三十六話、人造人間又二郎!
スペシャルスーパーウルトラミラクルタイム!
僕達は朝食を食べ終えた後、旅館の地下室に続く大きな階段の前で女将さんを待っているところだ
ここに居るのは僕と厚樹、クラス長と利樹に、浅田未来と服部有紀。
クラスメイトの怪我の様子を見に来たクラス長と、それに付いて来ただけの利樹はわかるけど
未来と有紀がいるのは予想外だったので、隣にいる未来にたずねてみる。
「二人とも、又二郎のお見舞い?」
「えっ?」
有紀と話していた未来は、急に話しかけた僕に少し驚く
「あぁ、ごめん。少し気になっただけだから」
「そっか、ちょっと驚いちゃった。あのね、あたし達は・・・えーっと、ね・・・」
「・・・?」
言いかけてから有紀の顔を覗き込む
有紀はそんな彼女を不思議そうに見つめてから「あぁ。」と、わかったように手を打つ
「別にいいよ? 隠すつもりも無いし」
「そうなんだ? えっとね、実は昨日あたし達の部屋に又二郎君が忍び込もうとしてたんだけど、それを有紀が木刀で襲撃と言った所存でありまして・・・」
「え、そうなの? 有紀が?」
てっきり塚原にやられたんだと思っていたが、意外なところに真犯人がいたらしい
まさかの事実に驚きつつ、
・・・有紀って怖いんだな。という教訓を得た
ちらりと有紀の顔を見る
視線に気付いた有紀は、不機嫌そうに眉をしかめて、
「なにか?」
「・・・イエ。ナンデモ、ナイデス」
「あ、あははー・・・。そういえば昨日はずっと男子が騒いでたけど、何やってたの?」
僕と有紀のやりとりを見て苦笑してから、未来が思い出したように聞いてくる
「昨日? あぁ・・・き、昨日はですね・・・」
女の子といちゃいちゃしたかった。という下心丸出しの理由で殴り合いだの殺し合いだのやっていた。とは、とても女子には言えない!
「? どうしたの秋君?」
言いよどむ僕の顔を、前髪で隠れていない右目が覗き込んでくる
ど、どうする! どうすんのよ僕! ライ○カードのCMみたいに、選択肢の書いてあるカードがあれば!!
「むー。まさか言えないような理由があったり・・・」
覗き込んでいる彼女の表情が、どんどん怪訝さを帯びてくる
これは、正直に話すしか・・・と、観念したとき、タイミングよく救いの手が降りて来た
「あら、皆さんお揃いでお見舞いですか?」
絶妙のタイミングで現れたのは、この旅館の女将さんだった
女将さんは地下室に続く階段から上がってくると、僕達に向かって一礼する
僕達も揃って頭を下げた
「あの、又二郎の具合はどうですか?」
僕が女将さんに聞くと、背後から「後で絶対聞き出すからね!」と聞こえたが空耳だろう。うん。
「はい、全然大丈夫ですよ。ほら、もう一人で歩けるくらい元気になってます」
そう言って女将さんが階段を指差す
ガ・・・ガガ・・・
ガガガ・・・ギギ・・・
「ソ・・・ソノトオリ、モウ、ゲンキ、ゲンキ・・・」
階段の下に、やたらと重そうな身体を引きずって歩く又二郎の姿が見えた
暗くて良く見えないが、ヤツの動きが一世代前のロボットみたいだ。どうしてだろう。
ギギギ・・・ウィーン・・・
「なんだよ、この機械音は」
隣の厚樹が鬱陶しそうに眉をしかめた
「なんだろうね? だんだん大きくなってるけど」
その機械音は、又二郎が階段を上るにつれて大きくなる
「モウ、オレハ・・・ゲンキ・・・」
ギギ・・・
ギギギ・・・
「うわ・・・なによ、あれ」
「あれが又二郎なのか?」
階段の中間に差し掛かり、又二郎の姿が見えるようになると、クラス長と利樹が揃って驚愕を顔に浮かべた
「すっご! でも怖っ!」
目をまん丸にして驚く未来とは対照的に「ほぉこれは・・・」と感心したように有紀は笑った
階段を上りきった又二郎は僕達に向かって、
プシュー。と鼻から煙を出しながらガッツポーズしてみせた
「ドウダ、オマエラ! オレハ、モウ、ゲン―――」
「どこが元気だ! 気色悪いわ!!」
がしゃぁんっ!!
「―――ウグゥッ!!」
最後まで言い終わる前に、厚樹のドロップキックが綺麗に決まった
又二郎は「ゴェッグホァゲハォ!」と、痛そうな悲鳴をあげ、階段を転がり落ちて行った
厚樹は階段の下で動かなくなった又二郎に目もくれず、今度は女将さんに詰め寄る
「おかしいだろあれ!? なんか肌の色が銀色になってるし!! 喋り方もDSの友達コレ○ションの住民みたいになってるじゃねーか!!」
「あら、そうですか? ウチは別におかしいとは思わないんですけど・・・」
「おかしすぎるわ!!」
しかし女将さんは「オホホ」と笑うだけで何も答えない
ウィーンー・・・・ッ
「ウッ、ウウ。ヤリヤガッタナ・・・コノヤロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
動かなくなったと思っていた又二郎は、すぐに立ち上がり物凄い勢いで階段を駆け上がってきた
「おい! やばいぞ厚樹! なんか、めちゃくちゃ怒ってるよ!?」
「馬鹿な! アレを食らっておいて、まだ動けるだと!?」
「モビ○スーツを装備しておいたのでー」
「変なモノつけないでくださいよ!?」
にこりと頬笑む女将さんに突っ込む
そんなことをしているうちに、怒り狂った又二郎が目前に迫っていた
「クラエッ、怒リノ鉄拳!!!!!」
「落ちつくんだ、又二郎! ・・・くぅっ!!」
僕達の前に素早く飛び出てきた利樹が思い切り振りあげられた又二郎の腕を掴んだ
ギシ! ・・・バキバキバキッ!
一瞬にして、利樹の足元に亀裂が走る
・・・っておいおいどんだけ力あるんだよ又二郎!
「ナイス塚原! そのまま押さえてろ、俺がもっかい突き落してやる!」
もっかいって、またドロップキックか? 又二郎死ぬぞ?
「塚原君かっこいいー!」
「流石少林サッカー部。素早い動きと、鍛え上げた筋肉と戦闘本能・・・やるわね」
未来と有紀から歓声が沸く
「ふ、なんのこれしき!」
調子に乗った利樹がもう一度力を入れ直して、又二郎の腕を押し上げにかかる
・・・と、その時、
「頑張って! 塚原君!」
「さ、坂部君!? でへへ・・・ってうおおおおおぉ!!??」
ドカァッ!!
クラス長から歓声が上がった瞬間、
気が緩んだ利樹は一瞬の隙をつかれて又二郎に吹き飛ばされた
「雑魚ガ・・・! 厚樹ィ・・・ウルァアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「ちょっ、ちょ! 待てって! ストップ又二郎!」
標的を利樹から厚樹に戻すと、厚樹は怖気づいて後ずさる
あの利樹の巨体を吹き飛ばしたのだ。びびるのも仕方ない。
「死ネエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!!!」
「お待ち!」
目に見えぬ速さで、厚樹と又二郎の間に現れたのは、女将さん
「ナンダッ、オ前ハ!?」
「大事なお客さまに手出しは許さません・・・」
チャッ・・・
そう言って女将は日本刀を取り出した・・・っておいおい。
「チョ、銃刀法違反・・・ッ! ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
最後は又二郎を改造した張本人が手を下し、この騒ぎは収まったとさ
てか又二郎もお客様じゃん。とか思ったけどまぁいいや・・・
次回、イベント再開!
又二郎:燃え尽きたぜ・・・真っ白にな。
秋:・・・ねぇ、あいつどうしたの?
厚樹:さぁ?テストの結果が悪かったんじゃねーの?
又二郎:まだテスト帰ってきてねーよ!!今日帰ってくるんだよ!!
秋:へぇ、自信はあるの?
又二郎:う・・・
厚樹:楽しみだよなぁー200点越えてんのかなぁー?
又二郎:こっ・・・越えてるっつのこんちきしょおおおおおおおおおおおおお!!!
秋:どうだか。
又二郎:なめんなよ!てめ俺にぴったりな四字熟語は全知全能だぞ!!?
厚樹:・・・嘘つけ。
又二郎:本当だああああああああああああああああああ!!!!