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水天の旅程  作者: 氷花
2/2

Tatarian aster

          ーて」


         「ーきて


        「起きて。ナギ」


     誰かが僕の名前を呼んでいる。


聞き覚えのあるようでないような声だ。だけど不思議な事に嫌悪感は全くと言っていいほどない優しい声。


目が覚めると、視界に夜空が広がっていた。


辺りを見渡すとベンチや線路、無人の改札口がある。


       (...無人駅?)


背後に気配を感じた僕は。野生の獣のような反応速度で顔を後ろに向けた。


ワンピースを着た小柄な女の子が立っていた。

風に揺れるロングピアス。そして首にかけているシンプルなネックレスが質素ではあるが美しく輝いている。


       「どう?似合ってる?」 

少女は突然、僕に顔を近づけて質問した。


   「うん。似合ってるよ。ネックレスは特に」

いきなりの質問で若干焦った僕は反射的に答えた。


       「そう...ありがと」

少女は微笑んだ後、少し悲しい顔をして返した。

 


 「えっと...君は?どうして僕はここに..」

髪を褒めるべきだったのだろうか。そんな後悔の念が一瞬頭をよぎった。気まずくなった僕は話を切り替える。

      

「私はトーカ。ここは死者の国、いきなりで信じられないと思うけど、貴方は死んでしまったの」

彼女の言葉に僕は耳を疑った。


「貴方の記憶は訳あって私が貰ったの。理由は話せないけど...」

一気に話についていけなくなった。




  「僕はこれからどうすればいい...?」

混乱した頭の中で今最も必要な言葉を絞り出した。


    「塔を目指して…貴方なら大丈夫...」

星の輝く夜空を見ながら彼女は呟いた。


      「ねえ、今夜は月がー」

 彼女を遮るように風が吹き、言葉は宙に舞った。


風で閉じた瞼を再び開けるとトーカの姿はなかった。


夜空は青空へと模様が変わり、ホームを出ると美しい世界が広がっていた。









     






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