お題:ゴリラ
カチッと秒針の動く音が聞こえた。
俺は目覚ましがなる前にボタンを止めた。
「ふぅー……今日も起きれた」
階段を誰かか駆け上がってくる音が聞こえる。
誰かと言うのは知ってるが考えたくもない。
ガチャとドアノブが回る音が聞こえると途中で止まる、その次に鍵が壊される音も続けて聞こえた。
扉が破壊されると、幼馴染の林檎リラへ向き直る。
高身長のリラは高校の制服を着て俺を起しに来たのだ。
「おっはよー純くん! …………あれ? なんで怒ってるの?」
「一応言ったよな。リラ、目覚ましで起きない時は起してくれって」
「うん。だから起しに来たけど」
「…………ゴリラ女」
バキバキと音が鳴る。
リラの手の中にあったドアノブが無慈悲にも変形していく。
「ごめん、聞こえなかった」
「…………いや、リラはいつも可愛いな、こんな幼馴染がいてシアワセダヨ……」
「もう、純ったら」
「わっ! やめろ暴れるなっ」
リラを部屋から追い出して、俺は着替えを始める。
幼稚園からの付き合いで昔は可愛かったのにと……それがなんだ、あっという間に身長は追い抜くし、俺なんて百四十ちょっとしかないんだぞ……。
知ってるか?
俺の通学時のあだ名。
ゴリラに捕らわれた小人なんだぞ……。
クラスメイトの馬鹿どもは、リラと結婚しちゃいなよーというが、ゴリラだぞ。
顔はまぁそこそこいい。
胸もまぁ……いやでかい。
匂いも、そんな悪くない……。
何所が駄目だというと、その怪力と身長だ。後頭。
身長差五十cmはある。
そもそも俺が好きなのは、もっとおしとやかで、可愛い女性であってガサツは好みだじゃないクラスの姫と呼ばれている――――。
「純くーん、冷蔵庫の扉こわれちゃったー!」
「馬鹿っ! まて今行く」
妄想を打ち切って直にしたに降りていくと、累計八台目の冷蔵庫だったものが、そこにはあった。
◇◇◇
「っとにゴメンってばー」
「あーもうわかったって、周りが見るから騒ぐな電車が来る」
冷蔵庫はまた買えばいい、いや隣の家の林檎家から壊れる度に弁償してくれるから経済的には困らないんだけど。
なんだったら俺の家には、リラが壊したものリストなるものが張られ、それを週一で林檎家へ送る手配になっている。
毎週新品に囲まれて暮らしている、なんだろうモルモットが何かか。
電車に乗り込み俺が窓の側へいくと、当然のようにリラが俺を守るように壁を作る。
こういう所が嫌いだ。
別に守ってもらわなくても俺は男だぞ。
これがクラスで有名な姫ちゃんなら……ってリラの様子がおかしい。
「腹でも痛いのか?」
「ん……なんでもない」
「なんでもないって……顔赤いし」
俺は気づいてはいけないのにきづいた。
リラの尻を触ってる手が見えた、その手はリラのスカートの裾へ伸びていた。
直に腕を掴む。
「おい、俺の女に何する! リラ許す、この腕を折れ!」
「えっええ!? でも暴力は駄目だって」
「馬鹿、お前が困ってるんだ」
「う、うん」
◇◇◇
犯人は全治三ヶ月。
ゴリラ女に腕を折られたと叫んでいたけどざまあみろ。
「純くーん、何食べたい!?」
「何もいらない!」
俺は病院のベッドで天井をみている。
なぜかって? 俺の女といったのを勘違いしたミラが俺に抱きついたからだ。
犯人より酷い全身骨折で入院中
だからゴリラ女は嫌いだ。