第八話 盗賊狩り
拙い文章ですが、よろしくお願いします!
それでは、お楽しみ下さいませ!
盗賊達は慣れた動きで俺を囲むように位置取る。武器を構えることなく、にやにやしながら俺を品定めするように見つめている。
持っている武器は全員短剣。手入れもされていないようなお粗末なものだった。盗賊が持っているものなのだから、盗品とみて間違いないだろうが、リーダーと思われる盗賊は、大きな斧を背中に担いでいる。また、ほんのわずかだが魔力を帯びているのが分かる。何かしらの付与がされているのだろう。
リーダーまでの道のりはその子分達が阻んでくる。四方八方囲まれたこれで逃げ場はなくなった。もちろん、最初から逃げるつもりなんてないが。
「もう逃げられねぇぞ!」
「ちょっとは楽しませろよ!?」
「びびって声もでねーか!?」
盗賊達は下卑た笑いとともに俺との距離をじりじりと縮めてくる。彼らの目には俺は狩人の住処に足を踏み入れた鴨のように映っているのだろう。
だが、狩られるのは奴らの方だ。
一人対複数人で戦闘する際、当たり前だが複数人と同時に刃を交えるのは得策ではない。囲まれる前に一対一の戦闘に持ち込むべきである。
そのためには、魔法や矢による遠隔攻撃。もしくは気配を悟られずに人を殺す暗殺術などが必要だろう。
だが、まあ。それは相手が自分と同等以上の力を持っている時に限る。
「……いくぞ」
こんな低レベルの盗賊ごとき真っ正面から倒してみせる。囲んだ所で俺に敵うはずない。
「おい!おい!やる気かよ!」
「頭がおかしいんじゃねぇのか〜」
「お仲間助けにきたんでちゅか〜?」
短答を片手に大口開けて笑う。その耳障りな笑い声はまさに盗賊という感じだ。別に今更ムカついたりする訳でもないが、うるさいので三人くらい黙らせることにする。
右一人。左一人。後ろ一人。
山賊の頭部を躊躇なく吹き飛ばす。
切断面からは血すら出ず、綺麗に跡形も無く頭部だけが失われた。
地面に首のない死体がゆっくり転がる。
「……おいおい、エリー?」
「あは♡力入りすぎちゃった♡』
まさに瞬殺。予備動作も何もない刹那の攻撃。盗賊達が倒れた死体を見て数秒経った今も何が起きたか理解できないほどだ。
大精霊エリミエンスは風や大地を司る精霊だ。人間界の自然現象を掌握し、時に試練を与えたり、時には恵みをもたらす存在。彼女自身が『自然』そのものなのである。その力は絶大で、まさに人の手から離れた圧倒的存在。
人々が自然を神と崇めるなら、彼女は神といっても過言ではない。その常識はずれの力は容易く生物の命を刈り取った。
笑い声は静寂に変わる。さらに数秒後に静寂は悲鳴に変わる。
「おい!どうした!」
「何が!何が起きた!?」
「どんな魔法使いやがった!」
慌てふためいた盗賊共はやっと刀を構える。全身から冷や汗を垂らし、恐怖で体が震えてしまっている。それは盗賊のリーダーであっても例外ではなく、大きな口を開けたままフリーズしている。
「……お前らの運命を教えてやる。それは──」
「お、お前ら!行けっ!」
正気を取り戻したリーダーの合図と同時に一斉に四方から襲いかかってくる。俺に到達するまで2秒ほど。数はたった6人。余裕を持って反撃できる。
「──死だ」
大精霊エリミエンスと同化した俺は一時的に精霊と同等の力を行使することができる。まるで呼吸するかのように簡単に人の命を刈り取ることができる。それは風の刃。人の柔らかい首など一瞬で吹き飛ぶ。
目に見えない鋭い風の刃が首をスパッと切り取る。
首のない死体だけが地面に落ちた。
死の恐怖さえ与えない。叫び声すらあげさせない。
彼らは走馬燈を見ることもなく、静かに死を迎える。
俺はゆっくりと最後の一人に近づいていく。
この盗賊団のリーダーだ。
「た、助けてくれ……。まて、待ってくれよ。意味わからねぇ。なにを、何をして……」
俺を前にして最後の一人は土下座して地面に頭を擦り付ける。大きな斧は地面に捨てられ、巻いていたバンダナも自ら外す。降参の意思を示しているつもりなのだろうか。
さっきまで強者の雰囲気を醸し出していたのに、今ここにいるのは生にしがみつく哀れな子牛だ。
「……はぁ」
結局こうなるのか。どうやら戦意を奪ってしまったらしい。これじゃあ俺の腕試しができない。少しは骨のある相手だと思っていたのだが。
「た、助けてくれよ、な?命の代わりに金でも女でもなんでもくれてやるっ」
涙目になりながら必死に訴えかけるその哀れな盗賊の姿はまさに滑稽だった。今更助けてもらえるとでも思っているのだろうか。今まで罪のない人々を殺してきて分際でおこがましい。
「………」
まずはこの世界の情報を聞き出す。情報を全て吸い上げたあとは苦しまないよう殺してやろう。
『……はぁ?なんでこいつ、私のご主人様にタメ口なの?』
まずい──そう思った時は遅かった。
地面から黒い竜巻が巻き上がる。
「ぐぎゃぁぁぁ!?!?!?」
盗賊のリーダーはなす術なく、ただ悲鳴をあげながら身体を切り裂かれていく。
この竜巻は普通の竜巻とは違う。身体を吹き飛ばす竜巻ではなく、その逆。引き込んで身体を切り裂くのだ。
地面は円状に抉られて砂煙が舞う。空間全体が左右上下に揺さぶられているよう。森が地面が震えてその衝撃に悲鳴をあげているようだ。
四肢は千切れ、皮膚はズタズタに切り裂かれる。ド派手な血しぶきが周りの木々にまるでシャワーのように降りかかる。
エリミエンスの逆鱗に触れた残念な盗賊は死体すら残してもらえず、生き絶えた。
そこにはぽっかりと穴が空いているだけ。
結局戦闘という戦闘はできなかった。
これじゃあ今の俺の実力が測れないではないか。
「……エリー。後で説教だ」
『……そ、そんな〜』
俺はエリミエンスとの同化を解除した。
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