二十六話、始まりの朝!!
死んでも骨だけは拾ってやる・・・
「ふぅ、緊張したぁ・・・」
パタンと携帯を閉じる
緊張の糸が解け、ほぅ。とひと息ついた
「課題が無くなってたら秋君が困っちゃうってこと考えて無かったわ。迂闊ね・・・」
言いながら握っていた携帯を撫でる
・・・秋君と電話なんて初めてだったなぁ。
やっぱり声だけでもかなり興奮したというかなんというか・・・うへ、うへへ・・・
「―――へへ・・・っは!? いかんいかん! イベントまでに課題を終わらせないと!」
私は気合いを入れ、ペンを握った―――
天気は快晴、空は青。絶好の海水浴日和である
本日は待ちに待った『D組サマーイベント』当日。
『午前6時に塚原利樹の家に集合!』
との事で、僕達1年D組一同は塚原利樹の家に集まっていた
塚原家はかなりのお金持ちで家も大きいと聞いていたのだが
塚原家の規模は僕達の予想を遥かに上回っていた。
「つーか・・・デカ過ぎだろ」
隣にいた厚樹が塚原家の屋敷を見上げて呟いた
「そうだね。これはびっくり」
僕も屋敷を見上げながら同意する
塚原家のお屋敷はとにかく大きかった
庭もかなり広く、海に行くための大型バスが2台並んでいるのだが全く気にならないくらいに広い。
「庭がこんなに広くてなんか意味あるのかな・・・?」
「さぁ? 軍家なんだから戦闘機でも着陸するんだろ?」
「あぁ・・・もしかして、今立ってる場所って滑走路?」
「・・・あんまりキョロキョロするな。虚しくなるぞ」
・・・ソウデスネ。
お金持ちの凄さを知った秋なのであった・・・
「おーい皆! こっちに集まってくれー!」
この場の全員が塚原家のスケールに騒然としていると塚原利樹がメガホン越しに集合をかけた
ぞろぞろと塚原利樹の前に集まる
集まった人数を数えた利樹は「よし。」と大きく頷いた
「全員揃っているな! ・・・さて、今日は『D組サマーイベント』当日だ! 今日と明日の二日間、皆にとって有意義なひと時にして欲しい!! そのためにこの塚原利樹、全力でこのイベントをサポートしよう!!!」
ぱちぱちぱちぱち・・・
「いいぞー塚原ー」
「頼んだぞー」
「カッコイー」
まばらな拍手の後、皆から惜しみない? 歓声が上がる
「ありがとう皆! それでは、さっそくバスに乗ってもらいたいのだがバスは二台ある! どちらに乗るかは自由に決めてくれ!! ・・・以上!」
塚原利樹はメガホンを下げ、バスの方に駆けて行った
・・・修学旅行みたいな長々とした注意事項が無いのは最高ですな。
みんながどちらのバスに乗ろうかと騒ぐ中、僕達はさつきと美咲を探していた
「なぁ美咲ちゃん達見つかったか?」
厚樹が辺りを見渡しながら聞いてくる
「どこだろね? ・・・あ、いた。あれじゃない?」
「ん、どこだよ? ・・・おぉ! ホントだ! おーい!!」
二人の姿を見つけた厚樹が大きく手を振る
僕達に気付いた二人が早足でこちらに駆けて来た
「やっと見つけたー! 二人ともどっちのバスに乗るか決めた?」
「み、美咲。あんまり引っ張らないで・・・」
いつも通りハイテンションな美咲とは反対に、さつきは瞼をこすりながらのご登場である
・・・そういや朝に弱いんだったな。さつき。
「さつき大丈夫?」
「うん大丈夫・・・おはよう秋」
心配になって声をかけると、さつきは笑顔で「大丈夫。」と微笑んだ
・・・朝日に向かって。
「・・・大丈夫、なのかな?」
「まぁ気にすんな! どうせバスの中ですぐ眠っちゃうんだからさ!」
「さ、さいですか?」
苦笑する僕に笑顔でグーサインを送る美咲
まぁいいか。そっとしておこう。
「それより、あたし達も早くバス乗らないと! 良い席全部埋まっちゃうよ!」
「それもそうだな。とっとと乗るか」
気が付くと辺りに残っていた人数はまばらだった。頭の回転が速い奴等はとっくにバスの中だろう。
「・・・っていうか、又二郎は?」
ふと、この場にいるはずの一人がいないことに気が付いた
あの騒がしい又二郎が未だ姿を見せていないのだ。
「そういや朝から見て無いな? どこ行ったんだあいつ?」
「利樹は全員揃ってるって言ってたけど・・・」
言いながら辺りを見渡すが、ヤツの姿はどこにも無い。
「どうせ海に行けば会えるでしょ? それより、早く眠らせて・・・」
「・・・そ、そうだな。んじゃー行こうぜ」
「はーい」
「ラジャー!」
さつきの必死な訴えに皆は頷き、ぞろぞろとバスへ向かった・・・
―――その頃、又二郎は・・・
「よぉ、塚原」
皆がバスに乗り終わる頃。又二郎は塚原利樹に声をかけた
・・・二人はバスの運転手が良く被っている帽子を頭に乗せていた。
「おぉ又二郎か、昨日はすまなかったな」
「いや、いいんだ。 新しいバッシュ買ってくれるんだろ?」
昨日。塚原利樹が使った靴は見事に擦り切れボロボロに成り果てていた
又二郎は変わり果てたバッシュを抱え号泣した。
流石にひどいことしたな、と思った塚原利樹が又二郎に新しい靴を買うことを約束する
・・・こうして、彼らの間に固い絆が生まれたのだ。
「当然だ、お前のバッシュを駄目にしたのは僕だからな・・・その代わり、バスの運転を頼んだぞ?」
「安心しろバッシュのためだ。皆を無事、海へ送り届けてやる」
塚原利樹はバッシュを奢る代りに、今日と明日の運転を任せたのだ
・・・ちなみに又二郎は免許を持っていない。
「それを聞いて安心したぞ。それじゃ僕達も運転席に行くとするか」
「お互い安全運転でな!」
そして、二人はバスに乗り込んだ・・・
ちなみに塚原利樹は免許を持っていない。
こうして、長い長い、D組サマーイベントが始った・・・
次回、UNO!
秋:ついに、イベントが始まったねー
厚樹:楽しみだなー、一体、俺に何が起こると言うのか・・・
秋:そうだね・・・
秋:おぃ又二郎、ちゃんと厚樹のイベント考えてあるんだろうな?
又二郎:あぁ、ぬかりはないぜ。
秋:そりゃよかった。
厚樹:なにこそこそ話してんだ?お前ら?
秋:いやいや別に!?
又二郎:そそ、何でもないのさ!!
厚樹:そうか、ならいいんだけどさ。とりあえず、明日は更新無しだぞ!!
秋:来週もよろしく!!
又二郎:アディオス!!
 




