第4話 非現実世界の日常「うちのパーティー、ヒーラー募集中です!」
中級の森、第2区リッカの森。
深く深い森、樹海とも呼べる、この森で、
本来なら静かな所、
そこに、騒ぐ者たちがいた。
そう、
鉄馬のポンコツ達である。
「いまさら勝手だろ!」
緑頭の少年は騒ぎ、
「そうよ、無視していいのよ、クララ、、」
と、銀髪美少女かっこ鬼も騒ぐ、
クララをクビにした、元パーティーからの、
救援要請メールが、来た為の騒ぎである。
クララ自身も迷っていた。
助けに行きたいけど、行った所で、
役には立たないだろうし、
クロやまっちゃは反対だろうし、
新しい仲間と、前の仲間との間で、
彼女は揺れていた。
「クララ、君はどうしたいんだい?
正直なところを言ってくれ。」
突然らしくもないガガが尋ねた。
「私は、助けたい、、、けど、、行きづらい、、」
「じゃあ行こう!
後の事は、後で考えればいい!
助けを求める者がいれば助ける!
それって、
当たり前の事だよね、
それに、人道的だよね。」
「、、当たり前、、の事、、ですか、、。」
「あぁあ、ほんとムカつく!
ガガの分際で、、後でお仕置き確定ね。」
「えっ、えぇぇぇ〜!」
「まぁ、ガガさんが、そう言うのであれば。」
クロとまっちゃも、
救援に向かうのに同意した。
タカは、初めから行く気だったので、
黙々と準備を進めていた。
「さあクララさん行くよ。
まず、
詳しい情報を、聞き出してくれ。
今の状況、そして、場所。」
クララは頷き、ボイスチャットを開いた。
「カナメ!聞こえてる?!
何があったの?!
返事して!!」
カナメは、パーティーリーダーで、ニンジャ、
他に、ディフェンダーに、シールドナイトのマモル、
そして、アタッカーで、サムライのケンの3人が、
このパーティーのメンバーであった。
「、、クララか?、、すまない、やられた、騙された、」
「そんなのいいから!やられた?死んだの?!」
「このままじゃ、そうなるかな、、」
「カナメ状況教えて、今から行くから、場所も、、。」
「いいんだ、クララ1人来ても、もうどうにもならない、、」
「私1人じゃない!
今のパーティーの人達も一緒に行く!
だから、ちゃんと教えて!」
「、、、わかった、、
俺達は、上級ダンジョンへの道の遺跡の、
ラスボスの間にいて、
何故か、異界のガーディアンLV58と戦っている、、。
それと、まだこっちに気付いてない、
黒炎龍LV60が、退路を塞いでいる。」
「わかったわ!なんとか持ち堪えて!」
通信を切ったクララは、
先程とは打って変わって弱気に戻った。
「ど、ど、ど、どうしよう、、
今から、あのダンジョンに、、」
「間に合わないかもね、
ても、
どうにかなるんでしょ?ガガ!
ならなかったらお仕置きよ。」
ガガの顔色が青くなったが、
注目の中作戦を話し始めた。
「今から、このまま進んでも、
絶対に間に合わない。
なので、
逆ルートで向かおう。
つまり、
俺のフィールドジャンプで、
上級ダンジョンの始まりの広場に飛び、
上級ダンジョンへの道の遺跡の、
出口から突入して行くルートだ。」
「そうね、それしかなさそうね。」
「そんな事できるんですか、、、。」
不安そうなクララに、
ガガは、紙の束を手渡し励まし?
の、
言葉をかける。
「なんくるないさ。」
、、、何故?、、沖縄、、
そうこうしている間に、準備は終わり、
急ぎ出発となった。
「フィールドジャンプ!」
一行は、上級ダンジョン始まりの広場に飛び出した。
「皆んな!上級ダンジョン入り口に!
まっちゃ!
そのまま突入!
クロはクララさんを背負って!」
「はぁ?なんで私がそんな事?」
「クララさんの逃げ足LVじゃ、
途中で息切れするから!」
、、逃げ足LV?、、、
、あっ、本当だ、、いつのまにか、、
、、逃げ足LV1だ、、、
「じゃあ、クララさん、背負うね。」
クロがクララを背負うと、
上級の森に突入した、
まっちゃが、戻って来た。
モンスター、
脅威のグレートウルフLV70の群れを、
引き連れて、。
「皆んな!
それ!
逃げろ〜!」
その時、スキル逃げ足が発動した。
クララ以外全員LV10を超えているので、
通常より、走力、スタミナ、が、20倍に上がり、
スキル、ウルトラアクセルの3倍を超えた、
目にも止まらない速度となり、
一気に、上級ダンジョンへの道の遺跡に突入した。
「皆んな!
そのまま走り切るぞ!」
「おおー!」
「よっしゃー!」
「わかってるわよ!そんなこと!」
気合いをいれた彼らは、
わずか、20秒足らずで、
目的地に着き、
そのままクロが、出口の大門を蹴破った。
人は時として、衝撃的な瞬間、
まるで時が止まったような、
あるいは、時の流れが、
ゆっくり進む様な感覚になると言うが、
まさに、
この時のクララがそうであった。
クロに背負われたクララの目の前の壁、
正確には大門だが、
砕け散り、目の前に、まばゆい黄金の光が広がりが、
輝く破片が、ゆっくりと流れて行き、
今までの閉じ籠った、彼女の心の壁を、
打ち砕いてくれたかの様な、
クララの価値観が、
一変してしまう様な衝撃を受けた事が、
彼女の心の中で起きたのだろう。
「、、綺麗、、、」
救出劇の最中に、
そう思うクララの心の中で、
何かが変わり、余裕が出来た為の言葉である。
そして、目の前で起きた光景も、
彼女を変えるには、十分なものだった。
それは、
クロの蹴破った空間を通り抜けた3人が、
加速時発動型スキルを、
異界のガーディアンLV58の背中に、
次々とぶつける様だった。
まずガガが、
「バーンタックル!」
炎を纏い敵に体当たりする技で、
カウンターのリスクはあるものの、
炎を相手に延焼させ、
効果の高い、防御力低下と行動遅延が付与される。
おまけに継続炎症ダメージ付き。
次にタカが、
「弾岩猛進撃!」
まるで岩の塊が、砲弾の様に飛んで、
相手に激突した。
体当たり斬りだ。
異界の守護像は、大勢を崩され膝を着き、
そこに、大きな斬撃が当たる、
相手を麻痺させる効果と、大きな防御力低下を起こす。
そして、まっちゃが、
「ソニックパナトリー!」
加速時発動片手直剣スキルで、
猛烈な突きで、
背中から胸を貫き通った。
当然、
ガガとタカの、防御力低下特大✖️2のおかげで、
成功しているのだが。
モンスターの胸から飛び出して来たまっちゃは、
そのまま、カナメ達に合流した。
「な、なんだ?、、、」
「救援に来たよ!カナメさんだろ?」
その緑の少年が、自分たちよりもLVが低いのに驚いた。
動きが止まっていた異界の守護像の怒りの矛先が、
緑の少年に決まり、
再び攻撃を開始したが、
「ヘイヘイ!どうしたどうした!
そんな遅い攻撃、俺には当たらないぜ〜!」
その攻撃は、避けられ続け、
そのおかげで、
カナメ達は、一息つく事が出来た。
「カナメー!」
クララは、3人に、
つまりは、カナメ、ケン、マモルに、
ガガから貰った紙の束、つまり、
呪符を投げつけ、
それは、
3人に3枚づつ飛んで行き、
胸に貼り付いて、
発動した。
HP全回復、防御力上昇特大、攻撃力上昇特大、
の効果が、与えられた。
「カナメー!攻撃開始!」
「お、おう、2人とも行くぜ!」
「OK!」
「了解!」
クララに尻を叩かれる形で、
3人は攻撃に参加した。
守護像の正面から、まっちゃ、カナメ、ケン、マモル、
そして、後背から、ガガ、クララ、
クロは周囲を走りながら、距離を取り弓矢で攻撃して、
タカは密着して、所構わず斬りまくっている。
異界のガーディアンLV58を圧倒している、
その様子を見ている、
遺跡の頂上に、金髪美女がいた。
「まぁだ生きていたんだ、あの坊や達。
でも困るのよね、死んでくれないと。」
全身に、タリスマンのアクセサリーを身に付けた、
その美女は、
その一つを引きちぎり、黒炎龍に投げつけ、
それは龍の体に貼り付き、
また、
再びタリスマンを引きちぎり、
今度は、
異界のガーディアンLV58に向かって投げた。
それは、どこまでも飛んで行き、
ついに守護像に貼り付いた。
すると、黒炎龍は、自身が攻撃されてると錯覚し、
カナメ達に向かって行った。
「おいおいおい、マジかよ!」
初めにマモルが気付いた。
「黒炎龍が来たぞー!」
カナメが警報を出した瞬間、
猪突猛進は、弾丸となった。
「加速!
弾岩猛進撃!」
突進して来た黒炎龍にぶち当たり、
タカは仰け反ったが、
黒炎龍も、また、仰け反った。
そして、
麻痺効果が発動し、
その龍は、動きを止めた。
クララは叫ぶ。
「今のうち、ガーディアンに攻撃!」
カナメは我に返り、
指示を出し始めた。
その様子を見て、クロは、和やかに笑って、
攻撃の回転を上げた。
総攻撃で、
なんとか異界のガーディアンLV58を倒し、
今度は、
黒炎龍に向かった。
タカが足止めしていた、
麻痺効果の切れた黒炎龍LV60と、
ボロボロのタカの元に、前衛は集まり、
離れた所から、クララが呪符を投げ、
タカに全回復と攻撃力防御力上昇特大をかけて、
角度の違う場所に、クロは射撃位置を構え、
ガガは、後衛のクララの近くで、詠唱を始めた。
「特大のを放つから、皆んな時間を稼いでくれ!」
ガガの呼びかけに皆んな応えた。
「了解!」
全員の持てる力を注いだが、
やがて、防御力低下特大の効果も切れ、
攻撃が通らなくなった。
「まだなの?!ガガ!」
クロは叫び、
「やばいよ、ガガさん!
あっちの方が、特大の撃って来るよ!」
まっちゃも泣き叫ぶ。
「しかも、広範囲即死効果付きのやつだ!」
そして、タカも吠えた。
「もう少し、もう少し、、、
ごめん、、間に合わない、、、、」
ガガがそう呟いた時、
遥か遠方から、光を纏った矢が飛んで来て、
龍の下顎を貫いた為、
黒炎龍は、たまらず仰け反った。
「間に合った、、
行くぜ!我が名を冠した最強呪文!
ブラッディーホーク!!」
ガガ、オリジナル魔法が発動し、
黒炎龍と同等の巨大な魔法陣の中から、
巨大な炎を纏いし真紅の鷹が現れた。
ただ一点、尾だけが孔雀の様に長かった。
黒炎龍とブラッディーホークの戦いは、
怪獣映画さながら、轟音鳴り響く、
鷹の長い尾が、龍の体に巻き付き、
その自由を奪って行き、
鷹の羽ばたきは、超熱風で龍の鱗を焦がし、
鷹の爪は、龍の肉を引き裂いた。
やがて、
黒炎龍LV60は、
見るも無惨な姿と成り果て死滅した。
その様子を確認した金髪美女は、
遺跡の中に姿を消した。
そんな事も知らず、
パーティー、一同は、浮かれていた。
「見たか!全属性を相乗効果で組み上げた、
我が最強呪文の威力を、
まぁ、呪文構築に時間が、
かかり過ぎるのが欠点だけど。」
「まったくよ!死ぬかと思ったわ!」
クロは言い、ガガ本人も同意する。
「わっはっはっ!俺も死ぬかと思った。」
クララは、ガガに疑問をぶつけた。
「あの、さっきの矢は、
一体何処から飛んで来たのでしょう。」
「ああ、あれ10キロ先の山頂から、
うちのギルマスだよ。」
「は?どうしてわかるんですか?」
「スキル千里眼と魔力感知の組合せで作った、
超感知で、丸見えだよ。」
、、、ちょと、、この人、、目が悪かったのでは?、、、、
遠くの山頂から、その様子を見る人物は呟く。
「ガガの奴、、相変わらず、面白い育成してるな。」
「何、シン、知り合い?」
「ああ、ナナ、うちの教育係さ。」
「なあ、お二人さん、見えない俺にも状況教えてくれ。」
「ああ、カイン。道中話すさ、2人よりレベルの低い、
先輩達の話を、、せっかくウチに来てくれたのだから。」
そうして、山頂の3人は移動を始めた。
3人を見送っていたガガ以外、
談笑に花を咲かせていた。
「、、でも、ここのボスが、
あんなに強いなんて、知りませんでした。」
カナメは、疲れた顔で呟き、タカは笑顔で答える。
「いや、あれは、通常のボスじゃないよ。」
「えっ?」
戻ったガガは、その話しに付け加える。
「異界のガーディアンは、
黒炎龍とセットで、
遺跡の秘宝が持ち出された時に出現する、
特別なモンスターだよ。」
「俺たちは、そんな物、取ってない、、あっ!」
「秘宝を完全に、プレーヤーの物にするには、
パーティーが半壊するか、
異界のガーディアンと黒炎龍を倒せば、
条件クリアで持ち出せる様になる。」
「、、あの女、、秘宝狙いで、、
、俺たちを利用したわけか、、。」
カナメは、サロメに騙された事に、
パーティーリーダーとして、責任を感じていた。
「カナメ!下を向くな!私達は、良い経験をしただけよ。」
「クララ、、、お前、少し変わった?、、」
「そりゃ、、色々、あったから、変わるわよ。
、、と、言う訳で、ガガさん、
私をパーティーから外して。」
ガガは目を丸くして、応じ、
クララは、カナメのパーティーに戻った。
上級ダンジョンへの道を登るクララに、
カナメは聞いてみた。
「あの、さっきのパーティーは、どうだった?」
「、、そうね、皆んな素敵な人達だったわ。」
「、、そうか、、俺たちに愛想尽かしたなら、
あっちのパーティーに行っても良いんだぜ。」
クララは振り返り、満面の笑みで、
こう答えた。
「絶対に嫌!私の居場所はココだもの!
それに、あんなに走るのは二度と御免だわ。」
、、、素敵な人達だったけど、、、、、
一方その頃、
クララにフラれたパーティーは、
フィールドジャンプで、始まりの町アルスに戻っていた。
疲れ果てたパーティーは、
頭にタンコブの塔を建てたガガを筆頭に、
ボロボロのタカ、疲れ果てた緑頭、
ぷんぷん鬼少女が、商店街に一列並び、
いつもの光景を始める。
「いい、やるわよ!
やるのよ! せ〜の!」
「うちのパーティー、ヒーラー募集中で〜す!」
「ぷぶっ、何あれ、」
「鉄馬のポンコツ、いつも通りだな、、、」
仮想現実のゲームの世界、いつも通りの光景が広がる。
悪人を演じる者、ポンコツを演じる者、
美しい世界を楽しむ者、戦いを楽しむ者、
記録に挑み続ける者、
皆んな、非現実世界の日常、を楽しんでいる。
完




