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《童話》うさぎさんと森のとしょかん

ネコ司書さんのとしょかんこうざ

作者: K・t

童話「うさぎさん」シリーズの一作です。

 ここは町のとしょかん。

 木でできた大きなカウンターや本だながずらりと並んでいて、とてもあたたかい場所ばしょです。


 森で小さなとしょかんをひらいている白い体のうさぎさんは、この町のとしょかんへ通うようになり、いつも色々なことを教わっていました。


 ✽ ✽ ✽


味見あじみ読書どくしょを知っていたのはすごいわね」


 森のとしょかんでの出来事を話すと、この「町のとしょかん」にさそってくれた司書のネコさんが言いました。


 もう、ふたりはすっかり仲良しです。今も、としょかんのおくにある書庫しょこで本のせいりをしながら、たのしくおしゃべりをしていました。

 もちろん、声が大きくならないように気をつけながらです。


「たまたま、よんだ本にかいてあったんです」


 うさぎさんは本が大好きです。

 本屋さんもとしょかんも好きで、この二つが出てくるおはなしや、画集がしゅうも良くよんでいました。その中に「あじみどくしょ」のことも書かれていたのです。


「みんなですることもあるんですよね?」

「そうね」


 うさぎさんがきくと、ネコさんはうなづいて、くわしく教えてくれます。

 沢山たくさんのひとを集めて、何さつかの本をちょっとずつよんでもらうのだそうです。


「ちょっとずつよむから、『あじみ』なんですね」

「えぇ、お料理りょうりみたいでおもしろいでしょ」


 ネコさんが言い、うさぎさんも笑顔になりました。


 ✽ ✽ ✽


 としょかんで一ばん大事なおしごとは、本をかしだすことです。うさぎさんも、カウンターでときどきそのお手伝いをします。


 りるひとはこれから本をよむワクワクしたきもちで、返すひとは「よんで良かった」というきもちで、みんなニコニコしています。


 手つづきをしてあげると、だれもが「ありがとう」とお礼を言ってくれるので、とてもうれしくなります。

 うさぎさんはこのおしごとも大好きでした。


「この本、良かったらとしょかんにどうぞ」


 こんなふうに、じぶんの本を持ってきてくれるひともいます。そのたびに、魔女さんが画集をくれたときのことを思い出しました。



「魔女さんの画集なんてすてきね!」


 ネコさんに紹介すると、目をかがやかせて見いり、大好きになってくれました。

 そして、町のとしょかんでも評判ひょうばんになり、やがてはコーナーが作られるまでになったのです。


 魔女さんはあたらしい絵をかこうと、毎日ふんとうしています。うさぎさんも、画集のだい二だんを心まちにしているひとりでした。



「ありがとうございます。だいじにしますね」


 そんなことを思いながら、本をくれたひとに心をこめてお礼を言います。それはうれしいからだけではなくて、ネコさんが教えてくれたことがあるからです。


「としょかんはみんなで作るものなのよ」


 買ったりして集めた本だけが、としょかんを作っているのではありません。りようするみんなが作っていくものなのだと、ネコさんは言っていたのです。


 ✽ ✽ ✽


 町のとしょかんでは、イベントもおこなわれています。

 ネコさんたちによる絵本のよみきかせや、本好きが集まるどくしょかいなどです。


 子どもの本コーナーの小さくてかわいらしいテーブルとイスを直しながら、ふたりはつぎのイベントについてそうだんしていました。


「うさぎさんも、したことがあるのよね?」

「はい」


 クマの子どもたちがやってくるようになってから、うさぎさんも森のとしょかんんで絵本のよみきかせを良くするようになりました。


 子どもはもちろん、大人もかんそうを言いあって、そのまま「ミニどくしょかい」になることもしばしばです。


「おなじお話をよんでいるのに、色々なかんそうが出てきて、いつもふしぎなんです」

「そこがたのしいところね」


 うさぎさんが目をまんまるにして言うと、ネコさんもふふっと笑いました。それから、こんなアドバイスもしてくれました。


「よんであげるのもいいけれど、子どもによんでもらうのもたのしいのよ?」

「子どもにですか?」


 小さな子どもたちが絵本をよんでくれるところを想像そうぞうして、うさぎさんはワクワクしました。


 上手じょうずには出来ないでしょう。でも、きっと一生けんめいやってくれるにちがいありません。


「わかりました、やってみます。つぎの会がたのしみです」

「がんばってね」


 ✽ ✽ ✽


 町のとしょかんは大きなとしょかんです。うさぎさんのひらく森のとしょかんにはない本が、ここにはいっぱいあります。

 そこで、来るたびに本を何さつも何さつも借りてかえっていました。


「こんなにたくさん、良いのですか?」


 さいしょは、うさぎさんもおどろきました。ふつうはそんなに借りられないからです。

 この質問しつもんにも、ネコさんは笑ってこたえてくれました。


「としょかん同士だからよ。相互貸借そうごたいしゃくというの。どんどん利用りようしてね」


 これはとくべつな貸し借りのかたちで、きちんと「としょかんだ」とみとめられていないと出来ないそうです。

 うさぎさんはそれを聞いて、あたたかい気持ちでむねがいっぱいになりました。


「ありがとうございます。みんなよろこびます」


 ✽ ✽ ✽


 さぁ、日がくれてきました。森のおうちにかえるじかんです。

 今日も沢山のひととふれ合い、教わりました。その一つひとつをゆっくりと思い出しながら、町のとしょかんをあとにします。


 あたまの中はやりたいことでいっぱい。今にもあふれ出しそうです。


 うさぎさんは借りた本がふくろからこぼれないように気をつけながら、スキップでお家にかえったのでした。



 《おわり》

お読みくださってありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言]  読ませていただきました。 うさぎさんシリーズですね。 図書館は本の貸し借りだけではなく、お子さまたちへの絵本や紙芝居の読み聞かせや、書庫整理、本の修復、新刊の紹介、季節やイベントごとのコ…
[良い点] “図書館はみんなで作るもの“ その言葉に嬉しくなりました! みんなの力を合わせて暖かな図書館素敵ですね。
[良い点] ほのぼのしました! それだけでなく「味見読書」という新しい発想をもらいました! 味見して、気に入ったらじっくり読む、本が苦手な子どもに教えてあげたいなと思いました! シリーズの他の作品も…
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