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十二話、教師の憂鬱!

とうがらし!


 今は午前最後の授業中。教科は英語である。

 ただ、今日の授業はいつもと少し違っていた……



「オーゥ、イェイ! リァリィ? AHAHAHAHA!」


 ご覧の通り、教師の様子がおかしいのだ。

 授業が始まって既に30分は過ぎているのだが、英語担当の女教師は全く授業を進めずに意味不明な言葉を一人でただただ連発している。


 ちなみにこの女教師、結構かわいいので男子生徒から人気があったりなかったり。

 歳は確か、29くらいだったかな。



「暇だー……おい、厚樹ー?」

「ぐごぁぉ……っ、んぐ。ハハッ、もうハチミツは食えねぇよ……ぐごーっ」


 目の前では厚樹が気持ち良さそうに寝ていやがりますよ。叩き起こしてやりたいのだが、それをやると間違いなく殴り合いに発展してしまう。

 お昼前くらい平和に過ごしていたいからやめとくけどさ……てか、なんつー寝言だよ。


 そして隣の席では、さつきと美咲が井戸端会議と洒落込んでいる。

 うーむ、せっかくの女子水入らずを邪魔するのは気が引けるな。


 そんなことを考えながら、なんとなく窓の外を見ると、ベランダで授業を受けていた又二郎と目があった。

 しばらく見つめ合っていると、又二郎が口パクで「窓開けて」と訴えてくる。


 僕は「めんどくさいな」と文句をたれつつ、からからと窓を開けてやった。


 爽やかな風が教室に舞い込んでくる。

 今日は風が気持ち良いですなぁー……あ、又二郎の教科書が風で飛んで行った。


「おい秋ぃぃいいいいいい!」


 又二郎は窓から教室に顔を出すと、授業中ということおかまいなしに大声で話しかけてくる。


「なんだようるさいな」

「秋ぃぃぃぃいぃいぃいいいいいい!」


 だあっ! わかったから早く用件言ってくれ! と怒鳴りたいところだが、そんなことをしたら間違いなくあの女教師に八つ裂きにされそうだ。


「今までずっと考えてたんだけどさ! 昨日の試合、やっぱおかしいってことに気付いた!」

「どこがだよ……」


 こいつは教師の様子がおかしいことに気付いて無いのだろうか?

 どうなっても知らないぞ、と思いながら小声で返す。


「いや全部だよ! なんで帰宅部のお前らが勝って、毎日必死に練習してる俺達が負けなきゃいけないんだよ!? きっと、なにかがおかしいんだ……っは!? まさか八百長!?」

「なにが八百長だ。実力だっての」


もちろん、又二郎の言うような事実は一切無い。


「納得いかんわぁぁあぁぁぁああああああああっ!!」

「……HAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」


 又二郎が叫ぶと同時に、先生が軽やかにスキップしながらベランダに飛び出ていった。

 ついに逆鱗に触れたかと、クラス全員の視線が先生と又二郎の二人に注がれる。


「AHAHA! ミスター又二郎君? 授業の邪魔は駄目よーぉ?」

「待ってください先生! 今は授業どころじゃないんです!!」

「わーぉ! ……『授業どころじゃ』ない、ですか」

「そうです! この問題は、今後のバスケ人生がかかってますんで!」


 先生の様子が明らかに変わったのだが、又二郎のヤツは気付いてないのだろうか?


「私だってねぇ」


 先生の手が、又二郎の肩に置かれた。


「え、はい?」


 普段の先生からは想像も出来ないドスの利いた声に、ようやく異変に気付いた又二郎。

 ……だが、時既に遅しであった。


「私だってねぇ! こんなのん気に授業してる暇なんて無いのよ!! 独身のまま、今日で30になって焦ってるの! 私の人生も、今が一番重要な時期なの! この歳で結婚を逃したら、後が無いのよ!」


 突然の大声に、机に突っ伏していた皆が顔を上げる。

 だが、厚樹だけは起きなかった! なんという睡眠への執着!


「それは俺の抱えている問題と、なんの関係もないじゃないですか!」


 ばん! と又二郎が机を叩いて立ち上がる。

 流石バスケ馬鹿、バスケのことになると相手が教師だろうと一歩も引かない。


「大体ですね! 先生が30になったとか、なってないとか俺には関係な」

「黙れ死ねええええええええええええええええ!!」


 先生が軽々と又二郎を担ぎあげ、ベランダから投げ落とした。って、おいおい。


「ちょ、先生!? ひ、ひいゃあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁーーーー……!!」


 段々小さくなっていく悲鳴が『ぐしゃ』という物騒な音と共に消える。

 ……逝ったか、南無さん。


 僕は静かに窓の外にむかって、両手を合わせた。





「うっ、ぐずっ。ひっく」


 ベランダから戻ってきた先生は、泣きながら鼻を啜っていて、なんとなく教室に気まずい空気が漂う。


 というか、又二郎の死を誰も気に留めていないのだが。

 まぁいいか、多分これくらいじゃヤツは死なないし。


「先生!」


 そんなことを考えていると

 さつきと話していた美咲が、急に立ち上がった


「大丈夫だよ、あたしのお母さんが結婚したの31だったし!」


 先生がはっとして美咲の方を見る。


「美咲ちゃん……っ」


 その表情がみるみる明るくなっていく。

 いやいや31って、あまり変わらないよな? と思ったが、先生はそれでも嬉しかったらしい。


 そして美咲に続くように、他の生徒達も立ち上がり。


「俺の母ちゃんは37で結婚した!」

「人生まだまだ、これからだ!」


 とか。


「私のお母さん52歳で結婚しました!」

「先生可愛いから彼氏くらい簡単にできますよ!」


 など次々に叫んでいく。


「そのままいけば、50歳くらいで魔女になれるらしいっすよ!? 頑張れせんせっ―――ぐほぉっ!?」


 ……今のは厚樹だ。いつの間にか起きていたらしい。

 厚樹は先生の鉄拳制裁を食らって、鼻から血を流しながら再び机に突っ伏した。


「大丈夫?厚樹?」

「……」


 返事がない、ただの屍のようだ。


「おやすみ」


 安らかに眠ってくれ。そして出来ることならば、次に生まれ変わるときはバカ以外に生まれ変われ。



「皆っ、ありがとうっ! 先生頑張るわ!!」


 先生は教室を見渡してから、深々と頭を下げた。

 丁度そのときに授業終了のチャイムが鳴り、長かった授業がようやく終わりを告げる。


 すっかりご機嫌になった先生は授業の後もクラスの皆に励まされて皆の声援と拍手の中、生き生きとした表情で教室を後にした。



「あぁ腹減ったなぁー、厚樹ー」

「グッ、なんだったんだ……一体……」


 お。生きてたか。


次回、姉の襲来!




又二郎:おほっほほっほー!

厚樹:うるさいぞお前。

秋:朝からきもい声出すなよ。のど引き裂くぞ?


又二郎:ノノノ、朝から怖い事言わないの。

秋:はいはい、で。何でご機嫌な訳?


又二郎:いやーねぇ、この小説書き始めてから早起きの習慣が出来ちゃってさぁ・・・

厚樹:確かにな。毎日七時半に更新してるもんな。


又二郎:そうさ、それで朝の素晴らしさが解ってきたというかさぁ・・・

秋:何を今更?

厚樹:あ、それよりお前書き貯めはどうした?


又二郎:ふ、それなら心配無いぜ。昨日頑張ってなんとか三話先まで書いておいた!!

秋:おぉ!やるな馬鹿野郎!


厚樹:って事でまた明日会おう!

秋:評価してくれた人ありがとう!!!!!!

又二郎:てんきゅぅううううううううう!!!

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