二十八話、海!砂浜!ナンパ!?
わんわん、あ、危ね。
「・・・気に入らない」
ざざーん、ざざーん・・・
波の音と若き男女の楽しげな声。
誰もが海水浴を満喫する中、僕はたった一人で砂浜に佇んでいた
「・・・砂のお城でも作ろうかな」
あー・・・まぁ、あれだ。海って、暇だなぁー・・・
そんな傷心気味の秋を熱い眼差しで眺めている人物が一人。
『秋君LOVE』でお馴染みのクラス長、坂部舞である。
彼女は秋から少し離れた砂浜に座り、鼻息荒く秋を見つめていた
「あ、秋君の、海パン姿っ・・・! はぁはぁ・・・おっと、カメラカメラ・・・」
肩に下げた鞄から可愛らしいデジタルカメラを取り出す
・・・新しいの買っておいてよかった。
「早速ベストショットを頂けそうね。はい、チーズ・・・っと」
パシャリパシャリと何度かシャッターを切った後、満足げに微笑む
「あぁもう! 海って最高ね! 今朝のバスでは秋君といっぱい話せたし、このまま行けば、二人の関係は急接近しちゃったり・・・なんてねー! あーっはっはっはっは!!」
一人高笑いする少女を他の一般客達がドン引きしながら注目していたが
当の本人は全く気にしていない様子。
「はっはっはー! っていやいや。いつまでも眺めているだけじゃ駄目よ、私! 考える前に行動、これからは積極的に・・・あら? 誰かしら、あの人達・・・まさかっ!?」
彼女が我に返った時、秋の背後に忍び寄る三人組の姿を捕らえた―――
「出来たぁー! って、一人でなにやってんだよ僕は・・・はぁあ」
砂で大阪城とベルサイユ宮殿を作り終えたところで、ため息をつく
それにしても・・・我ながら凄いものを作ってしまった。
一人関心するも、誰も見てくれる人がいないので再びセンチメンタルに陥る。
「ちくせう。何故こんな顔に生まれてしまったのか・・・」
海で遊ぶクラスメイトを眺めながら、再びため息
多分僕の周りには、ありったけの負のオーラが漂っていることだろう。
「ねぇねぇ、君一人?」
傷心気味だったところに、後ろから声をかけられた
「え? 何か用ですか?」
驚いて振り返ると、そこには三人組の男達が肩を並べていた
・・・知らない人だなぁ。と首をかしげると、声をかけてきた真ん中の男が一歩前に出る
「俺達、今暇なんだけどさぁー よかったら一緒にお茶でも・・・って、オイオイオイィ!!?」
「・・・え? なに?」
笑顔で話しかけてきた男が僕の身体を見るなり驚愕する
「よく見たら水着着て無いじゃん!? 胸くらい隠しなよ!? 見えてるよ!!?」
「見えてるって・・・はぁ!?」
思いもよらぬ指摘にこっちまで驚いてしまった
なにを馬鹿なことを言っているのだろうか、こいつは・・・
「『はぁ!?』じゃなくってさぁ! ・・・おいおい、これが噂の露出魔ってやつか!?」
「今日はツイてるなぁ、ジョニー? こりゃこの子、俺達を誘ってるって事ダゼ?」
「誘ってなんか無いんですけど・・・」
一応否定してみるが、勝手に盛り上がった三人組は聞く耳を持たなかった
「まじかよ、ボブ!? この子は誘ってるのか!?」
「当たり前ダロ? それが露出魔ってヤツなんだからヨ」
「たまたま声をかけた子が、とんでもない大物だったなぁマイケル?」
どうでもいいが、右から順番にジョニー、ボブ、マイケルという名前らしい
彼らは好き放題盛り上がりながら好奇の眼差しで僕をなめるように視線をさまよわせた
・・・気色が悪い、気色悪い。
「盛り上がってるとこ悪いけど、僕男なんで。それじゃ・・・」
さっさと退散しようとするも、彼等は僕の行く手を遮る様に回り込んでくる
「・・・なんですか?」
「ちょっとちょっと! なんで逃げるんだよ!」
「いや、だから・・・僕は男で・・・」
「はははっ! 確かに胸はちっちゃいけど、こんな可愛い子が男な訳―――」
その時だった。
―――ヒュンッ!
「・・・へ?」
「天―――っ!!」
突然、空気を切り裂くような風が流れた。
と思ったら、どこからか聞き覚えのある声がして
「―――罰っっっ!!!!!!」
ゴシャァッ!!
「あんぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・っ」
耳障りな音と共に、ジョニーの憎たらしい笑顔が歪み、
そのまま彼の身体は吹っ飛んでいった
「大丈夫、秋君!?」
しゅたっ、と華麗に着地した女の子はクラス長だった
「え? ・・・あぁ、うん?」
呆然としたまま頷く
あー・・・つまりこういうことだ。
しつこく僕に付きまとっていたジョニーの後頭部にクラス長のヒーローキックが炸裂した。ただそれだけ。
ちなみにジョニーは何度も砂浜に身体を打ちつけ、かなりの距離を飛ばされていた
・・・あれはもう、生きてはいないだろう。南無さん。
「見事な蹴りだったね・・・」
「い、いやだもう! 忘れてよ!」
素直な感想を言うと、クラス長は照れたような怒ったような表情で赤くなる
こんな顔をする女の子が今の蹴りをやってのけたとは思えないなぁ。
「お、おい!? 大丈夫かジョニー!?」
「なんダヨ、このアマ!?」
そんなことを考えていると、マイケルとボブが我に返ったように騒ぎ始めた
そんな二人に向かってクラス長が指を突きつけた
「よくも私の秋君・・・じゃなかった! 私のクラスメイトに手を出してくれたわね!」
「く、クラスメイト、だと!?」
「私は1年D組のクラス長、坂部舞! クラスの皆を守るのが、私の務めよ!」
「おぉー・・・」
なんだか、めちゃくちゃ輝いてるな。今日のクラス長・・・
「てめぇ、やりやがったな・・・」
頭を押さえながら蹴り飛ばされたはずのジョニーが戻ってきた
・・・まだ生きてたのか、なんという生命力。
「あら? まだ立てるの?」
「大人しく死ねばよかったのにね・・・」
「う、うるせぇ! ちくしょう、こんな女共にっ・・・!」
「大丈夫かジョニー!?」
「死んだかと思ったゾ・・・」
マイケルとボブが心配そうに駆け寄るが、ジョニーはそれを拒む
「いや、俺は大丈夫だ・・・それより、こいつらにたっぷりと御礼しないとな・・・」
その一言に、彼等の目つきが変わる
「当たり前だ! いくぞオラァ!」
「ぶっ殺ス!」
「ちょっと! 女相手に暴力!?」
「ってか! 僕、女じゃないんだけど!?」
完全にキレてしまった三人に向かって叫ぶが、聞く耳を持たない彼等は容赦なく突進を仕掛けてきた
「「「ウォラァーーーーーー!!」」」
「クラス長、下がって!」
「嫌よ! 秋君を見捨てられない!!」
女の子を戦わせまいと、クラス長を背中に隠そうとするが彼女はそれを拒む
「クラス長は女の子なんだから、戦わなくていいんだよ!」
「そんな! 秋君一人でどうしようっていうの!?」
「どうしようもない・・・かな?」
「ちょっとー!?」
そうこうしている内に三人はもう目前まで迫っていた
・・・もう、一人で突っ込むしか無い!
無傷で助かる選択肢を捨てて僕は一歩前に出た
・・・と、その時。
「坂部くぅぅぅぅぅぅぅぅんんんんんんっ!!」
背後から、聞き覚えのある声が聞こえてきた
今回はクラス長では無く、野郎の野太い声。
「うおおおおおおおぉぉぉおおおおおおぉぉっ!!!!!!!! 坂部くぅうんんんんんんんんん!!!!!!!!!」
雄たけびを上げながら声の主は僕とクラス長の間を抜け、そのまま三人組へ突っ込む
そして筋肉の塊のような男が三人の男達を難なく吹き飛ばした
「ふべぁ!」「あべし!」「ひでぶ!」
「え? 何・・・?」
「あれ、塚原だ・・・」
男の正体は塚原利樹だった
その鍛え上げられた肉体と安っぽいグルグル眼鏡が何よりの証拠だ。
塚原利樹はUターンして僕とクラス長の前まで来ると、そのがっしりとした手で僕らの肩を掴む
「大丈夫か二人とも!?」
「あ、うん・・・おかげさまで、ね? クラス長?」
「え? あ、あぁ! 大丈夫よ!」
「そうか、よかった! さ、二人は逃げるんだ! ここは僕に任せろ!」
利樹は僕達の背中を押すと三人組の方へ向き直る
利樹に吹き飛ばされた三人は既に立ち上がっていた
・・・うーん。なんていうか、ゴキブリ並みのしぶとさだ。
心の中で関心しつつ、塚原利樹の隣に肩を並べる
「悪いけど僕も残るよ」
「何? いや、しかし・・・」
「大丈夫。僕も男だからね・・・ホラ、前見て利樹」
あいつ等にはいろいろ失礼な発言をされたからな。とりあえず、100発は打っておきたいところだ
・・・女やら可愛いやら、思い出しただけでムカムカする。
「フッ、なるほどな・・・では共に行こう真鍋君!」
「・・・? あぁもちろんだ!」
なんだろう? こんな状況だというのに塚原の表情はなんだか嬉しそうだ
・・・もしかして、喧嘩好きとか? 軍家の血筋は恐ろしい。
「行くぞ! 我々の力を見せてやろう!!」
「イエッサ!」
僕達は揃って駆け出した・・・
ちゃらちゃらー♪ 塚原利樹の好感度が急上昇した! 塚原利樹ENDのフラグを入手した!!
次回、まだ海!
秋:待てやあああああああああああああああ!?
又二郎:どうした?関西のヤクザみたいな雄たけびをあげて?
秋:いらんフラグ立てんな!くっそ、へし折ってやるからな!?
厚樹:まぁまぁ、ガチホモルートもありなんじゃね?
秋:いらねーよ!願い下げだよ!?
厚樹:とりあえず、厚樹END!それ以外ならなんでもいいんだよ!!
秋:くそう。・・・ってか、厚樹?
厚樹:あ?どうした?腹でも痛いのか?
秋:あとがきくらいこっち見ていいんじゃないの?
厚樹:・・・いや、それはちょっとNG。
秋:なんでだよ!!?
厚樹:お前は男の気持ちを全然わかってねぇ!!
秋:意味わかんねーよ!!!
又二郎:待て待てお前ら!!!今日はそんなことより、大事な発表が・・・
秋 厚樹:うるっさいわ!!!!!
又二郎:ふごぁぁぉあぁぁぁっぁあ!!!!
秋:邪魔すんなよ。
厚樹:全くだ。
秋:それじゃ、皆ばいばい!
厚樹:意見感想もよろしく!!
秋:別に募集して無いけどね!!!!
厚樹:さらば!!