第十二話 覚悟
拙い文章ですが、よろしくお願いします!
それでは、お楽しみ下さいませ!
「どういうことですか!ベード様!」
出来事は20年前まで遡る──
ルナは胸ぐらに掴みかかる勢いで目の前のドワーフに詰め寄る。主人が帰宅予定の日から数日経った今も戻らない理由が、あまりにも衝撃的すぎたのだ。
「わ、儂にも何がなんだか分からんのじゃ!それに……このことは絶対に他言してはならんぞ。今既に国規模で箝口令が敷かれておる!」
ベードと呼ばれたドワーフは低い腰を更に低くしてヒソヒソとそう語った。
「箝口令……って!なんで!ご主人様が魔王をー」
「いかんっ!誰がどこで聴いているか分からない!儂もお前さんに伝えるので精一杯なのだ!」
額に汗を滲ませ手で私の口を抑えるようにしてそう言う彼の表情からは恐怖と焦りが読み取れた。
「分かりました。それで今ご主人様は今どこにいるのですか」
湧き出る怒りを噛み殺し、深呼吸してから彼にそう聞いた。
「表向きには偽勇者…い、いやゴホンッ…ゆ、勇者様が魔族に寝返ったホーマを葬ったということになっているが……」
チラチラと周りを必要以上に確認しながら話を続ける。
「ホーマは王城に帰還後行方が分かっていない。上手くどこかに逃げ出したのかもしれんが……。すまないそこは未だよく分かっていない」
血の気が引くような感覚に襲われ、身体中から嫌な汗が噴き出してくる。
「そんな……ご主人様」
魔王を討ち滅ぼした勇者が今更王城で拘束されたり、殺されたりする可能性は考えにくいだろう。だけどもし逃げ出せたなら真っ先に自分の元へ帰ってきてくれるはずだ。
音沙汰もないということは、彼の身に何かあったのかもしれない。
「る、ルナよ、安心せい。あいつは国一つに狙われたぐらいで死ぬほどやわじゃない。きっとどこかで……」
彼が何を言おうと、もう耳には何も入ってこなかった。
****
「そういうことだったのか…。ごめんな、迷惑かけただろう?」
ルナの淹れてくれた紅茶をすすりながらため息をつくようにそう言った。俺が送還された後、そんな風に処理されていたなんて、思いもしなかった。よほど俺が嫌いだったんだな。
「いえ…私は…それよりもご主人様が…」
ルナは口籠もり、俯いてしまった。
俺はこの国にとっては人類を裏切った悪の象徴とされているらしい。二十年経った今でもそれは忘れられていないはずだ。
となると、俺が生きている今の状況はウィーシャ王国にとっては最悪と言えよう。俺を殺したという嘘が公になってしまうからだ。
「……ウィーシャ王国は俺が生きていると知れば必ず口封じに来る。暫くは大人しくしていた方が良さそうだな」
「……私も同意見です」
とにかく、今は情報収集だ。分からない事が多すぎる。俺にとっても俺達の召喚主にとっても異常事態が発生していることは間違い無い。
「一体誰が何のために……」
異世界から勇者を呼び出す召喚魔法は人類が扱える最高峰の魔法。その技術に関しては秘匿されており、俺でもよく分かっていないが二度の経験から察するに召喚される者は決してランダムで選ばれているのでは無いのだろう。ランダムなら俺が2回連続で召喚されるのはどう考えても不自然だからな。
「ご主人様。ベード様が月に一度屋敷へいらっしゃります。その時に何か聞いてみればいかがでしょう?」
「ベ、ベード?」
聞き慣れない名前だ。
「一応……勇者パーティの1人だったでは無いですか…」
そういえば、いたかもしれない。ドワーフの気の小さいおっさんだ。だが旅の時は他のメンバー同様、別行動をしていたからあまり関わりが無い。
「いつも戦う時は俺1人だったからな。あんまり印象に残っていないんだよ」
「な、なるほど……」
次にルナに教えてもらったのは、世界の情勢についてだった。俺が送還された後、魔物との大きな戦いは減ったがその代わり人間の国同士の争いが頻発しているらしい。
「特に最近は人間と獣人の間の溝が深まっています」
ルナは真剣な顔つきでそう言った。
「二十年経っても変わらないか…」
「現在……ウィーシャ王国領だった獣人達が住む地域は次々に反乱を起こして独立し、国を興しています。そしてここ数年間はずっと戦争が続いています」
「あいつらが……か」
ふとある獣人の村に魔物を討伐しにいったときのことを思い出す。
「ホーマ様!村を救っていただきありがとうございました!」
そこは山奥のとても小さな狼人族の村であったが、村総出で豪華な祭りを開いて俺達を歓迎してくれた。獣人は普通の人間とは違って身体のどこかに何かしら獣の名残りがあり、それを不気味がる人間達は少なくは無い。だからこそ、嫌な顔せずに人間である俺を歓迎してくれたことがとても嬉しかった
「魔物を倒してくれてありがとう!勇者様!」
「また村に遊びに来てね!」
そして子供達の屈託の無い笑顔は今でも鮮明に覚えている。
「獣人達のほとんどはご主人様を深く信じていましたから…」
「俺のせいで今あいつらは戦っているのか……」
彼らは俺が魔族に堕ちたなどと信じたりしなかった……。だが、それが戦争の火種になってしまったのだとしたら俺は誰からも信じられなくても良かったのかもしれないと思ってしまう。
「ご主人様のせいなんかじゃありません…全部この国が悪いのです。ご主人様を都合の良い道具なんかにしか思っていなかったこの国自体が……」
ルナは涙目になって俺の胸へと飛び込んできた。
「……ルナにもいろいろ迷惑かけたな。ごめんよ」
もう一度頭を優しく撫でてやる。
「いえ……私は信じていましたから。必ずご主人様は帰ってくると…」
この時、俺は誓ったのだ。信じてくれている者達の元へ帰ろうと。そして、無意味なこの戦争を終わらせると。
****
「陛下!至急ご報告したいことが!」
コンコンと部屋のドアが叩かれ、兵士の焦ったような声が聞こえる。
「ちっ!なんだ!今私は忙しいのだ!」
男はそう答えると両隣にいる裸の美女達に目をやる。
「で!ですが!緊急の連絡でして!」
それでもドアの先にいる兵士は引こうとはしないので、仕方なく服を来てベットを降りる
「も〜!まだ始まってないのに〜!」
「もしかして急な仕事ですかー?」
お預けをくらった美女達は残念そうな顔でそう言った。
「後でじっくり味わってやるからちょっと待ってろ」
にやついた表情で男はそう言うと舌舐めずりをした。
「キャー!けだものぉ!」
「待ってますからねっ!」
美女達は頬を赤く染めて嬉しそうにそう答えた。
「なんだこんな夜遅くに 大したことじゃなかったらただじゃおかないぞ」
ドアを開けると男は兵士に向かって睨みながらそう言った。
「そっ!それが…山賊の討伐に向かっていた隊が森で謎の若い男女数十人を保護したのですが。おそらく……召喚された勇者様方ではないかと!」
「なっ!なにぃ!それは本当か!」
ガシッと目の前の兵士の肩を掴む。
「この世界のことを何も理解していない様子と見慣れない服装からおそらくは……と」
「でかした!明日すぐに城に連れてこい!絶対に他の連中らに勘づかれるなよ!」
男は思わず口角を上げてしまう。
「せいぜい俺のために働いてくれよ…」
男はそう呟くと何かを企んでいるかのようにくっくっくと小刻みに笑った。
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