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最果ての楽園
ミルクをこぼしたように広がる星々
海に咲く紫苑の花
鶴は高く鳴き、雲は舞う
どこまでも行こう。この列車に乗って。
夏はまだ始まったばかりなのだから。
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果てなき銀河を旅する銀河鉄道。
新たな始まりを求める者達を乗せて。
彼等を運ぶ最後の方舟はとある星へと向かっていた。
男は1人、車内を移動しながら窓に目を向けた。
それはこの世で最も美しい景色だった。
彼が愛した世界。
最後まで探し続け、何もかも取りこぼした男の果たされなかった思いそのものである。
彼は暫く足を進めると、とある青年の前に止まった。
ーその青年を男は知っている。
ー空に憧れた愚かな優しい青年を。
寝ている青年の前に止まった男は優しく語りかけた。
「ーさあ、起きるんだ凪君」
「君が描いた物語を描き終える日が。いや、描き始める時が来た」
青い花弁に導かれた列車は終点へと向かっていた。