第十一話 再会
拙い文章ですが、よろしくお願いします!
それでは、お楽しみ下さいませ!
今日も一人、自室の窓から夜を覗く。
いつ帰ってくるかも分からないあの人のことを考えて。
今日の星はいつもよりよく見える。赤や白、青といったカラフルな星々はまるで宝石のように綺麗だ。
はぁ……と浅い溜め息を吐き出すと窓ガラスが白く曇った。それをハンカチで丁寧に拭き取る。あの人がいつ帰ってきてもすぐ気付けるように。
それを何度も何度も繰り返す。毎晩のように繰り返されるそれは眠りにつくまでずっと続く。
最初の頃は何度も何度も泣いた。帰ってこないあの人を思って、毎晩枕を濡らした。
孤独は辛い。何度も心は折れかけた。自分は見捨てられたのではないかと疑ったこともある。
──だけど。それでも私は信じている。
あの人が私に嘘をついたことなんて一度も無かった。
「すぐに戻ってくるからな!」
あの人の眩しい笑顔は私の脳裏に強く刻み込まれている。屈託のない優しい微笑み。それは私と出会った時から何も変わらいものだ。私は何度もその笑顔に救われた。泥に塗れる私をその力強い手で引き上げてくれた。
私はあの人をいつまでも待ち続ける。
だから私は……寂しくなんてない。
「……ご主人様」
一人には広すぎる部屋に乾いた溜息だけが残った。
****
「はぁぁぁ!!??」
【大精霊エリミエンス】の大声が森に響き渡る。空気を揺らし、木々を枯れさせ、地面にヒビをいれる。周り一帯の木々が根っこごと引っこ抜かれて空中に浮かんだ。
「ちょっ!興奮すんな!危ないって!」
彼女は森の一部、いや森が彼女の一部といった方が正しいのかもしれないが、それぐらい両者は密接な関係にあるのでエリーの感情の起伏で森の様相も容易く変化してしまう。
怒りに狂う彼女に怯えるかのように花や木は枯れて無くなってしまった。俺は必死に彼女をなだめる。
「だっ!だって!そんなことって!」
なぜこんなにもエリーが怒っているのかというと、俺が一度無理やり元の世界に帰らされたことを話したからだ。そして、手柄も王の息子に取られてしまったことを。
「……まあ終わったことだし何言ってもしゃーないよ」
「そんなの納得できないわ!手柄まで横取りされたのに何言っているの!」
勇者としてこの世界に生きた俺は道具として国に利用された。命を削り、魔王を倒した成果さえも横取りされた。確かに腹がたたない訳がない。
だけど、彼女がまるで自分のことのように怒ってくれたことに対して俺は少し嬉しく思った。
「ありがとう、やっぱりエリーは優しいよな」
その綺麗な緑色をした頭を優しく撫でた。
「うっ……そんなのずるいわ」
エリーはやっと落ち着いたのか、森の騒々しさも消える。
「そ、それで?これからどこにいくの?」
フワフワと空中に浮かぶと、俺に抱きついてきてそう言った。花のいい匂いが香ってくる。
「おいおい、苦しいから離れろ」
「もう!つれないんだから!あと数分でお別れっていうのに!」
精霊召喚の魔法は持続時間はそんな長くない。魔力量が万全であっても2、3時間が限界だろう。
「……それより、早く戻らないと」
頭に浮かぶのは一人の少女。何かとトラブルはあったけど、早くあの家に帰りたい。
俺は急に元の世界に送還されたので、この世界の仲間達に別れの挨拶すらできなかった。まぁまたすぐにこの世界に戻ってこれたのでそこは幸いといったところか。
俺の帰りを待っている人がいる。
なるべく早く帰ってまずは彼女に謝らなくてはいけない。
「……くぅ〜〜、お別れしたくないぃ……」
エリミエンスと話しているうちにふと一つの疑問が浮かんだ。
「あれ、い、今って……人暦何年だ?」
「人暦?そんなの知らないわよ。あなたに呼び出されるまでずっと精霊界にいたんだから」
確かにそれもそうだ。精霊は基本、召喚されない限り人界には訪れることはない。それに加えて精霊と契約できる人間はほぼいないのでエリーはとても稀なケースだろう。
「ちょっとまて……いやでも、地球に帰った時は時間はそんなズレてないはずだよな」
俺は地球に帰還してからまたすぐにこの世界に呼び戻された。地球で過ごした時間はたった数分のことだ。だが、地球の数分がこの世界の数分である保証はどこにもないことに気づいてしまった。
時間のズレがあっても何も不思議じゃない……。
「……まずいな」
一人悶々と悩むが結論は出るはずもない。不安が増してきた俺は走り出した。
「と、とりあえず早く帰らないと!」
「え!?ちょっと!」
森を抜け出して、闇夜に輝く街を見つける。
「……帰ってきたぞ」
その街の名は『サザン』。俺を召喚した国『ウィーシャ』の王都である。
****
「……戻ってきたか」
見覚えのある大きな屋敷。ここは俺が勇者と呼ばれるようになってから住み出した建物だ。貯めたお金で自腹を切って購入したこの家にはたくさんの思い出が残っている。
玄関の横に咲く花は以前育てていた花の種類とは異なるように見える。それに少し建物は古くなっているような気もする。元々古い屋敷だがここまで荒んではいなかったはずだが。
上を見上げ、屋敷を見渡す。
たくさんある屋敷の窓の中で一つだけ明かりが灯っている窓があった。
そしてその部屋は俺の一番の思い出が詰まっている。
思い出を振り返る時間も惜しい。俺は思わず走り出した。
玄関の大きな木製の扉に手をかける。
その瞬間、勢いよく玄関の扉が開かれた。俺が開いたのではない。何者かによって開かれたのだ。
そしてその正体は一人しかいない。
一番会いたかった人が、そこにはいた。
「ご…主人様?」
銀髪のショートヘアに、ぱっちりとした大きな瞳。透き通るような白い肌と長い耳。フリフリのスカートのメイド服も変わってない。
やはり、その人に間違いなかった。
彼女の名前はルナ。俺のメイドであり、最も大切な人だ。
「ごめんな?なんかゴタゴタしてて帰るの遅くなっちゃって」
送還されてまたすぐに召喚されたなんて言ったら滑稽すぎて笑われるかなと思いながら苦笑いでそう言った。
「遅いなんてもんじゃないですよ!なんで!なんでもっと早く帰ってきてくれなかったんですか!」
ルナの目からは大粒の涙がポタポタと溢れ落ちていた。
「ご、ごめん──」
「二十年間もどこで!どこで何してたんですかっ!」
胸に飛び込む彼女を包み込むように抱きかかえる。俺はあまりの衝撃に一瞬思考が停止する。
「ま、待て……。え、に、二十年……!?」
悪い予感は的中してしまったようだ。どうやらたった数分の地球の時間はこの世界ではこんなにも長かったらしいを
「ほ、本当に…大変…だったんですから…」
大きな声でわんわんと泣くルナを強く抱きしめる。謝罪の言葉すら出てこない。どんな気持ちで彼女が俺を待ち続けたのかと考えるだけで俺の胸は張り裂けそうだった。
「……ずっと待たせてごめんな。本当に本当に。ごめんな」
「……遅いですよ。ずっとこの日を……この瞬間を……私は」
ルナはもう離さないと言わんばかりに強く俺の身体を抱きしめた。俺も強く抱きしめ返す。
「二十年も……待っててくれたんだな」
「……当然です」
二十年経った今も彼女の匂い、抱き心地、温もりは何も変わらなかった。まるで彼女自身が二十年前から変わっていないようだ。だからこそ余計二十年経っているなんて信じられなかった。
「本当にごめん。そして、ありがとう」
「私は永遠にご主人様のメイドですから」
涙を流しながらも微笑む彼女の瞳はまるで月の光に照らされた水面のようにキラキラ輝いていた。
「そうだった。忘れてたよ……。ただいまルナ」
「はい……おかえりなさいませご主人様」
俺はやっと彼女に言うべきことを言えた。
夜空に輝く星々がその輝きを増す。
まるで二十年振りの俺たちの再会を祝福しているかのようだった。
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