一話、僕とあいつは非モテ組!?
どうぞ、末永く見守ってやってください!
「えっと、僕はコーヒーで……厚樹は何がいい?」
目の前でメニュー表とにらめっこ中の 西山厚樹 に声をかける。
「そうだな。ハワイア○ダンサーとか言ってもいいか?」
「いやそんなメニュー無いから。てか関西人カップルなめちゃ駄目だよ」
「そうか? じゃあコーラとオムそばでいいや。店員さん、コーラとオムそばね」
店員を呼び付けてからメニューを決めるという最低な客に対しても笑顔を崩さなかったこの店員さんは只者ではないのだろう。
……まぁ僕達この店の常連だから慣れてるんだろうね、多分だけど。
「かしこまりました、コーヒーとコーラとオムそばですね。少々お待ちくださいお客様」
一人感心している間に店員さんはにこやか営業スマイルのまま店の厨房へと消えていった。
「なぁ秋?」
店員さんのひっこんでいった厨房を見つめながら、厚樹が口を開く。
「何さ?」
「いつも思うんだけどよ、ファミレスとかで何か注文した後の時間ってすっげー長いよな?」
「いや誰だってそうでしょ」
「だよなぁ……なあ、これってカップ麺にお湯入れた後の3分間がすっげー長く感じるのと同じ原理だと思わねぇ?」
「……思わん」
だってカップ麺は3分だし。
厚樹は「ノリの悪い親友を持っちまったなぁ」と文句をたれつつ、厨房から出てきた先程の店員さんを目で追いかける。
……美人さんに目がないやつだな、確かにあの店員さん綺麗だけど。
「んで結局のとこ何が言いたい訳?」
「いやさ、暇なんだよ。カップ麺を待つあの時間より今の俺は暇なの。暇の現在進行形」
『暇ing?』
謎の単語が頭に浮かぶ。
「だから何か暇をつぶせる事無いのかーって思ったわけよ」
「そんなことか……んー面白い話ねぇ」
顎に指を当て少し考えた結果出た答えは、
「……一分間の深イイはな」
「いやいやそれは遠慮しておく。後が怖いから」
全部言い終わる前にヤツの野太い声に止められてしまう。
失礼なヤツだ。昨日TVで見た感動できる話を聞かせてやろうと思ったのに。
「文句言うなら聞くな! そっちこそチャラ男お得意の爆笑トーキングでもやればいいのに。十八番だろ?」
「ふっふっふ。そのフリから場を沸かすのはかなり難しいのだぜメーン?」
逆に要求すると厚樹は簡単に折れる。
チャラ男なんて所詮そんなものだった。
「あーぁ、彼女が出来たーとか好きな子が出来たーとか。そーゆー話なら一発で盛り上がれると思うけどなー? ね、厚樹?」
「お前な。んなバラ色なお話が出来る状況なら男二人でファミレスなんて来ねぇよ」
『彼女』という僕達にとって無縁な単語が出てきて気を悪くしたのか、厚樹は「美人でイカした彼女欲しいなー」と呟きながら窓の外に目をやった。
「まぁそれもそうだよねー」
別に『彼女がいないこと』が苦痛でない僕は、生返事を一つ返すと再びメニュー表を開いたのであった。
――――――――この物語は……
女の子に対して超がつくほど鈍感な女顔野郎と!
超がつくほど理想が高すぎて彼女が全く作れないイケメンチャラ男の二人組が送る! 青春超ご都合主義ラブコメディーであり!
ラブコメや多少の非現実的な表現を嫌う人は、この先は読まない方がよろしいかと思われます! by作者
主人公の名前は 真鍋秋。
そのルックスはどこへお嫁に出しても恥ずかしくない程の女顔。
彼の栗色で長めの髪。栗色の大きな瞳は更に美少女っぷりを引き立てている。
本人は自分の女顔にかなりコンプレックスを抱いているのだが、そのルックスのお陰で男女共に人気があるという事実には全く気付いていない。
性格は超鈍感体質。その鈍感さはラブコメならではといわんばかり。
異性からのラブレターを果たし状かと勘違いする事もしばしば、女子からの猛アタックを受けても全く気付けない。
その鈍感さゆえに恋の実らなかった女子も多いとか多くないとか。
恋愛面においては残念な『彼』。しかしやる時はバシっとキメる男前な一面もあったりなかったり。
そして秋の幼馴染であり親友のチャラ男。彼の名前は 西山厚樹。
茶髪のロン毛、目つきは鋭い。そんな根っからのヤンキー系男子の厚樹は、人当たりが良く、人気があり、背は高い。という三拍子揃った完璧なイケメンだ。
当然告白なんて腐るほどに経験済みだが全て切り捨てている。
理由は贅沢なことに『俺様に合う女じゃないから無理無理!』という信じられない理由だった。顔がいい分、理想も高いらしい。彼女が出来ないのも当然である。
それでは。
そんな決して似つかない凹凸コンビの日常『非モテ組の日常』の始まり始まり。
「なんだ? 秋も何か食うのか?」
再びメニュー表を開く僕を見て厚樹が外の風景から視線を戻した。
「今思ったんだけどさ。お前がオムそば食ってる間、僕がコーヒー一杯で過ごすのはおかしいと思って」
それこそ永遠のように長く感じるよ。もぉカップ麺とかそんなレベルじゃないよ?
「だったらさっき頼めばよかったのに。understand?」
ごもっともだが、むかつくから横文字使うなっての。
そんなこんなでメニュー表を適当に捲っていくと『シェフ一押しの本格ハンバーグ』に目が留まる。
……これにしようかな? いやしかし厚樹の手前ハンバーグなんて頼んだら『ガキだ、ガキだ!』と馬鹿にされるからなぁ。いやハンバーグは悪くないんだけどね? 悪いのは脳内ガキンチョな厚樹だよ?
仕方ない、ハンバーグは諦めるか。あぁ食べたかったよ。シェフ一押し。
ハンバーグを諦め落胆する僕の頭をにやつきながらポンポンと叩く厚樹。
「まぁ何でもいいけどさぁ……とりあえず、さっき頼んだやつ来てるからな?」
「え、嘘?」
慌ててメニュー表から顔を上げると、ほかほかと湯気を上げながらコーヒーとオムそば。そしてキンキンに冷えたコーラが仲良く並んでテーブルに鎮座していた。
「早!? そんな馬鹿なっ!」
「俺はもう食うけど何も頼まないのか秋? ……ぶくくっ、俺的にはこの『シェフ一押しの本格ハンバーグ』なんておススメだぞぅー? ……くははっ、腹がっ!!」
言いながら腹を押さえて堪える厚樹。
その姿が、普通に笑われるよりも数倍イラつくのだが。
「笑ってんじゃ……ねーよ!!」
「―――ぐふおぉっ!?」
とりあえず、メニュー表押し付けてくる馬鹿の顔面を殴っておいた。
「はぁ……」
……コーヒーでも、いただくか。
次回、次もファミレスで過ごします!
秋:始まったね・・・
厚樹:始まったな・・・
秋:いつまで続くかな?
厚樹:そーゆーのは作者に聞いてみよう。おーい!又二郎!
秋:・・・。
厚樹:・・・。
秋:・・・来ないじゃん。
厚樹:来ないな。
又二郎:いや!俺はここにいるぞ!
秋:うおぉ!来たよ!
厚樹:まさか、ホントに来るとはな・・・
又二郎:お前等!この小説がいつまで続くのか、と言ったな!!
秋:どうせ飽きたらほったらかすんでしょ?
厚樹:ひとつ連載が完結したからって調子乗んなよ?
又二郎:フ、甘いぜ君達・・・
秋:何?
又二郎:今回には秘策があるんだよ!!
厚樹:やめろって、どうせあるとか言って何も無いんだろ?
又二郎:秘策って言うのはなぁ・・・っ
秋:・・・秘策って言うのは?
又二郎:・・・次回に続く!!!!
秋:うっざ!?
厚樹:ウルァ!
ごすっ
又二郎:う゛っ!
ばたり。
厚樹:作者は腹痛だそうだ・・・
秋:それじゃ、また次回!!