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十三話、放課後にて姉、襲来。

シュートオオオオオオオ!

「さて、帰ろうぜ秋」

「サーイエッサ!」


 厚樹に声を掛けられ、僕は教科書を詰め込んだ鞄を持ち上げた。



 本日全てのお勤め、というか授業が終わり、放課後。


 学生達が部活や帰宅活動に励む中、僕と厚樹の二人は非常に珍しく教室に居残っていた。

 決して放課後の教室で勉強をしていたとか、そんな優等生まがいの理由では無い。


 ただ単に、SHRからやっていたオセロが白熱してしまい気が付くと放課後になっていただけである。


 時刻は夕方のオレンジが鮮やかな午後五時過ぎ。

 少し耳を澄ませば、窓の外から運動部のかけ声が絶え間なく聞こえてくる。


「運動部のかけ声ってさ、青春って感じするよねー」


 そんな声に耳を傾けながら呟く。


「そうか? 男の声なんてムサイだけだろ?」


 このチャラ男は一度くたばったほうが良いと思う。


「んなこと無いって。お前も聞いてみろよ、若者の息吹を感じるぞ?」

「若者の息吹ねぇ? どれどれ」


 じじくさい事を言いながら、二人仲良く耳を澄ますと。


「ぁー……きぃー……っ!」


 廊下の方から女性らしい声が聞こえてきた。なんか、聞き覚えのある声なんだけど。


「おぉ本当だ! どこからともなく、美しくて透き通るような声が!」

「この声って、毎朝家で聞いている様な……っは! まさか姉か!?」


 聞き覚えのある声の主は、毎日家で顔を合わせる姉のものだった。

 どうやら僕の名前を叫びながら、校内を駆け回っているらしい。一体なんの嫌がらせだろうか。


「とりあえず、隠れないと」


 こんな嫌がらせを受ける理由に全く心当たりが無いのだが、本能的に隠れたほうが良いと悟った僕は、すぐ隣の掃除用具入れの扉を開けた。


「狭いなぁ」

「なにやってんだよ秋? お前、掃除箱に入る趣味でもあったのか?」


 入るのに苦戦していると、厚樹が若干引き気味に聞いてくる

 ……ほっとけ。



「あーきーぃー!」


 ちょうど僕が掃除用具入れに収まった瞬間、教室のドアが勢い良く開かれた。

「な、なんだ!?」と厚樹の驚く声が聞こえてくる。


「秋はいる!?」


 予想通り声の主は僕の姉。真鍋夏だった。


「な、夏さん?」

「あら厚樹君、秋はいる? ちょっとあいつに話があるのよ」


 掃除用具入れのロッカーには細い隙間があり、そこから教室の様子を伺うと姉が厚樹に詰め寄っているのがわかった。


「……言うなよ」


 厚樹に向かって、かなり小さな声で話しかける。


「む、無茶言うな」


 ヤツも小声で返す。


「今度ジュース奢るから!」

「……わーったよ」


 よし。交渉成立っ。

 持つべきものは空気の読めるイケメンチャラ男だな。


「あー……秋ならトイレに行きましたよ? ついさっき」

「へぇ、ついさっき?」


 あからさまに怪しんでいるな、姉のやつ。


「えぇ、はい」

「ふーん。それじゃ、厚樹君は一人教室で何やってたの? リコーダー盗み?」

「あぁ、それはですね? あいつ女顔だから一緒にトイレ行きづらいんで、仕方なく一人で待ってたんすよ」


 少し男心が傷ついたけど、いい感じにごまかしたぞ厚樹!

 てかリコーダー盗みって。昭和かよ。



「そ、それは納得の理由ね……はぁ、仕方ないなぁ。秋の方から説教してやろうと思ったけど、居ないんじゃあね。説教は厚樹君からってことで」

「……なっ! 説教!?」


 一瞬にして顔色を変えた厚樹が、反射的に掃除用具入れの扉に手をかけた。


「いますっ、いますよ!? 秋ここにいますから!」


 自分だけ怒られると悟って裏切りやがったなあの野郎! くそっ、ジュースじゃ安すぎたか!


「ちょっ、何バラしてんだよ! 薄情者!」

「うるせぇ! 親友の危機に隠れてんじゃねーよ!」

「お前のことなんて知らん! 勝手に死んでろ!!」

「お前の方が薄情者だろっ、が!!」


 内側からでは分が悪く、あっという間にドアが開け放たれる。


「くそっ! これは、もう逃げるしか!」

「あら、私から逃げられるとでも?」


 ぎりぎりぎりぎり。

 逃げようとする僕の腕を、般若の形相をした姉がしっかりと握って離さなかった。





「で? さつき達が昨日、部活をサボってバスケをやってたのは又二郎って人が悪いのね?」

「はい! そうなんっすよ夏さん!」

「そう、全部又二郎が悪いんだよ。又二郎のヤツが僕達を脅して無理矢理……うっうっ」


 僕達は二人仲良く並んで床に正座させられていた。

 目の前にはお怒りモードの姉が腕を組んで僕達を見下ろしている。


「又二郎君はバスケ部の人よね?」

「その通りっす」

「その通りでございます、姉上」


 どういう経緯があったのかは知らないが、昨日さつき達が僕達とバスケをしていた事を知った姉は、わざわざ部活動をサボって説教しに来てくれたわけである。

 ……こんなところで説教しなくても、家で言えばいいのに。あ、それじゃ厚樹が怒られないから不公平だな。


「バスケ部って事は、今体育館にいるってことよね」


 ちなみに僕達は普段使わないチームワークをフルに使い、前もって口裏を合わせる事無く、今回の騒動全ての責任を又二郎に擦り付ける作戦を決行していた。

 許せ又二郎……あれ? ってかこれ全部又二郎が全部悪くないか?


「それじゃあ、今度会ったとき注意しておくわ」

「はっ、それがよろしいかと」


 僕は深々と頭を下げた。


「どうぞ好きなだけ説教してやってください」


 続いて厚樹も頭を下げる。


「うん。一応反省してるみたいだし、もういいわ。あんた達はもう帰りなさい」

「「……御意」」


 二人仲良く立ち上がる。


「あぁーっ、今からまた部活かぁ。いいなぁ、帰宅部は」


 鞄を担ぐ僕達を見て、姉が呟く。


「青春を無駄にしたいのなら、いつでもウェルカーム!」

「キャプテンが、そう簡単にやめられるわけ無いでしょ」


 おどけながら言ってみると、実に不愉快そうな口調で跳ね除けられてしまった。

 まぁそりゃそうだよね。


「それじゃ、途中まで一緒に行きましょ」


 僕達は同時に「あらほらさっさ」と、返事をして姉と一緒に教室を後にした。


次回、新展開!?




又二郎:いやぁ、次回は新展開を迎えるのかー・・・

秋:あとがきでネタバレなんてやめてよ?読者減るから。


又二郎:はははー、いいじゃんいいじゃん。ネタバレしないからさー。

厚樹:・・・どうした?何かテンションがおかしいぞ?


秋:いつもおかしいから、いいんじゃない?

又二郎:酷!?

厚樹:で、何かあったのか?


又二郎:・・・う、うぅ・・・

秋:泣くなよ、気持ち悪い・・・

又二郎:酷いって!!ちょっとは心配してくれよ!!

秋:黙れ


又二郎:くっそー!!俺のプリン食ったの誰だよおおおおおお!!!

厚樹:何だプリン食われたのか?

又二郎:そうだよ!冷蔵庫の奥深くに隠してあったのにさぁ!


秋:あ、それ食ったのお前のお兄ちゃんだろ?

又二郎:んあ!マジでか!?


秋:うん

又二郎:あの野郎・・・殺す!!


厚樹:てかお前兄貴居たのな。

又二郎:さぁぁぁぁぁぁつ!!!


厚樹:走り去っていった・・・


秋:・・・じゃ、次回もよろシック!

厚樹:意見感想ならいくらでも受け付けてるぞ!!!

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