第四話 追放
拙い文章ですが、よろしくお願いします!
それでは、お楽しみ下さいませ!
俺を睨みつけながら一人の男子生徒が歩いてくる。
明らかな敵意を持っている。それを感知した俺はほぼ無意識に《鑑定》スキルを発動する。さきほどオタクの木村君のステータスを覗いたのもこのスキルだ。
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坂田 竜誠 17歳 男
レベル:1
称号:異世界より召喚されし勇者
適性職業:勇者
筋力:800
体力:800
耐性:800
敏捷:800
魔力:800
魔耐:800
技能:ステータス強化(全) 精神強化 勇者の一撃
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いきなり突っかかってきたのはクラスのリーダー坂田竜誠だった。そう言えばそんな名前だったなと思いつつも、じっくり彼を観察する。
サラサラの前髪に少しかかる長さの茶髪。ほどよく陽に焼けた肌と力強い瞳。180cm近くもある高身長であるが、決して細身ではなく、筋肉質で頼り甲斐のある広い背中を持っている。
(……おいおい、レベル1だよな?)
彼の整った容姿はさておき。
俺は目を疑う。
明らかに初期ステータスが高い。さきほどステータスを確認した二人の約4倍の値だ。スキルに関しても最初から三つも獲得している。どれも使いこなせば強力なものとなるだろう。
もちろん個人差があるが、この世界のレベル別のステータスの平均は大体以下のようになっている。
戦闘というものを経験したことのないレベル1の人間は全ステータス1〜3程度。スキルは相当の才能が無い限り持って産まれてこない。レベルが1あがるごとに大体ステータスは10〜13程度上昇する。レベル10になれば全ステータスは100を超えてくるだろう。
高レベルに到達すればするほど、レベルの上昇率は下がる。つまりレベルが上がりにくくなるのだ。当然ステータスも上昇しなくなり、いつか頭打ちがくる。
だから初期ステータスは高ければ高い方が得なのだが、彼ら、特に坂田竜誠に至っては反則だと思えるほど高い。
単純にこの世界の基準で考えるとレベル80程度の力があるということだ。もちろんどれだけステータスが高くても戦いの素人がその道の達人に勝負を挑んで勝つことはできないだろうが、かなり脅威だ。
レベル80と言えば王国近衛騎士団クラス。国の最高戦力集団の仲間入りができるほどだ。
「おい!なに爽夜を困らせてんだよ!後はお前だけなんだから早くステータスを教えろよ!」
胸ぐらを掴みそうな勢いで俺に詰め寄る。ここで彼に触れられたら色々困るので、俺はニ、三歩後ろに下がる。
「別に困らせてるわけじゃないんだけど……」
俺みたいな陰キャが加賀美さんと話していたことに腹を立てているのか。言いがかりに近い俺への攻撃は続く。
「ちっ、これだから陰キャは……。口答えしやがって、面倒くせぇ。早く出せよ!ステータス!」
苛立ちを露わにする彼に加勢するように男女数人が俺を囲むようにやってくる。
その中の一人の男子がにやにや笑いながら俺を指差す。
「もしかしてこいつ!クソステータスだったから恥ずかしくて見せれないんじゃないのか?」
クスクスと周りで笑いが起きる。俺を小馬鹿にしたような嫌な笑いだ。そんな中きゃはは、と騒がしい笑い方をするのは、ずっと坂田竜誠にひっついているギャル女集団だ。
「まじウケるんですけど!」
「でも、なんか納得〜!」
「ちょっとみんな可哀想でしょ〜!」
校則違反のパンツが見えるか見えなないかギリギリの長さまで折りたたんだスカートから覗く、脚。何故かボタンを開けてわざと露出させている、谷間。化粧をこれでもかと重ねたけばい顔。
このクラスには俺が苦手なタイプの人間しかいないのだろうか。
なにかとつっかかってくる彼女らに煩わしさを感じる。心の中で大きなため息をつく。
「ちょっと!今うちの胸見てたでしょっ!」
突然大声で叫んだギャルの一人は大袈裟に胸を隠して俺を睨みつける。まるで酒に焼けたようながなり声。喉がカサカサして、ひび割れたような嫌な声だ。
「うっわ!きっも!」
「これだから童貞陰キャは……!」
見てない、そう反論する間もなくすぐさま残りのギャルが俺を罵る。周りに聞こえるようにわざと大きな声で言っているのが分かる。
「ちょ!ちょっと!みんな今はそんこと言ってる場合じゃないでしょ!みんなで協力しなきゃいけないって時に!何してるの!?」
転移前にも転移後でも変わらず俺に話しかけにきてくれた加賀美さんは俺の前に立ってみんなを制止する。その表情は凛として勇敢。正義感溢れる姿に俺は感動する。
(こういうことができる人を『勇者』と呼ぶんだろうな……)
自分のステータスに刻まれた『勇者』という文字を放り捨てたい気分になる。
加賀美さんがどうして俺みたいな奴を庇うのかは分からない。単純に俺みたいな奴にも優しい良い人なのか。異世界で早速トラブルが起こることを危惧したためか。
なんにせよ、彼女が有能であることに違いない。
これから、彼女が懸念した展開になるのだから。
「……爽夜。こんな奴庇う必要ない。こいつはこのクラスにとって害悪にしかならない。今までも、これからも」
リーダーは正義を盾にした勇者のような顔つきで、ゆっくり低い声でこのクラスの総意を代弁するかのように語る。
「そうだ!そうだ!」
「竜誠の言う通りだ!」
「まじ邪魔なんだよ!」
「協調性無い奴とはやってけねぇよ!」
みんな焦立ち熱したように早口で俺を責めたてる。
「え、ちょ、みんな……?」
加賀美さんは目を大きくして口をぱくぱくさせている。何か、何か言おうとしているが、言葉が胸につっかえて出てこない様子だ。その表情は困惑と不安。
彼女は焦った様子で俺に振り返る。
「和君!待って今みんなを──」
その瞬間、彼女の小さな身体は一人の男子の胸に収まる。
彼女の手を無理やり引っ張って抱き寄せたのだ。
その男ーー坂田竜星ーーは彼女の頭を優しく撫でながら、俺を睨みつける。
「……爽夜に取り入ろうとしてもそうはいかないぞ。このゲスめ。爽夜は俺が守ってみせる」
憎悪をいっぱいにはらんだ真っ直ぐな瞳は俺を悪役だと決めつける。彼の目は正義に満ち溢れている。歪んだ正義だが、そう思わせる不思議な瞳を持っていた。
「このクラスから出ていけ!この世界で生き抜くためにはお前みたいな奴は邪魔だ!」
(……出ていけ……か。むしろ好都合だね)
俺は思わずにやりと笑う。
歯を見せない口角が上がっただけの不気味な笑み。
こんな居心地の悪いグループ。こっちから願い下げだ。
一緒にいてもなんらメリットも無いし、逆に今後の足枷になる。今までずっと一人で冒険をしてきたんだ。二周目だって一人で行くさ。
だけど、今回は。自由に。気ままに。スローに。
楽しんでいこうじゃないか。
俺は顔を上げて胸を張る。
「……分かったよ。出ていくよ」
くるっと反転して誰もいない静かな森へと歩みを進める。その歩みはいつになく軽い。
沈みゆく夕陽が大地を炎のように真っ赤に照らす。まるで俺の新たな門出を祝福しているようだった。
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