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十四話、届かない想い。

おののいもこ!


 さて、今日は姉が教室に怒鳴りこんできた翌日であり、今はその放課後である。


 僕と厚樹は一昨日の償いという理由で今日一日バレー部の雑用係をやらされていた。

 勿論、又二郎もバスケ部から出張で雑用にいそしんでいる。


 雑用の内容は基本、体育倉庫の掃除やボール拾いなど、簡単だが腰が痛くなったり面倒くさかったりといった仕事ばかりで、体力と精神を徐々に削られていくのだ。

 すでにかなりの雑用をやらされていた僕達は、段々弱音を吐くようになっていた。



「秋のお姉ちゃんって、怖えぇなぁー」


 又二郎がバレーボールをいくつも抱えながら、涙ながらにそう言った。


「でしょ?」


 僕の方も、次々と転がってくるボールを拾いながら答えた。


「いきなり見ず知らずの美人に呼び出された、って時は嬉しかったけどさぁ。いきなり正座させられてお説教だぜ? しかも翌日にこの重労働! 流石に酷いと思わないか?」

「まぁ可愛い後輩を連れ去られたと思って焦ってたんじゃない?」


 又二郎は「そんなもんかぁ?」と首をかしげながら、遠くに飛んでいったボールを追いかけていった。



「いやぁ雑用って楽しいよなぁ!」


 続いてやってきたのは厚樹である。

 コイツは又二郎とは違い、実に楽しそうに雑用をこなしている。


「えらくご機嫌だけど、どうかしたの?」

「ぐっふっふっふ……」


 明らかに不自然なので、素直に尋ねると、ヤツは緩んだ口元を更に緩めた。

 もう変態にしか見えないのだが。


「ぐふふ、ぐふふ……聞きてぇ?」


 にやにやしながら肩に腕をまわしてくる。


「何だよ……?」


 鬱陶しいな。と嫌がるが、厚樹はそんな僕にお構いなしで話す。


「秋、あっち見ろよ。ホラ、あのコートの隅だって」


 そう言って厚樹はコートの方を指差す。

 厚樹の指し示したほうを見ると、数人の女子部員と目があった。どうやら厚樹の事を見ていたらしい。それも熱い視線で。


「さっきからどうも俺、先輩の女の子に見られっぱなしでさぁ! やっぱ俺かっこいいからねぇ、仕方ないのかなぁー!?」

「……はいはい、ボール拾いの邪魔だからどっか行け」


 やたらと上機嫌な厚樹をひき剥がすと、再びボール拾いを再開した。


 あの女子部員達が自分にも熱い視線を送っていたという事実に、超鈍感主人公である真鍋秋が気付く事は無かったのである。





「ご苦労様だねー、えらいぞ秋くん!」

「ん? あぁ、美咲か」


 休憩中に体育館の外にある水道で顔を洗っていると、額に汗を浮かべた美咲がやってきた。


「そっちこそお疲れ様」


 そう言うと美咲は「まったくだよ、疲れたー」と言いながら僕の隣で顔を洗い始めた。

 なんか、雑用の僕達とは比じゃないくらい汗かいてるなぁ。しかも楽しそうだし、青春ってやつだな、うん。


「それにしても、秋くんも厚樹も物凄く目立ってるよね」

「へぃ?」


 顔を洗い終わった美咲が顔を拭きながら、そんなことを言い始めた。


「だって練習中、先輩達が秋くん達の事ばっか見てるんだもん。あたしゃ驚いちゃったよ」

「いやいや、見られてたのは厚樹だけだから。僕はオマケみたいなもんですぜ」


 先輩達のやる気を剥いでいた原因にされちゃ困る、と思っている秋だが。

 この超鈍感主人公が(以下略。



「えぇー、そうかなぁー?」

「そうだよ」


 そう答えてから、蛇口を捻って水を飲む。

 重労働で渇いた喉が、一瞬にして潤っていくのを感じながら、美咲の言葉に耳を傾ける。


「そうなのかなー?」


 美咲は水道水をがぶ飲みしている僕を見つめながら、ぼそりと。


「秋くんはさー……好きな人とか、居る?」

「ふぼぁあああああ!?」


 思いもよらぬ問いかけに、思わず水をふきだしてしまった。

 いや、ホント仕方ないでしょ! これは!? ってか、なんだよいきなり!?


「わ、悪い悪い! 驚いた?」

「げほげほっ、今日一番の驚きだったよ!!」

「今日一番とは光栄で……あ、いや。それより大丈夫かい? 秋くんや?」


 美咲は笑顔のまま、僕の背中をばしばし叩く。

 い、痛いっ! バレーで鍛えられた腕の振り下ろしが痛い!


「いやっ、もういいよ! ……ふぅ、ありがと」


 危ない危ない。美咲を止めなかったら、僕の背中に綺麗なもみじ柄が出来るところだった。


「えー、こほん」


 気を取り直し、一つ咳払いをしてからさっきの質問に答える。


「好きな人とかは、居ないんだよね。あー、中学の時は居たんだけどさー」

「えぇ! 中学の時居たの!? どんな子、いや! なんて子!?」


 僕がそう言った瞬間、美咲がずいっと詰め寄ってくる。

 近いって!? 美咲は女の子なんだから、男子の気持も考えてもらいたい!!


「いや言わないから! 美咲こそ、そーゆーの居るの!?」

「え! あ、あたし!?」


 慌てて質問を返すと、美咲は僕の前から飛び退いた。


「あ、あたしかぁ」


 そして頭を抱えて「言っていいのかぁああああ」と唸り始める。


「美咲人気あるからさ、逆に美咲の事好きな人も多いと思うよ?」


 僕のグーサインに、美咲は嬉しいような、そうでないような表情で笑う。


「そ、そう? ありがとう……で、でもさ、そんなの関係ないよ! だって、あたしの好きな人は」

「美咲ー、練習始まるわよー?」


 そのとき、体育館の入り口からさつきが顔を出した。


「うおぉ! さ、さつき!? わかった、すぐ行く!! 行きます!!」


 明らかに慌てている様子の美咲に、さつきは首をかしげたが、特に追求はせず「早くしてよね」と言い残して体育館の中に引っ込んでいった。

 これ以上無いくらいのタイミングの悪い出来事に、お互い何も言えずに立ち尽くしてしまう。


「あ。続き、言ってもいい?」

「あぁ、うん」


 少しの間が空いた後、おずおずと美咲が話を再開する。


「たとえ、あたしがどんなに人気があってもさ。無理なんだよ」

「美咲?」


 ……驚いた。

 さっき美咲が言った「好きな人とか、居る?」の一言も強烈だったが、これは今月一番の驚きかもしれない。


 普段の明るい美咲からは、想像も出来ないような、寂しげな表情で彼女は言葉を続ける。


「この気持ちは、あいつには届かないってわかってるんだ」

「え、えっと。どうして?」


 美咲は、僕のほうをまっすぐに見ている。

 見ている、のだが。彼女の目はどこか遠くの景色を見ているようで。


「だって、だってあたしの好きな人は……さつきなんだから」

「……っ!?」


 ……これが。

 今までの人生の中で、一番驚いた瞬間だったのかもしれない。


次回、さつき!




又二郎:ふふふ・・・

秋:何だよ?


又二郎:気づいてしまったんだよ・・・

厚樹:何が?自分のアホさにか?

又二郎:ちげーよ!!


秋:じゃあ何?

又二郎:自分の、立場にだよ・・・俺は作者!言わばこの小説の神的な存在なのだ!!

厚樹:だからどうした?


又二郎:つまりだ、普段から偉そうな貴様らを今日こそ倒しちゃるという事さ!!!

秋:やってみろ馬鹿野郎。

又二郎:じゃ、決闘は次回って事で!!


厚樹:じゃ、前みたいに日曜日は更新無しな。

秋:月曜日に会おう!!!!!

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