られたからだよ! それ美味しさで悶絶したんじゃないよ! その二人毒死してんだよ!!」


「ってことで、味は保障つきだ!」

「命の保障がついてねーよ!?」

「らんらんるー♪」

 僕の言葉を全く聞かずに、満面の笑みで近づいてくる父上

・・・に、逃げなければっ・・・なんだと!? あまりの恐怖に、足が動かない!?



「ちょっ、ストップストップ! ・・・あぁ、そうだ! 父上は大事なことを忘れている!!」

「何だ? 大事なことだって?」

 僕の一言に、なんとか父上の進行が止まった

・・・しかし、既にヤツは目の前。逃げることは出来ない・・・だったら、戦うまで!


「父上はその料理、味見してないだろ?」

「あー? あぁ、確かにな」

 そうだろうと思ったよ!? てか味見するまでも無く、ソレが不味いことはわかるはずだが!?

心の中でツッコんでから、わざとらしく肩をすくめる


「やれやれ、これだから素人は・・・一流のシェフたるもの、人様に出す料理の味見くらいするものでしょ?」

「なるほど・・・それもそうか! 流石は秋だな! っはっはっはっはっは!」

 大きく高笑いしながら、父上は大鍋の中身を口に入れた


「っはっはっはっは! この味噌の風味と、俺特性の出汁のなんたる美味なこと! これぞまさに! 味噌汁の神っ・・・―――オロロロロロロッ!!!!!!!」

 笑顔でリバースしやがった!!?

「ぐおっ・・・これは、核かぁ!?」

「いや、自分で作った朝飯だろ!」

「うっ・・・ごはぁ!!」


 ばたん!!

と、その場に倒れる父上。持っていた大鍋の中身も、床にぶちまけられた

・・・どうやら、僕は勝ったらしい・・・


「・・・とりあえず、逃げよう」

 急いで自室の携帯を確保すると、そのまま家を飛び出した


 しかし、その後向かった厚樹の家は留守中で・・・いや、多分厚樹はいたんだろうけど爆睡してて出てこなかったし・・・

一人でファミレスにいるのもなぁ。と考えながら、たどり着いたのがこの教室。ということだった・・・





「と、言う訳なんだよ・・・はぁー」

 ようやく今朝の出来事を話し終えた僕は、最後に大きくため息をついた

「それは、うん。大変だったね・・・」

 引きつった笑顔を浮かべ僕の肩にぽん。と、手を置く未来

・・・ありがとう。ここに来てようやく、自分が頑張ったんだと実感したよ


「そういえば」

「ん?」

 ふと思い出したんだけど、未来の探しものってなんなんだろ?

「えっと、未来の探しものってなんなのかなーってさ」

「あたしの? あぁ・・・えっと、財布かな」

「・・・え、財布? それはちょっと不味いですな」

 想像していたものより、もっと貴重なものだった


「はい! な、なのであたしは物凄く困ってます!」

 なるほどなるほど。財布を落として困らないやつは、よほどのブルジョワだもんね

「はい、困ってるんですね」

「そうです! そして、話を聞くところによると、秋君は今現在ものすっごおおーく暇です!」

 それはまぁ、実際二度寝する予定しかなかったんだし・・・ということは

「手伝えと?」


「その通りです! あんだすたん?」

「まぁ、ここで会ったのも何かの縁だろうし・・・わかった。オーイエス、アンダスタン!!」

「あ、ありがとう秋君!」

 僕の返事を聞いて、ぱっと笑顔を浮かべる未来

・・・か、かわいいじゃないか・・・! これが役得というヤツか!?



 こうして、僕と未来は教室で財布探しをすることになったとさ・・・


次回、探し物!






秋:眠い・・・なんでこんな時間に更新するんだよ・・・

又二郎:だって、また勝手に目覚まし時計が・・・

厚樹:・・・おぃ。


秋:あ、厚樹起きてたの?おはよ

又二郎:うむ、早起きとは感心じゃ。

厚樹:何が『感心じゃ』だ!!昨日俺あとがきに登場しなかったぞ!?


秋:だって寝てたじゃん

厚樹:う・・・


又二郎:起こしたら怒るだろお前?

厚樹:うぉぅ・・・


厚樹:と、とにかく、今度からはちゃんと起こせよな!!!!!

秋 又二郎:うーぃっす。

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