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三十九話、塚原利樹の戦い!

リンゴジャム!

塚原利樹は旅館の部屋で荷物の整理をしているところだった


「む・・・これは・・・っ!」


僕が鞄の中から取り出したのは、坂部舞という名前の書かれた夏休みの課題の問題集である

これは夏休みの始まった翌日に真鍋君の机の上で発見してそのまま持ち帰り、部活の時間もほとんど使い、答え合わせまで全てやり終えたテキストであったのだが、

イベントを取り仕切るので忙しく、たった今発見するまでその存在を忘れていたのだ



「しまった! 坂部君に渡す予定があったのを、すっかり忘れていた!!」

坂部君と仲直りが出来るチャンスに胸を躍らせつつ、僕は部屋を飛び出した



「・・・んぁ? どうかしたのかあいつ?」

利樹と同じ部屋で荷物の整理をしていた又二郎が顔を上げたが「まぁいいか」とすぐに荷物の整理を再開した






旅館の廊下にて


どこにいるんだ坂部君! 君の部屋が何号室なのか、把握していなかったのは失敗だった!!


僕は課題を手に、旅館の廊下を走る

この広い旅館の中から、たった一人の部屋を探し出すのは容易ではない

焦りから、自分の頬を冷や汗がつたう



ちなみに坂部舞は、ただいま屋上で女将さんと恋の悩みについて語り合っている(三十八話参照)最中だが、そんな事知る由も無かった



「ここかぁ!!!」


ばんっ!


適当な部屋のドアを蹴り破ると、そこには旅館の浴衣姿から私服に着替え直そうとしていた女子達の姿があった

当然彼女たちは下着姿である


「ちょ! 塚原君何やってんの!!?」

「最低! 死ねクソ眼鏡!!!」


彼女達が顔を真っ赤にして叫ぶのだが、塚原利樹は動じなかった!

彼にとって坂部舞だけが女性として認識できる異性であり、このように下着姿の女子を目の前にしても、なんとも思わないのである!


「む、すまん、部屋を間違えた」

僕は『あ、ごめん。人違いです』的な態度で頭を下げてから、蹴り破ったドアを直し再び廊下に戻った



「待ちなさいよ! 覗き野郎!!」

「鑑賞料いただくわよ!!!!」

廊下を走る僕を、鬼の形相で追いかけてくる女子二人

僕の全力疾走についてこれるとは、この二人・・・デキル!


「・・・ん? あれは?」


「見つけたぞ塚原ぁ!!」

「昨日の恨みじゃぁ!!!」

前方から、何故かいきなりブチギレ状態の男子生徒二名が現れた

ちなみにこの二人は昨晩、利樹によって気絶させられた男子生徒のうちの二人である。


女子二人、男子二人に挟まれてしまい、仕方なく足を止めた

「っく、なんなんだ君達は! そこをどくんだ!!!」

このままでは、坂部君に課題を渡す事が出来ないっ!!!!

塚原利樹の顎から、冷や汗が落ちた


ちなみに坂部舞は真鍋秋を卓球に誘うために

秋と厚樹の部屋に飛び込んでいる最中なのだが、彼が知ることは無かった。






がすっ!!


「・・・つ、強い」


どかっ!!!


「俺たちじゃ、止められねぇ・・・」

男子生徒二人は、僕の敵ではなかった


「よし! 坂部君を探すぞ! ・・・っ!?」

改めて進行しようとする僕の目の前に大人数の男子を引き連れた、先程の女子生徒二人の姿が見えた


「塚原ぁ! 昨日の礼はさせてもらうぞ!!」

「着替えを覗いた罪、償ってもらうわ!!」

「行くぞ! D組の団結力を見せてやれぇ!!!!!」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」


怒り狂った男子軍団が、僕の方へ突進してくる

ちなみに、この男子軍団は、昨晩(以下略。



あの人数相手では、僕も無傷というわけにはいかないだろう

そうなれば、この手にある、坂部君の課題までポロポロになりかねない・・・


「せっかく、仲直りできると思ったのだが・・・残念だ」

僕は廊下の窓を開けると、そこから坂部君の課題を放り投げた

この下は、旅館の中庭。あそこに落としておけば、きっと誰かが見つけて、彼女の届けてくれるさ・・・


「・・・ふぅ」


中庭の人目につきやすい位置に、彼女の課題は落下した

それを見届けた僕は、ゆっくりと拳を構える


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!! 3倍界○拳んんんんんんんんんんんんんん!!!!」


この後、すさまじい戦闘が行われたという・・・






旅館の中庭にて


「んーっ! いい運動したなぁー! 秋君と卓球、あと温泉! 幸せだったなぁ・・・」


秋と厚樹の男子二人を相手に卓球をした後、温泉でひと汗流した坂部舞は、中庭をのんびりと歩いていた

温泉といっても混浴ではなく、ちゃんと男女別れて入浴したのだが本人はそれで満足だったらしい


「あれ? これって」

綺麗な緑が彩る中庭には、ものすごく場違いなソレを手に取り首をかしげる

「嘘、なんで私の、夏休みの課題がこんなところに・・・?」

彼女が拾ったのは塚原利樹が窓から投げた、彼女自身の問題集。


こんなところで、自分の課題を拾うとは夢にも思わなかった私は困惑した

「・・・なぜ?」

その問いに答えてくれる人はいないので、自分の都合のいいように解釈することにした



「私の課題を持っていたのは、秋君の筈・・・そして秋君は、私が中庭にいることを知っている・・・ま、まさか!!?」

実は温泉から出た後『ちょっと中庭で涼んでくるね』と別れ際、秋君と厚樹に言ってあったのだ


「私に直接手渡すのが恥ずかしくて、こんな回りくどいことを秋君が・・・!?」


ぎゃー! なに調子のいいこと言ってるのよ私!?

でも、それ以外にこんな場所に私の課題が落ちている理由なんて無いわ!

もぉ、秋君も秋君だよ! なんで遠慮なんてするかなぁ、私も少しは緊張するけど、全然構わないのに・・・!


はっ!? まさか、秋君は私に惚れてる!?

「なるほど・・・それなら、恥ずかしがっていた理由にもなるわ・・・うへへ・・・秋君が私に、ねぇ・・・うへ」


勝手に盛大な勘違いをしてしまった彼女は、一人怪しく笑いながら、中庭を歩いていった・・・






旅館の屋上にて


「先は、長そうですね・・・」


全てを把握しているこの旅館の女将は、大きくため息をつき、青春を駆け抜ける皆の幸せを願ったのであった・・・


次回、そろそろ帰らないといけない!!






秋:・・・

厚樹:・・・

又二郎:・・・なんだこれ、目から汗が流れてくる。


秋:あ、それ涙だよ。

又二郎:なんだと!?これが涙!!?嘘だろ!?

厚樹:・・・なめてみろよ


又二郎:しょっぱいです隊長!

厚樹:・・・いやぁ、また感想が増えたんだからそりゃ涙も出るわな。

秋:感動だねぇー・・・


又二郎:感想には学校から帰って来た時にしっかり返事をしておきます!!

秋:うっす!

厚樹:感想を書いてくれたお方に感謝します!


又二郎:これからも頑張りますぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!

秋 厚樹:さらば友よ!!

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