二十四話、イベント前のひと時。
林檎畑~
本日は、ある晴れた夏休みの三日目である
いつの間にか終業式も終わり、気がつくと夏休みが始まって、既に三日目だった
・・・時は一瞬で過ぎ去るものだと、身をもって感じた秋なのであった。
「って、何の話だよ!」
一人虚しくツッコミを入れる
「・・・・・・・・・。」
・・・虚しいよ。
心の中で一言呟き、三日ぶりの校門をくぐった―――
もうすぐ『D組サマーイベント』を控えているという事で、僕は三日ぶりの学校を訪れていた
・・・イベントと全然関係無いだって?
HAHAHA! 実は、教室に夏休みの課題を丸ごと置き忘れちゃってたのさ!
イベントまでに課題を片付けておきたいので、仕方なく課題を回収しに来たと言うことです。はい。
「失礼しまーす、真鍋でーす」
意味も無く挨拶をしてから、教室のドアを開け、中へと入る
意外なことに、教室には見知った顔のクラスメイトが居た
「・・・又二郎? 何やってるの?」
忙しそうに教室をウロウロしていた又二郎が、こっちを見て驚く
「おぉ、秋か! 俺はこの間買ったばかりの『エアー入りのナ○キのバッシュ』を取りに来ていたんだ」
「バッシュか? あぁ。確かにお前、がんばってバイトしてたもんね」
「もう二度とすることは無いがな・・・ってか、お前こそどうした?」
「僕は課題を取りに来たんだよ。引き出しの中に置いてっちゃってさー」
「なるほど、そうか・・・では、目的は違うが、一緒に教室を探し回ろうではないか! 我が友よ!」
「はいはい」
探し回る必要は無いんだけどな、どうせ机の中だし。
と、軽い気持ちで自分の机を漁る・・・しかし・・・
「え、あれ・・・?」
・・・無い。
確かに、ここに入れておいたはずなんだけど
まさか、誰かに盗られたとか・・・けど、宿題を? 流石にそれは無いだろう。
と言いたいところなのだが、このクラスには『個性的な人達』が多すぎるため、断言は出来ない。
「なぁ又二郎?」
同じく、お目当てのものが見つかっていない又二郎に声をかける
「なんだー?」
「夏休みの宿題を、わざわざ盗む奴っているかな?」
「そんな奴居ねぇよ」
即答されてしまった
・・・やっぱり、それは無いよなぁ。
仕方ない、他の所にあるかもしれないし、次はロッカーでも探すか・・・
坂部舞の家にて―――
「ふふ、秋君の・・・宿題・・・っ」
私は、夏休みの課題を勉強机の上に広げた、思わず口の端が緩んでしまう
・・・別に、勉強が好きだとかそんな理由ではない。
「感じる! 感じるわっ、この課題から、秋君のコスモを!!」
そう。この課題は、愛しの秋君の物だからである
思わず、この課題一式を思い切り抱きしめたい衝動に駆られたが、彼の私物に傷を付けるわけにもいかない。私は自分の感情をぐっと堪えた。
「さて・・・始めますかねー」
筆入れからシャーペンを取り出し、課題のプリントに向かう
『D組サマーイベント』までに、この課題を終わらせなければならないのだ。
「秋君の課題を、私が終わらせておいて、イベント当日にやり終えた課題を渡せば・・・きっと彼の中で、私の好感度はうなぎ登りよ! ・・・ふふふ、ふふふふふふふふふふ」
ペンを走らせつつも、彼女の独り言は続く
「それだけじゃないわ! 秋君の机の上には、私の名前が書いてある課題一式が置いてあるわ。心の優しい秋君は、私の課題を代わりにやってくれる筈・・・そしてイベント当日に、私に手渡してくれる・・・ふふふ、楽しみだわ『D組サマーイベント』っ!」
坂部舞は、夏休みを自分なりに満喫していた・・・
―――塚原利樹は、部活動に勤しんでいた
『少林サッカー部』の、塚原利樹は今!
前後左右、上空地中、全方位から飛んでくるサッカーボールを
華麗に避けつつ、夏休みの課題にペンを走らせていた!
「ゼェッ、ゼェッ・・・くっ、なんの!」
激しく身体を動かす中、頭を使って問題を解くのは難しい
しかし、彼のペン先は止まることを知らない。
・・・彼の行っている、訳のわからない練習法は『こんな事できたら、少林映画っぽくね?』という訳のわからない理由から生み出された、非常にアクロバティックな練習法である
「ふぅっ・・・まさか、坂部君の課題が教室に置き忘れてあるとはな・・・これはチャンスだ! この課題を坂部君の代りにやり終え、イベント当日に手渡せば、今まで以上に彼女の気を引く事が出来るだろう! ・・・ウラァ!」
ボコッ!
利樹は飛んできたボールの一つを蹴り飛ばした
「だが、なぜ坂部君の宿題が、真鍋秋の机の上に? ・・・まぁいいか! っはっはっは!!」
ボコッ!!
再び飛んできたボールを蹴り返すと、彼は満足げに自分の足を見る
そこには、まだ真新しい『エアー入りのナ○キのバッシュ』。
「それにしても、この靴は使い心地が良いな! 教室に置いてあったから、勝手に借りたんだが・・・持ち主に、この靴の詳細を教えて欲しいものだ! はっはっはっはっは!!」
室内用のバスケットシューズで校庭を飛び回り、高らかに笑う彼の声は、どこまでも響いていった・・・
―――そして、教室・・・
「無いなー・・・」
「こっちもだ・・・誰だよ、俺の靴盗ったの・・・」
「お前の靴なんて、誰も盗らんでしょーに」
「いやいや。わからんぞ? 俺の隠れファンがいるかもしれん」
「隠れファンねー、はいはい」
さーて、探し物続行しますかねー・・・
次回、もう少しイベント前日!
秋:お、お気に入り登録者が増えた・・・
厚樹:七人ときたか。
又二郎:ありがたやありがたや。
秋:ところで、昨日朝、更新し忘れた事は重罪だぞ?
又二郎:うっ、それは・・・
厚樹:何回目だよ
又二郎:申し訳ございません・・・
秋:まぁ、どうしようもないからね、お前のPCボッコいし。
又二郎:うるぜぇ!・・・それではお気に入り登録ありがとう!!
厚樹:さらば!!
秋:さらばじゃ!